◆第百十話◆◆
第百十話
僕は熱めのお湯が大好きだ。なぜかって?出た後のなんというか、喪失感がたまらないからである。この意味がわかるだろうか?疲れが吹っ飛ぶというのが実感できるし、すかっとするのである。
熱いお湯に入っていると脱衣所にて人の影が確認された。
「……」
泥棒だろうか?と声を潜めていると声が聞こえてきた。
「あの、お兄ちゃん?」
「え?由美子ちゃん!?」
「うん……」
しおらしい声で語りかけてきたのはなんと由美子ちゃんだった慌てて湯船のほうに入り込んで無意味にびびってみた。
「ど、どうしたの!?」
「……謝りたくて」
何かしたのだろうか?う〜ん、もしかして部屋に飾ってあった悠子からのプレゼントを壊しちゃったとか?ま、まぁ、壊しちゃったのなら仕方ないか……あれって燃えるごみに入るのだろうか?
「何をかな?何か……壊しちゃったの?」
「ううん、そういうことじゃないの」
残念ながら違ったようだ。
――――――――
「ん?」
「悠子、どうかした?」
「ん〜……なんだか今お兄さんが失礼なことを考えた気がしてさ」
「気のせいでしょ」
「そうかしら?」
――――――――
少々の間待っているととうとう由美子ちゃんの声が聞こえてきた。
「あのね、この前の彼氏の話……私が間違ってたんだ」
「あ〜なるほど」
あれのことか、というよりあれのこと自体僕もう忘れかけてたよ……なんていえない空気だったので黙っておくことにした。
「ずっとずっとさ、優しくしてもらったことなんてなかったから。お父さんだってほめるのはいつもお姉ちゃん、悠子のことだけだった。一生懸命可愛い子ぶっても家族には何故だかばれちゃうから……そんな時あったのがあの人だった」
残念ながら僕はそこまでお人よしではない……さて、どういう意味だかわかるだろうか?
「由美子ちゃん、悪いけどそこをどいてくれないかな?」
「え?」
「僕はね、かわいそう、守ってあげたいとかそんな話をされても君に同情とかしない……家族だから」
「………」
酷い、いや非道い一言かもしれないけどさ、同情なんて本当に他人にしかしないと僕はおもってる。慰めるのなんて相手を支えてあげることに比べれば本当に大変なことなのだ。その点においてはやはり悠子のほうが由美子ちゃんよりも勝っているといってあげたい。あの子は全てを一人で解決するだけの力を持っていたのだから。
「どうせこの前結さんがここから出て行くときにちょうど由美子ちゃんもこの話を聞いてた……そうだよね?違うのなら謝るけど?」
すでにあのときの違和感というかちょっとした間のことは自分の中で解決済みであったりする。
「……あ〜もうっ!!何でこんなにうまくいかないの!」
そんな声が脱衣所から聞こえてきたのだった。
前回と前々回の話がまったく同じだったことに指摘された後、気がついてしまいました。お詫び申し上げます。いつもは投稿した後確認しているのですが、どうもミスしてしまったようです。今回で記念すべき百十回目の話ですね?たまに首を傾げたりもしますよ?よく、自分がここまでこれたなぁと。多分、ここまでこれたのは読者様のおかげなのだろう、読んでいない人がいたらきっと続けられていなかったに違いない、霧之助が屋上からダイブしたところで話は終わっていたと。実は、名古時羽とともに霧之助が入った店の話はもう少し違うものでした。夕飯の買い物があるといって霧之助が店をすぐに出るといったものだったのですがその後に続く百十話で書いていて違和感を覚えずに入られませんでした。さて、今回の話どうだったでしょうか?もうちょっと純粋無垢なキャラがでてもいいんじゃないんでしょうかねぇ?では、感想評価、その他指摘(間違いをご指摘してくださった方、ありがとうございました)よろしくお願いします。九月二十四日木、八時一分雨月。