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◆第百三十九話◆◆

第百三十九話

 町内の夏祭りがあるということを去年はまったく知らずその日は悠子とともに惰眠をむさぼっていた。基本、悠子は家にいて勉強をして料理をして風呂に入って寝るというそんな準引きこもりのような生活をしていたために外のことを知るすべはテレビぐらいしかなかったのである。まぁ、僕も似たような生活を送っていたわけだけど不思議と二人の体重は増えたりせずに逆に減っていたというから今頃あちらでちゃんと生活できているか悠子のことが気になったりする。あまり口やかましく言ったらいけないんだろうから言わないけど不安でもある。

 話がちょっとずれたわけだが今日から二日間、夏祭りが催されるわけなのだ。てっきり由美子は友達と行くものと思っていたのだがそうではないようで家にいた。

「はぁ?僕と行きたい?何で?」

「だってお兄ちゃんといったら……」

「……出店のお金を出さなくて済む?」

「そう、そのとおり♪」

「……」

「あ、ちゃんと友達とは明日一緒に行く予定だから大丈夫だよ」

 なんというちゃっかりとした妹なのだろうか?そして、何が大丈夫なのだろうか?



 まぁ、そんな理由で僕は由美子を連れてお祭りへといくことになったのだった。



――――――――



 お祭り会場は意外と盛り上がっていた。去年がどうだったかもちろん僕は知らないし由美子だってわからないが僕が昔行った事があるところのお祭りより屋台、人数両方ともがんばっているところだった。

「うっわぁ、いろいろな出店があるねぇ!」

「お祭りだから」

「うっわぁ、たくさん人がいるねぇ!」

「お祭りだから」

 淡い緑色の浴衣姿を惜しげもなくさらして一回転する。由美子は僕のほうをじーっと見ていた。

「もう!ムードがない!」

「ムードって……妹と一緒にお祭りだよ~?それでムードって……」

 わらっちまうぜあはは……

「駄目!こんなときでもムード大切にしないと将来彼女で来たときに失望されちゃうよ!」

「いいもん、どうせ僕には一生彼女なんてできないし、ジェットコースターとか乗るとか言ったら絶対に別れるから!一生妹と祭りに行く悲しい人生送るんだぁ!」

「……」

「…ってあれ?」

 ここはどこか突っ込むところでしょうに。そんなに兄貴がもてないと思うのだろうか?未だどの出店を冷やかしていないのでおなかが痛くなったとかそういったものではないだろう。しばし待っていると由美子は手を叩くのだった。

「うん、いいかもね!一生お兄ちゃんには彼女なんてできないし……私が一緒にお祭りずっと行ってあげるよ」

「え?あの~……由美子ちゃん?」

「うんうん、じゃあ早速一件目から行ってみようか?」

 僕の腕をしっかりと掴んで引っ張っていく。ああ、妹にすら否定されないこの事実。そんなに僕はもてないのか……。



―――――――



「はい、あ~ん」

「えぇっ?さすがにあ~んは……妹にされるのかなり恥ずかしいんだけど?」

「気にしない気にしない!きっとおにいちゃんにはこれから先彼女なんてできない!一生私と夏祭りに行く羽目になるんだから……ずっと妹にしかあ~んされない悲劇」

 いや、昔はよくいろいろな人からあ~んされてたよ?不良っぽい生徒からも『あ~ん?』って言われてたからね?

 一本の聖剣(爪楊枝)で突き刺されたタコの魔物(たこ焼き)を僕のほうへと突き出してくる。

「あ、あ~ん」

「そうそう、素直が一番だよ」

 僕の口の中に押し込んでにこりと笑う。はふはふしながら食べていると後ろのほうから声が聞こえてきた。

「あ~ん♪なんて死んでもできねぇな、俺は」

「猛……なんでいるんだよ?」

 町内会のおっさんと思ったぞといってやって不機嫌そうに猛をにらむ。

「おいおい、俺は別に何も見てねぇよ?妹にあ~んされてる情けのない友人の姿なんて俺は、見てねぇ」

「……」

 こいつもういっぺん砂に埋めてスイカ割してやろうかと考えているとここで救世主登場。登場、というより僕が勝手に見つけたわけだが。

「おーい!矢田さーん!!」

「!?」

 猛の顔が真っ青に染まった。

「こっちで矢田さんの『あ~ん』を待ってる待ち人がいますよぉ!!」

「あ、間山君……」

 黄色い浴衣を着た矢田さんがやってきて猛の顔に脂汗がにじんでいる。くくく……いい気味だ。

「由美子、僕らはあっちに行こうよ?お邪魔しちゃったら悪いから」

「……どっちかというとあの猛って人が邪魔したんだけどね」

「何か言った?」

「別に、そうね、さっさと行こうか?」

「待て!待ってくれ!」

「はい、あ~ん♪」

 僕たちはこの場を後にしたのだった。かわいそうに……手だけは合わせてやろうかな。



―――――――



 ふた周りぐらいしてから以前祭りに行ったときよりも倍近い金額を使ったわけだが……まぁ、楽しかったのは楽しかった。

「はい、あ~ん」

「あ~ん……」

 チョコバナナを由美子の口に突っ込んでやる。一生懸命ふごふごしている姿がまぁ、可愛いと思ったりしなかったりしたり……

 チョコバナナを食べ終わった由美子が悪戯を思いついたときの顔をする。

「今私のことをかわいいって思ったでしょ?」

「にゃにお、こほん、何をバカなことを……そろそろ帰るよ」

「は~い♪」

 祭り会場はにぎやかだったが離れていくごとに静けさを増していく。人通りの少ないところでも由美子は僕の腕をしっかり掴んで離さなかった。

「あのさぁ、お兄ちゃん」

「何?」

「今度花火大会があるんだってさ」

「……はいはい、また一緒に行こう?」

「やった!もちろんお兄ちゃん持ちだよね?」

「……考えておくよ」

 まぁ、由美子がこんなに笑ってくれるのならいいかなぁ……?


次回で百四十話ですね。いや、特に意味はありません。さて、夏祭り……皆さんにも何か思い出に残るような祭りがありますか?雨月の住んでいる近くにも祭りはありますがまぁ、悲しいことに毎年雨が降っています。午前中ふって足元がゆるい中で行われる祭り。たこ焼きが落ちてもふ~ふ~すれば食べれますが雨が降っているために泥まみれ。さすがに水か何かで洗わない限り口に運ぶのは少々勇気がいるという事態に陥ってしまいます。では、今回はここらで話を区切らせてもらいたいと思います。感想まってま~す!十月十四日水、十八時五十七分雨月。

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