◆第百七話◆◆
第百七話
「♪」
今日の僕はものすごく機嫌がいい……なぜかって?そりゃあ学校へと続くアスファルト、そこの途中でなんと現代の宝箱、お財布を拾ったからである。ピンク色のかわいい財布の中身の金額がいかほどのものか非常に気になるものである。
ああ、もちろん千円以上中に入っていた場合は警察に届けますとも♪相手が大人だった場合は一割ほど貰いたいものですな、うはははは。
猫糞しないでちゃんと持っていけばもらえるときはもらえるのである。中身がどれほどか一応確認しておこう。
結果として中身を確認しなけりゃよかったと思ってる。
「……名古……時羽?」
カタカナでナゴトキハと書かれておりその隣には証明写真が貼られていた。あの娘である。僕に一回激突し、もう一度激突しようとしてしそこねたよくわけのわからない一年生のものだった。そういえば名前なんて聞いたこともなかった。
「……」
見てしまった以上、これは警察ではなく一年生の担任へと渡すべきであろう。着服してもいいのだがこの写真も付属品としてくっついてくることになるのだ。
ああ、なんとついていないことだろうか……わざと仕掛けられたブービートラップではないかと思ってしまう。
―――――――
「どうした霧之助?なんだかものすごく悩んでいるような感じだけど?」
「……う、うんちょっとね……」
「悩みなら聞くぞ?」
百合ちゃんがそういってくるのだがこれ以上悩み事を大きくさせたくはない。百合ちゃんに何か悩み事を話すと余計に、というよりこの人だったらこういうはずだ。
「盗っちゃえよ」
きっと、良心がないに違いない。少々心は痛いが嘘をつくことにした。
「……今晩のおかずをお肉にするかお魚にするか迷っているんだ」
「ああ、そんな悩みかぁ……ちょっと真剣そうだったから驚いちゃったぞ」
にこやかにそんなことを言う。そうだろうねぇ、きっとこんな顔で今晩のおかずを悩んでいる人なんてそうそういないはずだ。
「……どっちがいいと思う?」
それで一つ考えた。もし、百合ちゃんがお肉と応えれば……きちんと財布は返すことにしよう……そして、お魚と応えれば………
「そうだなぁ、私は……」
――――――――
そして僕は今、職員室前にいたりする。お昼休みの始まり時なら廊下には食事時のために人がおらず、先生たちも職員室へと殆ど戻ってきている。
「すいません、一年生の学年主任の先生って誰ですか?」
思えばあの人が魚を選ぶわけがなかった。どっからどう見ても肉食系。きっと前世はティラノサウルスだったに違いない。満月見たら狼男に変身して近隣の家畜を……
「学年主任はあの先生だよ」
変なことを考えていたら声が返ってきていた。指差された先にはジャージを着ているこわもての先生が机で書類作業に没頭している。近くには竹刀が置かれておりいつの時代の先生だ!と突っ込みたくなるも必死に押さえる。
「あのぅ、すいません」
「ん?何だ?」
ぎろりとにらまれながらもおずおずと二つ折りの財布を差し出す。こんな精神を不安定にしてしまう財布はさっさと手放したほうが身のためだろう。自分の身が一番かわいいのである。
「これ、朝学校に来る途中で拾いました……それで、ちょうど学生証がはみ出てて一年生のだってかかれてました」
「ああ、なるほどな」
財布を渡したので一礼をして帰ることにしたのだが……人生そううまくいくわけがなかった。
「待て、お前は最近の生徒の仲では珍しい奴だな。最近の奴は拾った財布を自分のものにすると思っていたがうれしい誤算だ」
「は、はぁ、ありがとうございます」
「偶然にも私のクラスのもののようだからな」
立ち上がり、ついてくるように言われた。ま、まさかこの展開は……
さて、エンディングの件ですが見事に総スルー。気持ちよいぐらいの無反応ですね。そのぐらいにしておきましょう。影が薄いという由美子、その由美子には実は秘密があり、名古時羽との出会いにより霧之助は気づくという感じになる予定です。休日も今日で終わり!今度のシルバーウィークは五年後か六年後ぐらいだそうですよ?オリンピックよりも期間があいてしまいますが、気長に待ちましょう!感想、評価その他(愚痴とか)ありましたらどうぞお伝えください。九月二十三日水、八時四十八分雨月。