◆第百二十三話◆◆
第百二十三話
なまはげにて結さんの存在を確認。憂いたように(実際はイライラを包み隠さずあたりに振り回したような感じ)座っていた。
「霧之助さん、こっちですよ?結構かかりましたねぇ?」
くくく……そんな笑みがよく似合う美人って結構多いんだよね。身の危険を感じたため、ウェイターの人に結さんがいるところを指差してそこへと案内してもらうことなく自分で向かう。先ほどのウェイターさんがお冷を持ってきてくれた。まぁ、喫茶店でこういうのってもはや珍しい気がしないのは何故だろう?ただ単に僕が行ったことがある喫茶店が個人経営だからかな?
「ご注文がお決まりになりましたらおよびください」
マニュアル通りであろう反応をして去っていく。結さんのテーブルの上には何もおかれておらず、メニューすら読んでいない様だった。
「何か頼まないんですか?」
「頼んでいいのですか?」
逆にそう聞き返される。
「え?まぁ、いいんじゃないんですか?話をしている間だってのどが渇きますから」
「そうですね、お言葉に甘えて……すいません、この炭酸緑茶を一つください」
―――――――――
「なまはげってマスターが青森の人だからつけたそうですね」
「ああ、聞いたことがあります」
「きっと故郷のことが忘れられないのでしょうね……」
「はははは……そうですね、それで、大切なお話って何ですか?」
きっとあまりいい話ではないのだろう。びくびくしながら雑談から本筋へと路線変更。ねずみが猫の前で気を許したらどうなるか、あっという間にねずみは消えてしまうのです。
で、ねずみは何処に消えたのでしょう?
「実は今度の週末に東家でパーティーが催されるのですよ」
「パー……ティー?」
「ええ、そうです。それに霧之助さんをご招待するようにといわれました」
絵に浮かぶようだ。シャンデリアが宙を舞い、豚を丸焼きにしたものがテーブルの上で自己主張……そんなパーティー!?
「えええ!?い、いいんですかぁ!?」
そう訊ねるとにこりと結さんは笑うのだった。
「ええ、かまいませんよ」
しかし、思い返せば東家にパーティーにいけるようなことを僕はしたのだろうか?洋一郎を助けたぐらいしか…いや、待てよ?結婚式みたいなものをぶち壊したのは覚えてるぞ?
つまり、それは逆にやばいのではないのだろうか?
パーティーに呼ぶ、そこにはもちろん東家の人々がたくさんいるわけである。そして、きっとあの式のようなものの責任を取らされるのではないのだろうか?
謝罪を(土下座じゃないよ)、謝罪を求められるに違いない!
「ち、ちなみに聞くけどそのパーティーを催すのってどなた?」
「東勇気様です」
「勇気……様?」
「霧之助さんを是非にと誘ってらっしゃいます」
知らない、そんな人からパーティーに誘われることなんて僕してない!登録もしてないようなサイトから百万円当たりました!みたいな感じじゃない?
身の危険を感じたために適当な理由をつけて逃げようと心に誓う。詐欺師はいつも安心させたり恐怖に陥れるのが得意なのだ!飴と鞭の使い方を一番知っている職業だといえなくもない。
「あのぅ、非常に申し訳ないんですけどそのパーティーって今度の週末ですよね?」
「ええ、そうですよ」
にこりと笑う結さん。屈託なく笑う彼女の姿は今日が始めてだ…。人はいつもと違う様子を見ると凶兆の前触れだと信じて疑わないのである。
「辞退させていただきます」
「安心してください、霧之助さんの思っているような仕返しではありませんから」
「え?」
やれやれ、困った人だという表情を結さんはしながら僕に告げる。
「前回の野々村家との一騒動はすでに解決されていますからね。聞き分けのないこちらもあちらももはや干渉しないようにしているのです」
「そうだったんですか…すみません」
「謝ることはありません。まぁ、中にはいまだ惜しいと感じる人もいるでしょうが…」
「え?」
結さんはすっと僕の手を掴む。一瞬だが僕の鼓動が早くなった。あくまで、一瞬である。
「……この東結が貴方を守ってあげますから」
「あ~ど、どうも……」
そして僕は東家パーティーに出席することになったのだった。
――――――ー
「あの、僕がやっぱり払うんですね」
「ええ、頼んでいいといったのは霧之助さんですから」
「……」
もしも結さんと結婚したら僕、尻にしかれるんだろうなぁ。
リニューアルによって後書き大幅アップ!これまでも長い長いといわれてきましたがさらに長くだらだらと後書きを連ねることが可能となりました!しかし、今現在でこれまで皆様が評価や感想を下さっていたのを見ることができないのが非常に残念です。さて、今回の話では東結が出てきました。そして、わかる人にはわかる東洋一郎もそろそろ顔を出すところです。これから先、少々そこでのことを書いていく予定ですので、ちょっとばかり長い話になりそうです。ああ、感想なんかいただけるとありがたく読ませていただきたいと思っております。一生懸命後書きを書いたとしてもそれは所詮一つまみ……次回がどういった展開になるのか予想しちゃった人もいるかもしれませんがこれから先も読まれない展開を雨月は目指そうと思っております。よろしければ次回もお読みください。では、感想評価その他ございましたら是非、宜しくお願いいたします。