物語
物語は言わば、異世界である。
どこかに存在する異世界の出来事の一部を切り取ったもの、それが物語という形を成している。
我々は本を読む、映画を見る、声を聞くといった様々な方法を用いて異世界に入り込み、その一部を覗き見ることができる。
覗き見ることができるだけなのである。
我々はその世界の展開に手出し口出しは一切出来ない。白雪姫からリンゴを取り上げることも、赤ずきんに狼の存在を知らせることも叶わない。
望む展開にしたいのなら方法はひとつ。
覗き見を止めることのみ。
すなわち物語を途中で終わらせることのみである。
物語は観測者を得て初めてその世界を現す。
つまりは読者ないし視聴者が観測を止めてしまえば、その世界はそこで終わる。
本を閉じる。テレビを消す。目を閉じる。耳を塞ぐ。たったそれだけでいい。
それだけで白雪姫は毒リンゴを受け取らずに済む。赤ずきんだって狼に食べられることはない。
結末を知っていないと出来ないが、物語を無理矢理ハッピーエンドに持っていける。
では、物語を終わらせたくない場合はどうするか。
物語には終着点がある。
「ここまでで終わり」というポイントが明確に定められている。
それでもまだ異世界にしがみついていたい。そう思うこともあるだろう。
しかし、残念ながらそれは出来ないのだ。
納得のいく結末じゃなくても、ハッピーエンドじゃなくても、めでたしめでたしの言葉とエンドロールを合図にその世界から吐き出されてしまう。覗き窓は決してその続きを映すことは無い。
なんとも残酷なシステムである。
──私が今これを書いているこの世界もそうなのだろうか。一体どこの誰に覗き見られているのというのか。私は登場人物として立派な振る舞いが出来ているだろうか。
...ひょっとしたら物語のキャラクター達も、観測者に気づいているのかもしれない。
〈出演〉
Qoo
〈スタッフ〉
Qoo
〈制作〉
自宅
〈監督〉
Qoo