◆第百一話◆◆
第百一話
「あ、お帰り」
「ただいま、お兄ちゃん」
「……」
「……」
僕の名前は間山霧之助である。戒名はまだない。そりゃそうだ、死んでないんだから。
春の陽気に誘われて、そんな冗談を思いつくほど今の僕は暇だった。いや、正確には手持ち無沙汰といっていいだろうか?
久しぶりに、というか会ってちゃんと話したことなんて一回、二回程度しかない妹といきなり同居なのである。これはもちろん悠子のときもそうだったのだがあっちはあっちで衝撃的な、というよりけなされていたような気がする。
由美子ちゃんは悠子と違っているのか噛み付いたりはせずに静かにファッション雑誌を読んでいたりする。
逆に普通だととっつきづらくてどのようにすればいいのかさっぱりわからない。そういうわけでこのまま放置状態なのだから。
どういったことをしゃべればいいのかさっぱりわからない。うぅん、やっぱり悠子のときと同じように気がついたら仲良くなっていたというのがベストなのだろうか?今日は入学式だったので入学式の話題をふってもいいのだがどうにもあまりいい返事が来るとは思わなかった。
悠子と過ごしていて身についた感である。
そういうわけで夕飯の話をすることにする。これなら別に当たり障りのないものなのだからいいだろう。
「由美子ちゃん、今日の晩御飯何にする?」
そういうと申し訳なさそうに由美子ちゃんは頭を下げた。
「ごめん、お兄ちゃん……私、彼氏がいるからその人の家で食べさせてもらうよ」
「へぇ、彼氏いたんだ」
「うん!とてもいい人なんだよ」
にこにことそうやって笑っているところを見ると本当にいい人なのだろう。これ以上首を突っ込んでもあまりいいことはなさそうだったので詳しく聞くのはやめておいた。
――――――――
入学式の次の日から当然二年生などは授業がある。今回はまだ一回目のために授業という授業はなく、これから先の授業計画やどういったものを学ぶのか、そういったものの説明で授業時間はあっさりと終わりを告げる。
「霧之助、昼一緒に喰うよね?」
「うん」
今年もはれて僕の隣に居座っているというか(誰か転校生が来ない限りこの場所を永遠キープし続けるだろう)とりあえずいる一つ年上の同級生、宮川百合ちゃんが首をかしげる。彼女の隣にはこれまたいつものように竹刀袋が置かれている。
「よかったぁ」
ほっとそんな風に百合ちゃんはため息をつく。それが何故だろうと思いながらたずねて見ることにした。
「どうしたの?」
「いや、二年生になったら『女子なんかと一緒に食えるかよ』というと思ってさぁ」
「……」
その考え、通用して中学生までではなかろうか?いや、下手したら小学生程度だろう。
机を引っ付けることもなく、僕の机の上には百合ちゃんと僕の弁当箱が軒を連ねる。いつもはぐちゃぐちゃのはずである百合ちゃんの弁当箱は今日に限って綺麗なものとなっていた。
「あれ?お弁当いつもより綺麗だね?」
「ああ、ちょうどお母さんがきてるから」
この話題に触れないでくれよみたいな目でこちらを見てきている。それならばやめておこう。どうせ首を突っ込んだところで以前のように適当な嘘であしらわれる可能性だって考えられるのだから。お弁当を作ってもらったのだろう、それはよいお母さんである。
「おいおい、俺も読んでくれよ」
「猛……あっちで食べればいいじゃないか」
猛も弁当を並べたために三人分の弁当箱が机の上に並ぶ。もはやアリの入り込む猶予もない。
「そういやよぉ、今年の一年にすげぇ、かわいい子がいるらしい……そういうわけで後で見に行こうぜ?」
肩を組まれるも大体想像はつく。どうせ、由美子ちゃんのことだろう。
ついに始まった間山霧之助の高校二年生。下と上との板ばさみの学園生活を送ることになるのですが一年生が入ってきたというわけで新キャラ登場予定確立アップですねぇ。悠、そして悠子が実際に登場するかどうかはおいておくとして両者の影が殆ど消えてしまったのは間違いありません。普通に始まりハッピーエンドで終わることができるのか……それはいまだ作者にもわからずじまいです。ともかく、皆様のお暇な時間と交換でお読みください。感想、評価第一部?の奴を待ってます。九月二十一日月、十一時三十一分。ああ、見た目が一発でかわったなぁと思えたら大成功です。