◆第百三十二話◆◆
第百三十二話
不幸、不幸とは何か?
幸せの反対である。
では、幸せとは何か?
定義は人それぞれである。
一体全体どうしたのだ?と首を傾げてしまう人もいるかもしれない。だが、こんな哲学的なことを考えたくなる日だっているだろうに。
そう、ずっと不幸が続くのなら考えちゃうことだってあるはずだ!
そして、どうやら僕にもそんな日が回ってきたらしい。
―――――――
「ついてないっ!!」
家を出て早々雨が降ってきた。家に戻って傘を取ってこようかなぁと思ったのだがそんなことをしていたら今日は遅刻してしまう!遅刻しそうになっている理由は由美子は友達の家に泊まっているために朝食は遅めにとろうと思って目覚ましをかけるのを忘れていたのが失敗だった。
仕方がないので走っていくことにしたのだが途中でガムを踏んでしまう。
さらには路上に放置されていたうんぴ~が豊穣の雨の恵みによってやわらかさを取り戻し、僕の白い靴へと攻撃を仕掛けたのだ。ガムに気をとられていたのが失敗だった。
「ぬぁああ……!?」
しかも、ついでに言うのなら滑りそうになって踏ん張り、転んでしまう。うんぴ~に顔面ダイブしなくてほっとしたものの、本当に時間がぎりぎりしかないので心はあせりにあせりまくっていた。
校門がしまる前に何とか校庭に滑り込むもすでに満身創痍。心も身体も幾多の戦場をくぐりぬけた歴戦のつわもののごとく傷ついてしまっている。
ちなみに、僕らの通っている高校は校門に滑り込んでも遅刻を免れることはなく、チャイムが鳴る前に自分の席に座っていなければ意味がない。第一段階目の校門をなんとか潜り抜けてもそこから急いで自分のクラスへ、自分の席へと向かわなくてはいけないのだ!
「……」
静かに、だがスピードは落とさず下足箱に汚れた靴を突っ込んで自分のクラスへと向かう。本鈴が鳴り響き、後は教師がクラスへやってきたら僕の遅刻は決定してしまうのだ!
何とか免れそうだと思って急いでクラスの後ろ扉を開けて中に入った……いや、入ったのは入ったのだが誰かと衝突してしまい、僕のほうが勢いが強かった。
「うわっ!」
「きゃっ!!」
そんなかわいらしい女の子のような声を出したのは……百合ちゃんだった。
「お、おはよう百合ちゃん……」
「……」
そして、今僕の目の前には黒い下着が……ある。
尻餅をついている百合ちゃん。そして僕は土下座みたいな格好であごを床につけている状態。見上げると百合ちゃんの顔が徐々に真っ赤に染まっていき……
ぱぁっん!!
僕のもち肌のほっぺがそんな乾いた音をクラスに響かせたのだった。
――――――――
「お~いたっ!!」
結局、遅刻は免れずほっぺたには真っ赤なもみじが……まだ季節じゃないのに。さすってみると痛い痛い。隣に座っている百合ちゃんはものすごく恨めしそうに僕を見ている。
ここは素直に謝っておいたほうがいいのかもしれない。ちょうど授業も終わったし。
先生がいなくなるのを待って頭を下げておく。
「……あの、ごめん」
「……」
「別に百合ちゃんの下着が見たかったわけじゃないんだ」
「姉さんの下着は見たくなかった……へぇ、じゃあもしかしてわたしの下着だったら見たくなりますか?」
ああ、何でこんな日に限って……恐る恐る頭を上げるとそこにはシスコニストの雪ちゃんが立っていた。話がややこしくなるに違いない。そんな絶望的な考えが右から左へ上から下へと脳内を駆け巡ってゆく。
しかし、予想とは違いちょっと違う展開へと発展してしまった。
「ちなみに、今日のわたしの下着は……」
僕の耳元でこっそりとささやく。
「白ですよ♪」
「ええっ!?って僕は何を驚いているんだっ!?」
「……霧之助の……変態っ!!!」
母さん、もちはだって乾いた音を出すんですよ……知ってました?
その後も僕の不運は続いたのだがまた別の機会に話そうと思う。
え?もっともっと霧之助を不幸にして欲しい?さすがにそれはちょっと……これ以上彼を不幸にしてしまったらバッドエンドで終了してしまいますよお客さん。さて、冗談はこのぐらいにして今回の話、いかがだったでしょうか?この話の感想をいただけたらこれ幸いと雨月が喜んで道路に飛び出します。活動報告を読んでくださった方はわかると思いますが『満月の騎士』を再び書かせてもらうことにしました。これまでの小説の感想をふと読み返していましたら結構続編が読みたいとのことだったのでそういう結論に至りました。まぁ、内容が駄目だったら読んでいただけない可能性が高いに違いありませんけどね……では、次回もお時間があればご一読ください。十月九日金、七時十六分雨月。