◆第百三十話◆◆
第百三十話
学校を後にしたわけだが、校門で意外な人物に出会った。
「あれ?間山さんじゃないですか」
「ああ、雪ちゃん」
校門前で誰かを待っている感じの雪ちゃんである。
「誰待ってるの?」
「姉さんです。今日は母さんと一緒に外食ですからね」
「そうなんだ」
百合ちゃんと雪ちゃんのお母さんってどんな人なんだろうか?少しばかり気になったのだが雪ちゃんがしゃべりだしたので考え事が途中で放棄された。
「……間山さん、そちらの方は?」
名古ちゃんのことを指差しながら首をかしげる。
「えっと、一歳年下の名古時羽ちゃんだよ」
「ど、どうも……」
ぺこりと頭を下げている名古ちゃんに再び首をかしげつつ、雪ちゃんは僕に尋ねるのだった。
「中学のころの後輩ですか?」
「いいや、こっちにきてできた後輩だよ」
「……」
じーっと雪ちゃんは名古ちゃんのことを見ていた。どうかしたのだろうか?僕が首をかしげていると、隣の名古ちゃんが腕を引っ張った。
「ちょっと、先輩!」
「何?」
「あまりあたしのことをしゃべらないでくださいよ?」
「……どうして?」
「どうしても!」
そういわれてしまっては仕方がないのでいまだ名古ちゃんのことを凝視している雪ちゃんにさよならを告げることにした。
「じゃあ、僕たちこれから用事があるから……じゃあね」
「え?ええ、そうですね。また明日」
なにやら首をかしげている雪ちゃんから五メートルほど離れると名古ちゃんが顔を真っ赤にしていたのだった。
「先輩は人を紹介しすぎじゃないですか!?」
「えぇっ!?そうかな?」
「そうですよっ!!あたしのような人はあまり世間受けがよくないんです!オタクオタクとののしられて学校生活の破滅を迎えるんですぅ!わかったらこれ以上あたしのことを……」
そこまで名古ちゃんが言った時だった。
「おーい、お兄ちゃん!」
「!?」
名古ちゃんがものすごいスピードで声のしたほうへと振り返る。それに遅れて僕も振り返るのだが、そこにいたのは由美子だった。友達を連れているらしい。
僕の近くまで走ってくると後ろの人たちへ視線を移してこういった。
「ね、ちゃんと友達いるでしょ?」
「そうだね……で、どうかしたの?」
「どうかしたのって……このまえお兄ちゃんが信じられないみたいなこと言ってたからせっかく見せたのに!」
「ああ、ごめんごめん……」
「あれ?さっきまで一緒に誰かいなかった?」
そういわれてそういえば由美子には名古ちゃんのことを言っていたのを思い出す。そして、由美子が言った事に疑問を覚えながらも周りを見たのだが名古ちゃんの姿はなかった。
「あれ?いない……」
「誘拐かな?」
「まぁ、大丈夫だろうけど……」
きょろきょろしていると由美子の友達二人が到着。僕に頭を下げてきた。
「初めまして、由美子ちゃんの友達の真壁です」
「同じく佐藤です」
「あ、どうも……間山霧之助です」
真壁に佐藤さんに挨拶をしていると後頭部に何か当たる。
「いたっ……」
「どうかしたの?」
「う~ん?何か当たったような気がしたんだけど……」
そこらにはたくさん小石が転がっている。ぶつけられたにしても犯人の姿はなかった。
「ねぇ、お兄ちゃんこれからどこかでお茶しない?」
「ごめん、ちょっと今日は用事があるし夕飯の買い物をしないといけないから遠慮しておくよ」
「そっかぁ、それじゃしょうがないね」
ばいばいと手を振る由美子たちに手を振り替えして彼女たちの姿が消えるのを待つ。
行方不明となった名古ちゃんの安否が気になるわけだが……
「あ~危なかった!」
「そこにいたの?」
近くの家(誰の家か不明)からのっそりと現れた名古ちゃんに呆れたのだがそれよりも彼女は僕より呆れているように見えた。
「どうかした?」
「……先輩、普段こんなに帰宅で時間とられてるんですか?」
「いや、普段はいつもスーパーに夜だけだからね……そんなにとられないはずなんだけどおかしいなぁ……」
今日に限っていろいろな人たちに会う。
「じゃ、行きましょうか」
「そうだね」
その後、まだまだ名古家へ到着しないという事態に陥ったりするのである。
今回で百三十話です。いやぁ、ここまでの道のり険しく遠いものとなりました。思えば開始早々くじけそうになってしまったあの時とか百話目でやめちゃおっかなという甘い誘惑を振り切ってここまで来たわけです。まぁ、読者なくしてはここまで来ることはできなかった、感想いただいていなかったら今頃横になってお尻でもかいていたに違いありません。今回はお礼を述べさせていただくのを後書きにかえさせてもらいます。いつもご一読いただきありがとうございます。今後もこの小説を宜しくお願いいたします。十月七日水、十三時四十四分雨月。




