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◆第百三十四話◆◆

第百三十四話

「海だ!」

「ああ、海だね」

 まぶしそうに目を細めながらも百合ちゃんは愛おしそうに海を眺めていた。他のメンツも思い思いに海を眺めておりじゃあ帰りましょうかとか言ったら全員にぼこられた後に砂に埋められる可能性がかなり高いだろう。こっちは誘ってみれば全員来ていたのだが由美子のほうは都合が悪かったようでこの前紹介してもらった二人の友達しかいないようだった。しかし、意外と他の人たちと知り合いだったようで百合ちゃんたちと話している。

「先輩、海ですね!海!」

「え?ああ、そうだね……」

 名古ちゃんがものすごくうれしそうにはしゃいでいる。やれやれ、子どもだ。

「お兄ちゃん、もう浮き輪とかつけてるの?まったく、こどもねぇ」

 由美子、何か君は勘違いしてるぞ。

「……おいおい、霧之助……お前もうズボンの下に海水パンツはいてるのかよ?市民プールじゃねぇだろ?」

「……」

 いちいちうるさいことを言う男だ。そんな細かいことばっかり言っていたら大きな男になれないぞといってやりたかった。海を見習えよ!

「先輩もはしゃいでるんですね!そうですよね、海ですから!」

「……はぁ」

 一つため息をついても心は晴れ晴れとしている。だって、海にきてるんだから!



―――――――



「霧之助、海に来たらすること何かわかるか?」

 海に来たらする事なんて決まってる。泳ぐことだ。

「泳ぐこと」

「おいおい、それだけじゃもったいないだろ?普段は見れない女子の水着姿!これを拝むのも一興ってもんだぜ?」

「まぁ、確かにそうかもしれないけどさ」

「それにお前の妹まで来てるからな」

「それがなにさ?」

「忘れたのか?お前の妹はモデルやってたんだろ?」

「ああ、そうだったね」

 もはや忘れていたとしか言いようがない。一年前の由美子“ちゃん”はどこに行ってしまわれたのだろうか?今ではお風呂上りに下着姿で部屋を闊歩する由美子しかいない。

 水着だろうと下着だろうと似たものだからもはや見飽きている僕としては何とも言えない。青少年の夢をぶち壊してしまうほど僕は鬼ではないのだから……このことは猛に話さないでおこう。

「けど、矢田さんもきてたよ」

 ぶち壊したりはしないのだが、さり気にプレッシャーを与えてみようと思う。一応猛のためにと誘ってみたのである。少し到着が遅れるとのことだったが先ほど来たようで更衣室に入る前にその姿を確認できたのだ。

「え?」

 一瞬にしてぬけた顔になり一つため息をついた。

「霧之助、海に来たらすること何かわかるか?」

「……女の子の水着を見ること?」

「……違う、泳ぐことだ」



――――――――



 みんながまだ来ていなかったので先に猛と一緒に準備運動を行う。入念に身体を動かしていると百合ちゃんが砂浜を駆けて行った……スクール水着で。

「……百合ちゃん、きっと水着を買いに行く暇がなかったんだろうね?」

「……ああ、黒のビキニなんて想像していた自分が恥ずかしい。穴があったら穴に埋まりたい」

「……僕もだよ」

 そんなことをいったのが間違いだったのだろう。後ろに気がついてみたら高畑さんが立っていた……なぜかスコップを持って。

「そっかそっか、そんなに埋まりたいのかぁ」

「「……」」



―――――――――



「猛、穴の中から水着の女の子を見るのもいいものだね?」

「ああ……しっかし、生まれて初めて埋められてわかったんだが本当に身動きとれねぇな?」

 必死さがかなりこっけいなのだが猛と同じように僕は一生懸命もがいているために笑えない状況だ。

「そうだね、僕も結構がんばってるんだけどなかなか脱出できないよ」

 水着鑑賞を三割、脱出のほう七割という黄金率でがんばっているのだがあまり作業ははかどらない。海に来たというのに肩まで水につかるよりも先に砂に肩まで、というよりほぼ首しか出ていない状況になるなんて想像もできなかった。

「霧之助、お前はいつもいつも厄介な奴と知り合いになるよなぁ」

「猛……」

 気がついていないのだろう。まぁ、それは仕方がない。だって猛に百八十度首を回せって言っても無理だろうからさ。かわいそうに……そこには高畑さんが立っていたりするのだ。

「おやおや、黄銅君、それは誰のことかなぁ?」

「……」

 気がついたらしい。顔が真っ青である。し~らないっと。

 猛のいたところにてっきり砂のお城が完成するかと思ったのだが高畑さんはその代わりと思われるスイカを猛の隣においていった。スイカ、猛、僕といった順番で並んでいる。

「みんな~スイカわりしよう!!すんごいスリリングな奴!」

 バットに釘を打ち込んでいるという何ともデンジャラスな一品をぶんぶん振り回している。そんな高畑さんをおそろしげに見ていると目があった。

「高畑さん、それ……」

「あ、これ?大丈夫……おもちゃだから」

 おもちゃ……?なぁんだ、それなら安心。

「もちろん、ちょっと変わった叩くものを用意してるから……鉄パイプ、フライパン、ハンマー、角材、木刀……たたかれるならどれがいい?」

 叩かれるなら……か。ああ、今年は海に入る前にどうかなっちゃうかも。


どうせこの小説なんて読んでくれている人さん十人程度ですよ……どうせ斜陽小説なんだ……。さて、海企画第二段。一話完結でがんばろうとしてみた結果がどうしたことか数回にわたる私刑へと変わってしまいました。なぜ、こうなってしまったのか……よくはわかりませんが面白ければいいんでしょう。最近すべり気味の作者雨月でした。斜陽小説にはこの程度の後書きがお似合いなんですよ……十月十一日日、九時四十八分雨月。

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