◆第百三十六話◆◆
第百三十六話
すいか割りを知っているだろうか?もともと、畑で悪さをしていた悪霊が実ったスイカに取り憑き、夜な夜な民家を襲ていたのだ。しかし、その地に偶然訪れていた浪人がスイカに取り憑いていた悪霊をスイカごと切ったことから夏に行われる行事となったのである。
もちろん、この話は嘘である。しかし、話し手によっては本当に聞こえてしまうので一つ、ここはチャレンジをして知人に話してみてはどうだろうか?
「お~い、霧之助……大丈夫か?」
「次は……というより、最後から一歩手前で百合ちゃんの番だよ。平静を保っていられるわけがない!ほら!ものすごく入念にチェックしてるじゃないか!」
彼女がその手に持っているのは鉄パイプではなかった。ほっと一息ついたのだがその手に握られているのは木刀だったりする。
「普通じゃないか」
「普通だよ?確かに普通、あんな木の棒とかでスイカ割をするのは普通だよ?だけどね、僕等はいまだに砂浜から逃げられてないんだよ」
「きっと砂浜が俺たちに恋をしたんだよ」
猛はもはや達観したようで諦めがついたようだ。まぁ、こいつの場合は矢田さんに殴られなければどうって事はないのだろう。
あ~……ちなみに、二番目が由美子の友人、三番目も友人、四番目が結さん(危なかった、あれは本物の鉄パイプを使っていたと僕は確信している……彼女はわざとはずしてくれた)で五番目が由美子(偽ものの鉄パイプを使ったわけだがそれでも食らってみたら思ったより痛かった)、六番目が名古ちゃん(面白がって偽物の釘バットなんか振り回して……スイカを叩いたようだがバットが折れて彼女の頭に当たっていた)、七番目が雪ちゃん(僕の前まで立つとにやっと笑って自分で偽物の鉄パイプを折った…見逃してやろうといわれた気がしてならない)、八番目が百合ちゃんというわけである。
百合ちゃんが立ち上がり、黒い目隠しをはめる。そして、ぐるぐる回されて……獣は野に放たれたのだった。
「百合さ~ん!もっと右ですよ!」
「姉さん、がんばってぇ!!」
女子たちのはしゃいだ声が響き渡る。しかし、僕は黙ったままだった。
「おい、霧之助……何か言えよ」
「……」
黙ったままにらみつけてやると猛の目がにやっと笑った。
「百合さん、霧之助の居場所は俺の声を頼りにしてもらって結構ですよ」
「……!?」
こいつ、売りやがったか!?せっかく人が黙って姿を消しているのにセンサー(近づくと音で反応するのだろう)で探すなんてやり方が汚いぞ!
文句を行ってやろうにもしゃべればお間抜け決定である。ここにもいな~い!と鬼婆が獲物を探しているときにここにいますよ?と出てくる坊主はあっさり食われてしまう!
スクール水着を着ている鬼がこちらへと徐々に迫ってきている。打つ手がなくなり、一生懸命身体を動かしてみても奇跡はどうも起こらないようだ。
僕の顔に陰が当たり、見上げればそこにはスク水百合ちゃんが……聳え立っていた。意外とスタイルいいなぁ……なんて思っている場合ではない!
「せいやぁっ!!」
『ていっ!』とか『えいっ!』とかそんな可愛い掛け声だったらまだよかったかもしれない。もはや必殺技を出す前の掛け声じゃないか!と突っ込みたかったのだが死人に口なし……じゃなかった、まだ死んでないし。
振り落とされた木刀は僕に当たらずに寸止めされていた。
「……」
「ふぅ、まぁ、こんなものかな」
さっさと目隠しをはずして引き上げていく。
「命拾いしたな、霧之助」
「え?あ、ああ……確かに」
「それと、真下から百合さんを見上げられてよかったな」
「……」
あいにくだがそんな罠に引っかかるほど僕はおろかではないといっておこう。ここでそんなこといったら百合ちゃんのスイッチを押してしまうかもしれない。
猛め、僕を陥れようと考えているようだけどそううまくは……
「百合さ~ん!こいつ百合さんのスタイルじゃ話しにならないみたいな目をしてます!」
「……え?してないよ?」
何をバカなことを……あれだけあれば結構スタイルいいほうなんじゃないかな?それに、その程度で百合ちゃんが振り向くわけが……
「そうか、霧之助……」
みんなのところに向かっていたのだが足を止め、再びこちらに振り返ってスクール水着を着た魔神が……
そろそろ紅葉の季節が迫ってきていますねぇ……秋です。天高く馬肥ゆる秋。読書の秋、ってことで小説を読んでみてはいかがでしょうか?ついでに後書きも。霧之助が一年生のころだったら様々な事件に巻き込まれていましたが二年生になってからはこれといって何か問題がおこっているというわけでもありません。すっかり落ち着いた高校生活を送っています。それが一番なんでしょうけどね……しかし、ものは考えようで嵐の前の静けさというかなんと言うか……人生何が起こるのかわかりません。そういった意味では今はちょっとしたお休み期間に入っているだけなのでしょう。後書きで使うネタももう……ありませんし、大体投稿した跡に思いつくのですが次回の後書きじゃ使えないものばかり……言うことといったら感想をくれぇ感想をくれぇ……そんなに感想がほしいなら乾燥機に入ってろ!といったすべり上手な駄洒落しか叩いても出てきません……今日はこの辺にしてやらぁ!今度覚えてやがれ!十月十二日月、九時三分雨月。