◆第百四話◆◆
第百四話
「えーと、話に聞いた限りではそんな感じですね」
その話を聞いて頭の中には一つの感情しか生まれない。怒りで我を忘れるか……このことをはじめて言った人のいいたいことが今日ほどわかる日はこれまでなかったかもしれない。
「そっか、猛……ちょっといってくるよ」
「おいおい、何処にだよ?」
猛に腕をがっしりと捕まられる。
ともかく、その男がどうしようもない奴だということが判明した。しかも、由美子ちゃんと付き合い始めたのは一週間ほど前とのこと。聞いた話によるとそいつと付き合った後の女の子の性格は一変するそうだ。もちろん、全員ふられてしまっている。話を聞いたところによるとそいつは近くの工業高校の人だそうだ。
「あのぅ、じゃあこれで俺は失礼させてもらっても?」
「ああ、悪かったな。部活がんばれよ」
「うん、忙しいところ邪魔したね」
そそくさと去っていくいがぐり頭のことはもはや頭になかった。今ではどうやってそいつから由美子ちゃんを別れさせるか脳みそを働かせている。こんなに一生懸命脳みそ使ってもクラスで一番になれないのだからうちのクラスはどこかおかしい。
「で、お前はこれからどうする気なんだよ?」
「そんなことは決まってるよ……じゃあね、猛」
おそろしいほどの力で掴まれていた腕をさっとはずして猛に手を振るが、再びその手はごつい手に掴まれていた。にらみを利かせるも猛は何処吹く風である。
「まぁ、待てよ。俺もついていく」
「暇人め、僕についてきても利益なんてないよ」
「お前の妹のサインを貰う。そんで転売するから気にするな」
やれやれ、困ったものだと思いながら二人で歩き出すことにした。行く場所なんて決まっている。時間はそうとらないだろう……だって行く場所は近くの工業高校なのだから。
――――――――
家に帰って料理をぱぱっとする。冷奴と野菜炒め。時間がない人にとっては本当に手軽にできる料理である。冷奴だって上にねぎを乗せたり刻んだ生のたまねぎを載せるなどという僕的には微妙なバリエーションが存在するのだがそれを含めたとしても冷奴だけで五分とかからないだろう。
久しぶりに身体を動かしたのですかっとした……とでも言っておこう。
「……ただいまっ!」
ずかずか!そんな擬音がちょうど似合ってる。おそろしく恐い表情をしている(悠子が怒ったときとそっくり)由美子ちゃんが僕の前に立った。
「信じられないっ!!!」
飛んできたビンタをかろうじて避けきった。人は一年で成長するものである。ああ、なんだか一年前のこの季節ぐらいに悠子にぶたれたような記憶があったりなかったり……。
もう一発は飛んでこず、怒りに我を忘れているといっていい由美子ちゃんがさらに恐い表情で目の前にいた。さっきの一撃食らっておけば彼女もすかっとしただろうに。
「何で嫌がらせするの!信じられない!もう別れようって言われたじゃない」
それだけいって自室へと引っ込んだ。まぁ、あれだよ。いわれるってことは覚悟してたから……けど、寂しいものだ。
ともかく、終わった嫌なことは忘れるに限る。そういうわけで僕は一応二人分作っていた料理が冷える前にさっさと食べることにした。
ま、冷奴はすでに冷えていたのだが。
若干影の薄い感じがしないでもありません。誰のことかって?そりゃあ、由美子のとこですよ。晴れてメインヒロインになったのにあまり登場していなかったりします。そして、これから先もなかなか……話は変わりますがここもリニューアルされるそうですね〜ぜんぜんそんなこと知りませんでしたよ。しかし、ここのかたがたががんばってくれているので作者である雨月も安心して使わせていただくことができるということなのです。感謝感謝すべきなのですよ。しかし雨月ももうここで何年やってるんでしょうか?三年ぐらい……でしょうかねぇ?今回はこのぐらいにしておきましょう。感想、評価ありましたらよろしくお願いします。