◆第百二十七話◆◆
第百二十七話
六月の半ば。湿気が世の中を支配して除湿機部隊がよく売れているであろう今日この頃。湿気を防ぐにはどうやるべきだろうかと一人で考えていると猛がやってきた。相変わらず暇人である。
「リベンジだ!」
「は?」
第一声がこれだった。かわいそうに、この湿気の中で精神的に疲れてしまったに違いない。ここまで神経が弱い人間だとは思わなかった。
しかしまぁ、きちんと話は聞いてあげておこう。
「どういうこと?」
無言で手渡されたものは黒いノートだった。
「これってあれ?名前書いたら人がぱたりと……」
「違う」
「恨み手帳?僕もひざかっくんを仕掛けてきた奴の名前を……」
「はずれ」
「じゃあ……」
「読んだほうが早いだろ」
そういわれてついつい納得してしまった。そういうわけでノートを開けたのだが、なるほどリベンジの意味がわかった気がした。
「これってあれ?ツンデレノートだっけ?」
「ちょっち違うけどな」
去年悠子に対して試してみたのだが散り散りばらばらにされた後、着火されてちりと化してしまったのが頭の隅のほうに残っている。
「で、これを国際電話で悠子にまたやるの?」
さすがに電話の向こうから火をつけられる心配はないだろう。そう思っているとどうやら違うらしい。
「おいおい、何もお前の妹は一人じゃないだろ?」
「?」
―――――――――
「ただいま~」
「お帰り」
僕と今一緒に住んでいるのは間山由美子。モデルをしていたが今はやめており、学校ではクールなキャラを演じているらしい。以前はおっとりした子だと思っていたがそれも演技で構ってちゃんじゃないかなぁと最近思ったりする。あと、僕から言わせて貰えば大根役者もいいところで学校で由美子の演技がばれていないか少々不安でもある。そんな妹だ。
「あのさ、僕をなじってみて」
「………は?」
思いっきり不思議そうな顔をされてしまった。そして、ものすごく心配そうな顔をしている。
「ど、どうしたの?頭でも打った?」
「いや、打ってないよ」
「じゃあ何でそんなこと言うの?」
「ん~まぁ、これが原因」
「?」
悠子のときと同じく、というよりデレて貰う前にさっさと種明かし。絶対こいつはデレわけがないと踏んだので時間の浪費を抑えただけに過ぎない。そういった理由でノートごと由美子に渡す。
ぱらぱらとめくっていき、最後のほうでため息を一つだけ吐いた。
「はぁ、あのねぇ、ツンデレなんてひねくれたやつがするものよ」
「そうなの?」
「そう、素直じゃない人がするものなの」
なるほど、悠子は確かにひねくれているところがある。
「そのこと考えると私はとっても素直だから」
「素直な子は演技をしないよ?」
「揚げ足取らないで話を聞いてよ……ともかく、私がやるものじゃありません!といいたいところだけどお兄ちゃんがこういったものが好きだって言うのなら……やってあげなくもないけど?」
ちらりちらりとこっちを見てくる由美子。
「う~ん、よくわからないから別にしなくていいよ。それに由美子、学校帰りだから疲れてるでしょ?」
「別に疲れてないから…それに、お兄ちゃんが心配することじゃない」
つっけんどんにそんなことを言う。まったく、素直じゃないなぁ。
「……そうかなぁ?由美子が疲れて倒れちゃったら僕、悲しいけど?」
「……」
由美子がジト目でこっちを見ている。
「ま、まったく!何でそんな恥ずかしいことをべらべらしゃべれるかなぁ?私にはできないっ!!」
「ん?由美子だって素直ないい子じゃないの?」
そういうと一つため息を由美子ははくのだった。うん、どうやら疲れているようだ。
「……まったく、お兄ちゃんにはかなわないわ」
やれやれとつぶやいて由美子は自室に引っ込んだ。
雨月の小説は日本一!なぁんて言っていると見放されることが多々あります。実力不足で力ありますよと謳った方たちは空のかなたに消えました。いやはや、おそろしい話です。さて、前回で東結編が終了し今回からまた単発で終わりそうな話だらけの予定です。予定、予定通りとはよくいいますが本当に予定通りになることなんてめったにない気がしてなりません。間山霧之助一年生のころはただ高校生というそれだけでしたが二年生になって、一年とまた同じ繰り返しってのもいけません。そういうわけで、去年とはちょっと違う感じになっていく予定です。あ、シリアス方向にはなかなか転がらないかもしれません。そして、この小説のエンディングはどうなってしまうのでしょうか?感想評価その他(エンディングまたやってくれよぅなんてものが来たら再び喜びます)ありましたらお願いしたいと思います。それでは、また今度!十月四日日、九時四十三分雨月。