◆第百六話◆◆
第百六話
家に帰るも由美子ちゃんはどうやらまだ帰っていないようで買ってきた食材で本日の夕飯を決定することにする。
今日のレシピとしては鮭の切り身に塩コショウと小麦粉をまぶす。熱したフライパンに油をひいて焼き目がつくまで焼く。そしていったんフライパンから出した後にバターを引いて再びフライパンに乗せた後にふたをする。
それと付けあわせとしていためたコーンを添えれば一皿分完成である。吸い物としてはわかめのスープを作ることにしよう。
もちろん由美子ちゃんの分も作ってはいる。
あれから数日は食べてくれなかったがどうやら僕が寝静まった後に食べているようで食器がつけられている。もちろん、朝起こしてくれなんていわれていないので朝食は作るだけ作って放置で家に帰ってきたらまとめて僕が片付けている。洗濯物も洗濯機に入れられているものを僕がまわしている。下着もちゃんと別の網に入れて洗っていたりする。
「……」
ガチャリという音がしたところをみると由美子ちゃんが帰ってきたようだ。お帰りとはいっているのだがあいにく、まだご機嫌斜めのようでちらりとは見てくれるものの無言で部屋にこもってしまう。
「お帰り」
そして今日もお帰りといったのだが……
「お久しぶりですね、霧之助さん……相手を確認しないでお帰りはどうかと思いますよ」
「……結さんじゃないですか……お久しぶりです」
最近あっていなかった隣人さんがやってきたのだった。
―――――――
「あ、すいませんが今日は夕飯二人分しか用意していないんですけど……一応、材料はあるんで作りましょうか?」
お茶を出してそんな話をする。
「いえ、今日はお夕飯を頂きに来たのではないのですよ」
「え?それ以外で僕の家に来る用事なんて結さんにあるんですか?」
「………」
静かに、だがその右手にはしっかりと竹刀袋が握られていたりする。
「冗談ですよ……で、実際はどのようなご用件ですか?」
そういうといきなり頭を下げられた。いきなりのことで僕はびっくりして声も出せない。
「うちの高校の生徒がこのたびは大変失礼なことをしでかしてしまい、まことに申し訳ありません」
「は!?何が起こったんですか!?」
ともかく、頭を上げさせると無表情だった。
「貴方の妹である間山由美子さんのことですよ」
「ああ、あれですか………もういいですよ。気にしないでください」
「今度再びあのバカをつれてまた謝りに来ますから」
またもや頭を下げようとする結さんを押しとどめてどんな風に言えばいいのか困ったが、まぁ、こちらも頭を下げることにした。完全に意味不明な行動だが許して欲しい。
「これ以上結さんが頭を下げないでください。あのことは僕の中でもう決着ついてますから。暴力は間違っているかもしれませんけど後悔なんてしてません」
顔を上げるとそこには微妙な顔つきの結さんがいた。
「………妹さんに嫌われたとしても?」
「別に構いません」
「本当に?」
「……嘘ですけど」
心の奥底まで見られそうな瞳が本当に怖かった。腰抜け(チキン)な僕はあっさりと本音を提示することにした。なんだかんだで一応結さんとも付き合い長いので(期間は百合ちゃんたちよりも短いがお隣だから)嘘なんてすぐばれる。
「去年、悠子と一緒だったときはもっと酷い目見ましたから」
一年前が懐かしいなと思いながらそんなことを口にする。
「そうですか、それなら……貴方がこれ以上の謝罪を望まないというのならわたくしもやめておきます」
「ええ、お願いします」
深々と再び頭を下げられたので同じように返す。立ち上がって一度だけ僕を見た。
「それでは、今日はこれで失礼します……」
「ええ、またきてくださいね」
わかりましたとそれだけ残して、扉が閉まる。そして、少し経ってから玄関の開く音が聞こえてそのまましまる音が聞こえてきた。
再び開く音が聞こえ、しまる音が聞こえてくる。首をかしげていると由美子ちゃんが入ってきた。
いつものように彼女は僕に目を合わせてくれなかった。
「……ただいま」
「お帰り」
そういってそのまま部屋へと引きこもる。うーん、まぁ、挨拶してくれただけでも一歩前進……だろうか?
ふと思うのですが次にエンディングを書くとしたら誰がいいんでしょうね?いや、さすがに気が早いとは思いますよ?誰からも頼まれていないんですからね。無難なところとしてはやっぱり東結ってところでしょうかねぇ?え?違う?まぁ、取らぬ狸のなんとやら……。とにもかくにも来るのかこないのかわからないものを待つのもこれまた一興だと思うことにしましょう。天高く馬肥ゆる秋とも言いますから何かおいしいものでも食べて待つことにします。後ろ向きに前向きな考えを目指している雨月でした。感想、評価ありましたらお願いします。