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◆第百三十一話◆◆

第百三十一話

「おや?霧之助君じゃないか?」

「あ、おじさん……」

 名古ちゃんへと続く道のり。途中、かなり久しぶりとなる悠のお父さんに出会った。

「悠から手紙とか来ているかい?」

「え?ええ……」

 そうですね、きてますと言おうとしたらおじさんのほうが先に口を開いた。

「こちらのほうはまったく来ていなくてねぇ……もし、君のほうに来ていたら……実に悔しいものだ」

「……て、手紙が来るといいですね!」

 余計なことは口にしないほうがいいだろう。そういうことで僕は急いで名古ちゃんを連れて逃げ出したのだった。


―――――――



 その後は特になく、名古ちゃんの家に着いた。

「……やっとついた」

 げっそりとやつれた感じで名古ちゃんがため息をついた。

「そうだね、結構かかっちゃったねぇ」

「他人事みたいに……先輩のせいですよ!」

 名古ちゃんは悪態をついた……つきっぱなしだよ!

「まぁ、あがってください」

 名古ちゃんが玄関を開けると僕に何かがぶつかった。

「ぐはっ!?」

「いたたた……」

「お父さん!?」

 そして、玄関のところに他の人が立っているのが確認できる。

「お母さん!?」



――――――――



 家の中へと案内されたわけだけども、どうも空気があまりよくないみたいだった。

「あの、僕帰ったほうがよくない?」

「いいですよ、ここにいても……お母さん、何でお父さんを先輩にぶつけたの?」

「時羽ぁ、きいてくれ!パパのコレクションをママが捨てちゃったんだ!!」

「ええっ!?」

「時羽あんたはお友達と遊んでいなさい……あら?」

 僕のほうを見てなにやら首をかしげる。どうかしたのだろうか?

「あの、どうかしたんですか?」

「違ったら悪いけどもしかして花江ちゃんの子ども?」

「え?はぁ、そうですけど?」

「そっかぁ、目のところとかそっくりね」

 うんうん頷いてそんなことを言っている。ああ、そういえば名古ちゃんのお母さんも教師だって言っていたから教師つながりなんだろうなぁ」

「もう高校二年生かぁ……あ、進路とか考えてる?」

「いえ、まだ……」

「将来なりたい職業は?」

「ええと……」

 そういわれてふと考え込んでしまった。僕がなりたいもの、かぁ……この前由美子の勉強を見てあげていたけど、あれって意外と楽しかった。そんな些細な理由かもしれないけど、僕はなんとなくだがなりたい職業を見つけたのかもしれない。

「……まだ漠然としてますけど人に何かを教えたいって思ってます」

「それなら教師がいいわよ?勉強だけじゃなくていろいろと……」

 そこまで言ったところで娘さんが口を挟む。

「ちょっと、先輩が困ってる!」

「ああ、ごめんね霧之助君……だったかしら?」

「ええ、まぁ……」

「さ、行こう先輩」

 腕を引っ張られて名古ちゃんの部屋へと引っ張られていく。

「ゆっくりしていってねぇ」

「はい、お邪魔します」

 ちょっとおかしい挨拶だったかもしれないけど一応そういっておいた。知り合いということならば粗相があれば母さんにその情報がいきわたり、雷を落とされてしまうからだ。



――――――――



「えっと、この前来たときってどこまで説明してましたっけ?」

 棚に置かれているフィギュアの数が前回よりも少し多くなっている気がしないでもない。うぅむ、まだ一段目の途中ぐらいだったからうそついて二段目の途中からって言っておこう。

「……三段目の真ん中ぐらいだったかなぁ」

 しまった!欲張ってさらに一段プラスしてしまった!

「え?そんなにいってましたか?」

「うんうん、行ってたよ?結構進んでた」

「じゃあ、このフィギュアの名前と何処で買ったか、どういった場面の奴をフィギュア化したかあたしに説明してください」

「……」

 しょ、小テストだ!?前回のことをちゃんと覚えているかこの子軽く僕に説明させる気だよ!えぇい!ここは適当に嘘を並べて……いや、素人が玄人に勝てるはずがない。どうせそこから永遠とこれまた違う説明が入ってくるに違いない!

「すいません、前回は一段目の途中からでした」

「先輩が素直で助かりました」

「……はぁ」

 一つあきらめのため息をついてみる。すると名古ちゃんが僕のことを見ていた。いや、さっきも僕のことを見ていたのだが目つきが若干変わっていた。

「あの、面白くないですか?」

 しょげている目、声、雰囲気。哀愁を漂わせている。

「え?あ、いや、そういうわけじゃないんだけど……」

「いえ、嘘つかなくていいんです。正直に言ってください」

「あ~ごめん、正直よくわからないかなぁ……あはは、ごめんね」

 頭の後ろを掻いてみるも、なかなか雰囲気がよくなるわけじゃなかった。ああ、どうしたものだろうか?誰か僕を助けて!

「飲み物持ってきてあげたわよ」

 そこに救世主登場。ジュースとお菓子を名古ちゃんに渡してさっさと撤退。

「お邪魔したわね」

「いえ、そんな……」

 貴女のおかげで少しだけ雰囲気が和んだことは間違いありませんと心から感謝をこめて口には出さないがありがとうございました。

 そんなことを考えていると名古ちゃんがこっちを見ていた。

「……あたしの趣味をこうやって気兼ねなく話せる人ができてうれしかったんですよ」

「え?」

 そんなことを口走ってもってきてもらたジュースを一気飲み。そしてお菓子もばりばりと食べている。

「ど、どうしたの?」

「やけ食いです!気持ちが落ちたときにはこうするのが一番……」

「太っちゃうよ?」

「……」

 手が止まる。そして、がっくりとうなだれるのであった。急がしい子である。さすがに可哀想になってきたので慰めてあげることにした。

「大丈夫、今はやせてるから」

「……それじゃいずれ太るみたいな言い方じゃないですか」

 母さん、僕に人を助けるのは少し難しいみたいだよ。

 僕も名古ちゃんみたいにうなだれていると先にうなだれていた名古ちゃんがゆっくりと顔を上げる。その頬には一筋の涙が……流れてはいなかった。

「……先輩、あたしのこと気持ち悪いと思いますか?」

「いや、そうは思わないけど……なんで?」

「……やっぱり、こうやって棚にフィギュアを飾っていると気持ち悪がられたりするんです……」

「まぁ、世の中にはそういう人がいるのは仕方ないと思うよ?」

「そうですよね……」

 意気消沈といった感じで再びうなだれる。

「……けどさ、気持ち悪いって思わない人だっているよ。他の人はともかく、名古ちゃんにそういった趣味があってもとりあえず僕は大丈夫だからさ」

 ぽんと肩に手を置いて笑ってみる。この程度しかできない自分が悲しいものだ。

「先輩……」

 しかしまぁ、素人でも一応慰めることができたらしい。

「まぁ、あんまり熱入れられて説明されるとよくわからないからよくわかるように説明できるようになればいいんじゃないかな?」

「そ、そうですよね!今度先輩が家に来てくれたときは第一話からDVDを一緒にみましょう!」

 部屋の端のほうに置かれているDVDBOXを指差しながらそんなことを言う。

「え、あ、いや、それは……ともかく、今日は僕もう帰るよ。夕飯作らないといけないから」

「ええ、わかりました。じゃあ行きましょうか」

 僕が立ち上がると名古ちゃんも立ち上がったのだった。



―――――――



 遠慮したのだが、名古ちゃんはほんの数メートルだけ送っていくと主張して聞いてくれなかった。夏が近いためか、まだ夜空はほんのり赤く、闇夜が迫ってきている狭間。

 隣を歩く名古ちゃんがなんとなく明るく見えながらお互い何もしゃべらない。

 そろそろ潮時だろう。そう思って名古ちゃんのほうを見るとこっちをみていたことにようやく気がついた。

「……何?」

「あの、今日は慰めてくれてありがとうございます」

「ああ、別に気にしないで」

「いえ、お礼を言うのは人としての義務ですから」

「へぇ、笑うとかわいいね」

「……」

 えへへと笑う名古ちゃんの顔を見てついつい思っていたことが口に出てしまう。ああ、言ってしまった。きっと『普段は可愛いと思ってないんですか!?』なぁんて怒ってしまうに違いない。そう思っていたのだが……

「……せ、先輩のバカっ!」

「は?」

 ほめてあげたのに罵られたのだった。もう二度と振り返ることもなく、彼女はもと来た道へと走っていき、夕暮れの最中親子が僕の近くを通り過ぎていく。

「ねぇねぇ、お母さん何であの人は固まってるの?何でさっきのお姉ちゃんはバカってい言ったの?」

「しっ!男と女は言葉では語れないこともあるのよ」

 余計なお世話であるといいたい。


窓を開けて紙ひこーきを飛ばしてみました……さて、嘘をついたところで今回の後書きいってみましょうか……。

元気がないのはいつものことですが最近かなり寒くなってきました。雨月は寒がりのために基本、冬は外に出かけたりはしません。しかし、用事があるときは重武装して戦場へと赴きます。加湿器が欲しい……。どうでもいいことで行数増やしちゃってますんで今回で終了した名古家の話にいきましょうか。今回で終了を見せました、名古家編。今後また登場するかどうかはわかりませんが若干影の薄い名古時羽、どうか宜しくお願いします。次回は霧之助が不幸に見舞われます。不幸不幸も幸の内なんてサブタイトルがついてますが不幸だけに見舞われちゃったりします。感想のほうできましたらお願いします。十月八日木、八時五十七分雨月。

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