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第十一話◆

第十一話

 週末、約束していた日は雨。当初計画していたものでは雨天中止という小学校の運動会よりも劣る計画であり、なぜかうちのベランダに洗濯物と一緒に逆さ吊りのてるてるぼーずが一ダースあったりもした。

『あ〜あ、結局中止かぁ』

「仕方ないよ、また今度ね」

『はいはい、おとなしく勉強でもしてますって』

 そいじゃあね〜とだけ残して電話が切れる。外では雨が自己主張を繰り返していた。それなのに悠子は着替えて出てきていたのだ。

「悠子、どこか行くの?」

「何言ってるの、私、言ったじゃない」

「雨の日も……行くって?」

「そう」

「あ〜、そ、そうだったっけ?」

 覚えていない自分が恥ずかしいし、ため息をつかれていた。

「ごめんごめん、せっかく悠子が誘ってくれたのに」

「別に誘ってなんかないわよ」

 ぶすっとした調子でそういって玄関のほうへと向かう。適当に支度して傘をつかむ。傘が一つしかないのにいまさらながら気づいた。



―――――――――



「悠子、もうちょっとよらないとぬれるよ」

「……はぁ、ついてない……」

「ぐちぐち言わないでよ、僕だって恥ずかしい」

 結局相合傘。お互い文句を言いながらも引っ付いている状態だ。あぁ、こんなところを学校の誰かに見られたら何かものすごい勘違いをされかねない。

 そんな僕の不安を知ってかしらずか……どうせ知っていても無視だろうが……悠子はずかずか先へと進んでいく。

「で、どこに行くって?」

「近所のデパート。そこで服とか買うだけだから」

「ああ、そうなんだ」

 さして僕に用事はない。よくよく考えてみたらこの用事にいちいち付き合わなくてもよかったような気がした。

 だが、いまさらかえるなんていったら悠子はどういった顔をするだろうか?きっと、すぐに傘から押し出されてそのまま帰れといわれるのだろうな。そんな馬鹿なことを率先してやるほど僕は愚図ではない。そういうわけでおとなしく悠子と一緒にデパート内へと入っていったのだった。



―――――――



 女性物の服しかない為に僕は手持ち無沙汰に悠子から離れないように後ろをついていった。

ここで迷子になってしまえばきっと変人を見るかのような目で見られるに違いない。そうなってしまったら『私に似合うお洋服はどれかしら?うふふ♪』とか『地上のエデン!下着売り場はどこだぁぁぁぁっ!!』とか言い訳しないといけない。もっとも、この程度の言い訳では警察を呼ばれてしまうだろう。

 まだ警察のお世話にならなくてもいいと思ったので悠子を見失わないようにその後姿をじっと見ておくことにした。水色のワンピースが春先にマッチしており、若干丈が短いかなぁと思ったがハイニーソのためにおかしいとは思わせない。すらっとしているために後姿は満点である。まぁ、前に回っておしゃべりしてみれば中身がどんなのかわかり人間外面だけでは生きて行けないと実感するだろう。

 一人うなずく僕を見て悠子が目の前であきれていた。

「……お兄さん、何馬鹿みたいにうなずいてるの?馬鹿?」

 ばっ……馬鹿を二回も言うなんて……心に言葉のナイフで滅多刺し!?誰か、警察呼んで!この外面だけで生きてきた悪い子を逮捕してもらわないと!

「何かまた馬鹿なことを考えてるでしょ?」

 内心本当だが、認めるのは癪だったために笑ってやった。

「おいおい、僕がそんなことを考えるなんてないだろ♪」

「暴言を吐いたから警察呼んでほしいとか思ってそう……」

 ジト目でこちらを見てくる悠子に対して冷や汗を垂れながら話題をかえることにする。

「で、買うものは決まったのか?」

「え?あぁ、うん。これとこれのどっちにしようか悩んでいたところ」

 握っていたものは薄めの赤色ワンピースと青色のワンピースだった。そんなにワンピースが好きなのかよ?と思ったのだが人の嗜好に口を出すほど僕は無粋じゃないし、おせっかいでもない。

「ん〜……青が似合いそうだな」

「まっ……」

「まっ?」

「まっ……まぁ、妥当なところだとは私も思うわ」

 そういって赤色ワンピースを元の場所に戻して会計へと向かっていく。その後姿が歳相応に見えて何となくだが新鮮だった。

 結局、他にやることもなかったので再び二人で相合傘。何が悲しくて妹と相合傘をしなくては(しかも初相合というのが嘆かわしい)いけないのだろうか?間山霧之助はシスコ〜ン!とか噂をたてられた日には屋上から紐ありバンジーを結構せにゃならんだろうな。

「お兄ちゃん、今日は……ついてきてくれてありがとう」

「ああ、気にしないで。どうせ家にいても暇だっただろうし……」

 ん?何か今おかしくなかった?


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