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◆第百二十四話◆◆

第百二十四話

「言ってたとおりちょっと友達の家でパーティーがあるからそれに行って来るね」

「あ~ホームパーティーでしょ?行ってらっしゃい」

「うん、いってきます」

 由美子一人で大丈夫かなぁと思ったので、昨日のうちにインスタントラーメンなどを買っておいた。

 何事もありませんようにと祈ってから玄関を開けると、そこには緋色の着物を着た女性が立っていたりする……

「あの、どちら様で?」

「お約束のボケは必要ありませんよ、霧之助さん」

 ふっと淡く笑うその人が結さんだと本当に気がついていなかったのは黙っておこう。それと、ついでだが結さんがこんなに美しい人だとはこれまで気がついていなかった。きっとばれたらつるし上げられるに違いない。

「あ、あの、綺麗ですね」

「ふふ、お世辞でもうれしいですよ。では、行きましょうか?」

「は、はい!」

 差し出された右手をまじまじと眺めていると結さんは一つため息をついたのだった。

「え?どうかしましたか?」

「こうやって女性の方が手を差し出したら男性は手を握るものなのですよ」

「え?そうなんですか?」

「ええ、他ではどうか知りませんが東家ではこのようになっているのです」

「あ~は、はい!!」

 緊張しながらもゆっくりと結さんの手を握る。まだ到着もしていないのに緊張しているとは……これほど滑稽なことはないだろう。

「では、行きましょうか?」

「はい……」



――――――――



 パーティー会場は何のことはない、洋一郎の家で催されていたのだった。以前来たときとはまた違う場所にて僕を招き入れてくれたわけだが、天井の高いところで立ち食い(庶民的言い回し)パーティーだったのだ。

「やぁ、やっぱりきてくれたんだ!」

「あ~、久しぶり」

「うん、久しぶり!悠ちゃんから手紙とかちゃんと届いてる?」

「まぁ、ね……」

 もはや悠や悠子から届く英語のお手紙はやぎさんも目を回すほどの手紙数となっている。一枚の手紙にびっちりと書き込まれたアルファベット。きっと手紙を返さないためにお小言が半分を占めているのだろう。

 そんな怖いことは忘れて今日は楽しもうと決める。

「ここの建物はちょっと入り組んでたから……で、誰に案内してもらったの?」

「結さんにつれてきてもらったんだ」

「な~るほどぉ!」

 なにやら納得したようにぽんと手を叩く。そして僕の肩をたたくのであった。そんな僕らのところに結さんと美月ちゃんがやってくる。

「こら、洋一郎……霧之助さんを叩くものじゃありませんよ」

 思い出したのだが結さんの兄である東公彦先生は洋一郎のおじにあたり、必然的に結さんはおばにあたるのである。ここまで歳の近いおばってのはなんだかうらやましい気がしてならない。

「別に叩いたんじゃないよ?」

「そうですよ、僕はそんなに気にしてま」

 こんな風に友人を助けなくては!男が廃るぜ!

「霧之助さんは黙っていてください」

「……はい」

 ぴしゃりと言い放たれてしまった。うう、怖い。

「オニヨメだ」

「洋一郎、何か言いました?」

「霧之助さん、今日は楽しんでいってくださいね……こうしてパーティーを開いてもらえたのも霧之助さんのおかげでもありましたから」

 給仕をしている美月ちゃんが僕にいろいろと食べ物を渡してくれる。

「うん、ありがとう」

「では、霧之助さん、あちらのほうに行きましょう……貴方に会いたいという方がいますから」

「わかりました」

 結さんにそういわれて僕は洋一郎と美月ちゃんに手を振る。

 僕らがいた場所は隅っこのほうで中央の部分など人が多すぎて気分が悪くなるほどだった。

「大丈夫ですか?」

「はい、けどちょっと人が多すぎて……」

「なるほど、それならば少し遠回りにはなりますが壁に沿って歩くことにしましょう」

 結さんに手を掴まれて引っ張られる。まるで子どもみたいな扱いだったが、そうしておかないとはぐれそうでもあった。

 ついつい強く握ると結さんもしっかりと握り返してくれていた。そんな些細なことがいちいちうれしかったりする僕は意外と寂しがり屋なのかもしれない。

「お、ちゃんと来てくれていたのか間山」

「先生……」

 途中名前を呼ぶ人がいたので立ち止まるとそこには東公彦先生が立っていた。そして、その隣にはこれまたものすごく美人である女性が微笑んでいる。

「先生、この人は?」

 気になったので訊ねてみると予想していた通りの答えが返ってきた。

「先生の妻だ」

「あ~そうなんですかぁ……」

 どういったものだろうかと思ったのだが先生の妻だという人は軽く会釈をするだけで話そうとはしなかった。

「霧之助さん、行きましょう」

「え?あ、はい」

 結さんの顔は険しいものでどうやら先ほどの人と仲がよろしくないようである。僕を引っ張っていき、あまり人がいないところまでつれてこられた。

「わたくしはあの人のことが嫌いだと先に言っておきます」

「そうなんですか……理由は聞きませんから」

「ええ、いうつもりもありません」

 確固たる意思がそこにはあり、そしてあの先生と結さんの間では非常に深い溝があるのだろう。先ほどの方も結さんのほうを心なしかにらみつけていたようなそんな気がするし。

「あ~えっと、何か飲み物とってきますね?

 首をつっこまないことにして僕はいったん逃げることにしたのだった。



―――――――



「言うつもりはありませんがまぁ、たまに独り言ぐらいはつぶやきます」

「え?」

 飲み物を持ってきて数分、しばしの間つっけんどんな感じになっていた結さんの口が開かれた。

「……先ほどの方は以前のわたくしを担当していただいておりました教師。 わたくしがあの方に暴力を働いていなければ東家に名前を連ねていないでしょう」

「どういうことですか?」

 口を挟んだのがいけなかったのだろう、結さんがこちらのほうをじろっと見ていた。

「……少々口が軽すぎましたね。隣人に話すものではありませんでした。ここで油を売っていても仕方ありませんから」

 再び僕の手を握ってから引っ張っていく。今度また機会があったら聞いてみることにしよう。



―――――――



「ここです」

 案内された場所はひとつの部屋で、遠くのほうからパーティーの音が聞こえてくる。

 結さんが僕の前に立って扉を何回かノックする。すると、中からどうぞという声とともに扉が静かに開けられたのだった。


いまだリニューアルしたこのサイトの使い方を熟知し切れていない作者雨月です。レビューって何?ポイントって何?ポイントってあれですかね?ある程度はなれたところからうてば点数が若干増えるという……はい、違いますね。

この小説を読んでいると誰がヒロインなのかもはやわからずじまいになっちゃうかもしれません。一応、誰がヒロインかは設定しているのですが線引きが若干不安定になってきています。気がつきゃ東結フラグみたいなものまで立っちゃっていますし。彼女は悩める少年に道を教えてくれるだけの存在でしたけど……恐るべし、間山霧之助……いまやヒロインに仲間入りしちゃっている感が否めません。んじゃまぁ、一つばかり予報をしておきましょう。今後の展開についてですけどね。東結編が終了すると期末テスト……ではなく、別物が挟まってきます。それがいったい何であるのかは秘密にしておきます。時間がある方は予想してみてください。では、いつものように感想などがありましたら宜しくお願いいたします!十月一日木、二十時五分雨月。

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