◆第百十五話◆◆
第百十五話
沈黙が続くこと十二秒(暇だったので数えてました)高畑さんは口を開いたのだった。
「間山君は雪の彼氏じゃないね?」
一発でばれましたよ、雪ちゃん……
「……いや、彼氏だよ?」
「嘘言っちゃ駄目だって学校で習わなかった?」
「……」
ものすごくやりづらい人だ。目をそらさずにしっかりと僕の目を覗き込んできている。そらしたってそちらのほうへと動き、ぴったりと目を合わせてくる……
黙りこくった僕をどう見たのだろうか?にやっとしながら自分のあごに手を這わせる……今、気のせいだろうか?目が光ったような……
「まぁ、大体雪の考えることなんてわかるからね〜……大方、彼氏がいると大見得切ったもののあたしが来る間だけでお願いされた……しかも、嫌とはいえないやり方でお願いされたに違いない!異議有り?」
「異議なし!」
ああ……言っちまったよ雪ちゃん……僕は君の、君のあの顔を忘れちゃいない……君が怒るとライオン並みに怖くなるって知ってるんだ……だけど、嘘をつくなんていけないことはこの世にないと思うんだ。嘘、言ってないよ僕は!
「ごめん、嘘ついててこんなこといえる身分じゃないけど黙っててくれないかな?」
一生懸命頭を下げる。人は誠意を見せることによって他人とより良好な関係を築くことができるはず……なのである。
「いいよ〜その代わり、一つ貸しね?」
初対面相手になんともまぁ、面の厚い人なのだろうか?きっと前世は悪代官か何かに違いない!
「あれ?今何かものすごく失礼なことを考えなかった?」
「滅相もございません」
ただただ僕は、平穏を祈るだけでございます。
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「は、はい、あ、あ〜ん……」
「あ、あ〜ん……」
「このこの〜見せ付けちゃって!」
今、僕は地獄を味わっている。
いや、まぁ、本当は天国かもしれない。
しかし、高畑さんは人をいたぶるのがすごく、いや、ものすごく大好きなのだろう。
にやっとした表情を見せた後はろくなことがなかった。
腕を組むのはもちろん、ペアルックを僕らに着せ、それをケータイで撮って今はこのように『あ〜ん』を強要されていたのだった……ちなみに、ペアルックも『あ〜ん』も作戦の中に入っていたりするんだけどね……だから拒むこともできないのである。それに拒んだら『あれ?二人って彼氏と彼女なんだよねぇ?』なぁんて何かいいたそうな顔で僕を見るのである。
重圧と書いてプレッシャーと読む!それを肌で実感した気がする。
「あれぇ?霧之助君の表情がなんだかあやし〜なぁ?」
「ま、間山さん……お願いします」
小声で雪ちゃんがそんなことを言ってくる。
「うん、おいしいよ雪ちゃん……」
パフェは高いし、このお店だって結構有名。味も人気があるのだが……緊張で味がまったくわからない。こんなこと生まれて初めてだ。
「わたしたちはとっても仲良しなんですよ……ねぇ?」
「う、うん……二人の絆は海よりも深く空よりも高いんだよ」
ちらりと僕を見てにやりと笑う高畑さん。
「……うっそつき〜」
「ぐが……」
「里香、何か言いました?」
小首をかしげている雪ちゃんになんでもないといってから立ち上がる。
「じゃ、次は何処行きましょうかね〜」
いまさらだが、思うのだ……もしも、もしも他の誰かにこんなところを見られたら……どうなるだろうか?
―――――――――
人は皆、臆病だ。目の前の絶叫マシンで僕は足の震えが止まらない。
そう、これが最後の作戦。これまで作戦というより強制に近かったのだが……『絶叫マシンに乗るぐらいだったら僕は君と別れるよ!』という作戦名である。
「じゃ、次はこれに乗りましょう間山さん」
「え!?これにのるのぉ!?僕乗れないよぉ」
実際に乗れない。これは演技ではない、演技なんていつかはばれるのだ……だが、本心から苦手な気持ちをひねり出し、駄々っ子をやり抜いてみせる!
「嫌だ、こんなの乗るくらいなら君と別れる!」
「な、何てことを……」
よよよと泣き崩れ始める雪ちゃん……言っちゃなんだけど演技へたくそだなぁ〜。
「わたしもそんな軟弱ものと一緒に余生を過ごしたくありません!別れましょう!」
「ああ、それがお互いに一番だね!じゃ、ばいばい!」
ちらりと高畑さんのほうを見るとにやっとした表情のままだった。何か突っ込む気か?とも思ったのだが何も言わなかった。
作戦としてはこの後僕は素直に家に帰るというものだ。もちろん、それにしたがって僕は家へとさっさと帰ったのだった。
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一人の男子高校生が去った後、比較的人気のある遊園地の観覧車内でこんな会話を聞く事ができた。
「や〜れやれ、雪って大胆なんだか引っ込みなのか……どっち?」
「わ、わたしはどっちでもありません!」
「ああそう、こんな回りくどいやり方で満足?」
「ま、満足です」
「素直にやればいいのになぁ。あっちも付き合ってくれるよ」
「……無理ですよ!だからこうやって頼んだんじゃないですか!」
「そっかそっか、確かにそうだけどまぁ、次からあたしをネタには使えないんじゃない?」
「そ、そうですけど……」
暮れ行く夕日を見ながら片方は答えた。
「ま、あの間山クンが悪い奴じゃないってのがわかっただけでもよしとしよ〜か?」
「疑ってたんですか?」
「そりゃまぁ、こっちじゃ有名だからね〜……いまだ入院してる奴がいるし……ちょいと心配してたのは事実」
「あの人は……いい人ですから」
「そっか、それならあたしは心配しなくていいかな〜」
観覧車は一周し、彼女たちを地面へとかえしたのだった。
「ちょいとあの間山クンに興味を持った……じゃ〜ね〜雪!お幸せに!」
「余計なお世話ですっ!!」
遊園地を出ると二人はそれぞれ反対方向へと帰ったのだった。
基本雨月は阿呆です。シリアス小説書いていると気がついたらギャグを飛ばし、誰もがちびるようなバッドエンドを自分で読み返しては後悔の念にさらされてハッピーエンドに書き直します。興味本位でやったギャルゲーの最後にまったくの納得ができず一週間ずっとへこんでいました。そしてネガティブな考えです。常に後ろ向きに考えねば何かやってしまったとき対策ができないから……そんな前向きだか後ろ向きだかわからないスローガンを持っているのです。そして、感想とか評価が来ると顔がにやけて頭の中が幸せいっぱいになるのです。きっと、雨月は世界で一番幸せかもしれません。さて、冗談はこのぐらいにしておきましょう。新たな人物が前回から出てますね?そして、雪の共謀者でもありました。こういう人がダブルフェイスというのでしょうか?まぁ、今後予定がどうなるかわかりません。そしていよいよ次回からはみんなの大好きな中間テストが始まるのです!もちろん、今回もあの人はおかしくなってしまいます。後書き読み返して自分はきっと疲れているのだろう、そう思ってなりません……感想評価(どっちかというと感想よりです。わがまま言ってすみません)その他ありましたらよろしくお願いします。