◆第百二十六話◆◆
第百二十六話
結さんは手紙へと視線を移す。
「……事故の件について私はもう何とも思っていませんし、そちらが誤った事故だというのなら別に他言しようなどとも思っていません。理由としましては病院代なども出していただいたから。しかし、私の兄である間山霧之助には一応教えておいて欲しいのです。あなた方に本当に謝る気持ちがあるというのなら東家でパーティーを開き、そこでお兄さんに許してもらえるように言うことができるでしょう。若輩である私がこのように命令するような形なのは憤るかもしれませんがパーティーを行うこと自体経済面から見てもどうってことはないでしょうから。徒労に終わってしまうかもしれませんので先にお詫びを申し上げます……」
前文訳してもらった自分が恥ずかしかったりする。つまり、去年怪我したのは東家がかかわっていたということなのだろう。
「それで、霧之助さんはどうするのですか?」
結さんが小首をかしげて僕のほうをみる。
「どうするってもう、許しちゃった後だよ。さっきの取り消しますとかいえないし……大体、悠子がそれでいいって言っているならいちいち僕が口出すこともないよ。薄情かもしれないけどね……悠子はしっかりしてるから」
「そうですね、あの子は自分で立てますから」
そういって結さんはため息を一つだけ吐くのだった。
「まったく、今回のパーティーは本当に徒労ですね」
「そうですか?僕は結さんと一緒に来ることができてうれしかったですよ」
「また……そうやっておだてても何も出ませんよ。相変わらずお世辞とかそういったものだけはお上手ですね?」
ふっと軽く笑われてしまった。うーん、別にお世辞とかそういったつもりで言ったつもりじゃなかったんだけどなぁ。
「では、わたくしたちもパーティーへ戻りましょうか」
「そうですね。せっかく開いてもらったんですから」
―――――――
行きが徒歩なら帰りも徒歩である。送っていくという申し出に丁寧にお断りして結さんとともに夜道を歩くという選択肢を選んだのである。知り合いだ、夜道で襲われることもないだろうが最近は顔見知りの犯行が多くなっていると聞く。
「霧之助さん、また何か失礼なことを考えていませんか?」
「いえ、考えていませんよ♪いやだなぁ、僕がそんなことを考えていると考えるなんて結さんも人が悪いですね?」
苦しい笑みをうかべてみるもどうでもよさそうに結さんは一つため息をついた。
「どうしたんですか?」
「少し疲れただけです……慣れない格好をしていますから」
「う~ん、確かに似合ってますけどいつもの結さんのほうがしっくりきますね」
今の結さんをじっと見ていると何故だかわからないがドキドキしてしまう。普段の結さんを見たところで心臓がどきどき(ライオンに狙われる心境が一番近いと思われる)する程度だ。
「けど、今日は誘っていただいてありがとうございます」
「いえ、これは頼まれていたことですから」
「それに、なんだか助けてもらいましたし……」
「ああ、あのことですか。あの方は、というよりわたくしは東家の大半の方たちのことをあまりよく思っていませんからお気になさらずに」
ふふふと笑う結さんの横顔を見ているとなんだかいつもの感じに思えてきて不思議でしょうがない。
ふと、結さんが立ち止まって僕のほうをしっかりと見てくる。あまり身長が変わらないので目と目があってしまうのだ。もちろん、僕はすぐにそらしてしまった。
「今日は特別ですよ」
それだけ言うと僕の腕に自分の腕を絡めてきた。な、何だこれは?鼻の下を伸ばした瞬間にやられるまるでクノイチ的手段か!?
「え?あ~……」
戸惑っている僕をよそに結さんは暗い夜空を見上げるのだった。
「わたくしたちを他人がみたらどのように見られるのでしょうか?」
「え~と、夫婦?」
「ふふっ、またそうやってすぐに冗談を……相変わらず冗談を言うのが好きなんですね」
冗談で言ったつもりじゃなかったんだけどまぁ、そういわれてすくわれた気がした、足元を。
前回、◆がどうとかこうとか、そんな話をしました。覚えてくれているなら幸いですが、忘れてください。あれは作者雨月の勘違いによるものでした。さて、久しぶりに悠子の名前が出てきました。まぁ、悠の名前は出てきてないですし、野々村家とはご無沙汰しておりますねぇ。雨月の体調が今現在芳しくなく、昨日は新型インフルエンザにやられたのではないか?とも思ったのですが、今日目を覚ましてみて何とか動ける状態なので大丈夫でしょう。もし、新型にかかっているのなら細菌兵器と成り下がったわけですけど……風なんてめったに引かないので病院もあまり行きません。そういうわけで、ぼーっとしながら後書きを書いているわけですよ。いやぁ、やっぱり病気というか体調がいまいちな時が一番健康のありがたみを知ることができますねぇ……本当、しみじみそう思います。ああ、そういえば新しくなって(またこのねたかぁと思った貴方、多分今回で終わりですので安心してください)レビューなる機能がついているのに気がつきました。これって作者がやるもの……ではなさそうですねぇ。自画自賛したって意味ないですから。まるで爆弾に扱うように接しているわけですがレビューってどういった方が書くものなんでしょう?やはり、読者……様?ま、まぁ、いずれレビューを書いてくれる人もいるかもしれませんのでこれから先も宜しくお願いします。感想、評価その他ありましたらお願いしたいと思います!十月三日土、十二時五分雨月。