あ、脳筋エルフですね分かります
大分早く更新できて自分が一番驚いてます。
「それでは参ります。」
ルナはそう言うと持ってきていた剣を構えた。
「……フッ!」
短く息を出したと思ったらすごい速さで的に向かって跳んでいった。
イヴの眼には走っているというより、飛んでいると言われたほうが納得できるほどのスピードで動き、的に向かって剣を振るう。
たった一度剣を振るう、それだけで的は切り飛ばされる。
そしてすぐに次の的に向かって跳んでいく。切っては跳び、切っては跳びを繰り返し約20回程的を切り飛ばした所でルナは戻ってきた。
「このくらいでよろしいでしょうか?」
「うむ、やはり流石じゃのう。近接戦闘ともなればわしでも危ういかもしれぬのう。」
「ご冗談を。マーク様には近づいたところで勝てるとは思えません。」
「ふふふ、逃げに徹すれば時間くらいは稼げるかもしれぬのう。それでどうじゃ?イヴよ。参考にはなったかのう?」
「あ、ああ。参考になったかはあれだけど。とりあえず凄いことは分かった。でも、なんで魔法を使わなかったんだ?」
イヴの中ではエルフといえば魔法を使う。そういう先入観があった為、ルナのような近接戦闘を行うのは想定していなかった。
「私は魔法を使わないのではなく、使えないのです。使おうとしても魔力を体外に出すことが難しく、そこから魔法を紡ぐことができないのです。」
「魔法が使えないのか。エルフでもそういう事はあるんだな。」
「この子は生まれながらにして魔法を上手く扱えなくてのう。エルフの里でそれは、迫害の対象になるには充分な理由になるのじゃ。じゃからわしが引き取り、魔力の扱いを教えてみたのじゃが結果は魔法は使えなかった。じゃが、魔力を体内で循環させることで身体能力を向上させることができたのじゃ。そこでわしはルナに剣の使い方を学んで見るように言ってみたのじゃ。そしたらすぐさま才能が顔を出してのう。メキメキと上達していってかなりの腕前まで上り詰めたのじゃ。」
「いえ、そんな私なんてまだまだです。魔王を倒した、かの英雄達の誰一人にも勝てはしません。戦えば数十秒で負けるでしょう。」
「そうかのう?1分はもつのではないかの?お主の魔力操作の腕も上がってきておるし、あやつらは逆に老いてきておるからのう……まぁ、わしもそんな老いている一人じゃがのう。」
「ん?なあ、それってマークも魔王を倒した英雄達の一人って事か?」
「あー…うむ、実はそうなのじゃ。特に言うべきことでもないと思ってたから言わなかったのだがのう。気付かれてしまったか。」
「だから家があんなにデカかったり、受付の人が驚いてたのか。てか、そんな英雄様なら参考にしたら浮いちまうんじゃねえのか?」
「安心しろ。もうすでにお主は充分強すぎるからのう。このままいけば英雄程の強さは余裕で持てるじゃろうな。でも良いではないか。弱いよりは強いほうが良いじゃろ?それにお主のような転生者という存在は意外と多くおるし、そんな転生者は決まって強いスキルやステータスを持っているから、あまり浮くとかはないと思われるぞよ。」
マークはそう言うとルナの方に向き直り、
「それじゃあ次は身体強化をして動いて見てくれるかの?おそらくイヴには見えないかもしれぬが、知らないよりは知っていたほうが良いじゃろう。」
「かしこまりました。それでは……。」
ルナは剣を構え深呼吸をする。するとルナの身体が薄く光ったように見える。
「行きます。」
短く一言そう言うと、勢い良く飛び出し的を切り飛ばし戻ってきた。
イヴの眼にはそう映っていた。目をそらしたり、瞬きをした訳ではない。だが、ちゃんと見れていたかと聞かれたら見れていなかったかもしれないと答えるしかなかった。
飛び出し的を切る。そこまではしっかり見えていた。予想もできていたからだ。だが切った次の瞬間にはもう見えなくなっていた。
え?と思ったのも束の間、既に戻ってきている。だからイヴには一つの的を素早く切り戻って来た。そう思ったのだ。
しかし、現実は違っていた。近くにあった的はもちろん、その周囲にある的が複数個切り飛ばされていたのだ。一太刀で切ったのでは無い。横薙ぎに切られている物があれば縦に切られているものもある。見渡してみればそういった的の残骸が多くある。総数約五十個の的の残骸を見て、イヴは思った。
(あ、この人も異常な強さ持ってるパターンだぁ……。)
「うむ、流石じゃのうルナ。更に魔力操作の腕を上げているのでは無いか?動きのキレも良いし、それでいて静かじゃ。中々できるものでは無いから誇ってよいのじゃぞ?」
「いえ、この程度ではまだまだ満足などできません。それに私程度ではまだ狭い範囲を掃討する程度しかできません。剣一本を使う事しかできなくとも、遠くの的を切る事くらい出来なくては……」
「そこまで追い詰めなくともいいと思うんだがのう。まぁ、良い。程々に頑張るのじゃぞ?」
「はい、分かっております。」
イヴが呆然としてる間にマーク達は話を終えていた。
「どうじゃ、イヴよ。この世界での標準的な戦闘方法、魔法や近接戦闘、身体強化といった技術を見せてみたが。どのような戦い方をしようと思ってるのじゃ?お主のスキルならそれこそ何でもできるじゃろ?」
「あ、ああ。とりあえず近接戦闘もある程度できるようにはなっておきたいから、少しやってみようかな。」
「うむ、じゃあ武器を借りてこよう。どのような武器が良いかの?片手剣に両手剣、ナイフや槍や斧など、色々あるぞ?」
「ああ、借りてこなくていいよ。多分作れるから。」
イヴはそう言い、頭の中で想像する。
(武器を作る。とりあえず剣を作ろうかな。どんな剣を作ろうかな…片手で振れる位の方が多分良いだろうな。じゃあルナさんの持ってるやつを参考に作ればいいかな。)
「武具創造」
手を前に突き出し、そう呟くと、一振りの剣が作り出された。
それはルナの持っている剣と同じ見た目をしている。
「なぬ!?ルナの持つ剣と同じものを!!?……いや、見た目が同じだけで魔術は込められてはいないのか。じゃが武器を作り出す魔法か……何でもできるとは思っていたが、こんな事までできてしまうとは…。」
マークは驚いたようにイヴの作った剣をじっと観察していた。
「えっと、もっとよく見るか?見るならもう一つくらい作るけど。」
「いや、今は良い。まずはお主がやりたいようにやると良い。」
「ああ、分かった。じゃあ色々やってみるよ。」
イヴは的に向かって剣を構える。
(ま、とは言っても剣道やってたとか、そんなことは無いし。完全に自己流だから上手くできるかなんて分からないんだけどな。)
そう思いながらも的に向かって走り出した。
「おりゃ!」
的に剣を振るう。切る事を意識した動きではなく、子どもが棒を振るうかのような、そんな単調な動きだ。
ザンッ
横薙ぎに振るった通りに的が切れる。
「おお!切れた!凄いな、こんな簡単に切れるんだな!」
「中々良い切れ味ではないか。だが動きは駄目駄目じゃな。」
「そんなの仕方ないだろ、戦闘なんてしたこと無いんだから。」
「そうか、戦いの無い世界から来たのじゃな。なら仕方ないの。まあ、戦い方位は学びたければ好きなだけ学ばせてやろう。とりあえず今は他にできる事を見つけることに専念するのじゃ。」
「ああ、分かった。」
(そう言われてもなぁ……他に出来ることっていうかやれる事ってなんだろう?)
イヴは前世で読んだ異世界転生系の本を思い返した。そして様々な本の主人公が持っていたとある能力を思い出した。
(あ、そういえば鑑定って出来るのかな。もし出来たら便利だよな。)
そしてイヴはマークをじっと見て、相手のステータスを見るイメージを思い浮かべようとした、だが"相手のステータスを見るイメージ"というものをうまく持てない。なので、
「なあマーク、この世界には"鑑定"って魔法あるのか?」
「うむ、この世界には"鑑定"という魔法はない。じゃが、スキルに『鑑定』というものはある。しかしそれはかなり希少なものでの。じゃから"鑑定書のページ"という魔道具が存在するのじゃ。一般の冒険者であっても自身のスキルやステータスを確認しておくことが出来るからのう。」
「魔法は無いけど、スキルではある…魔道具で再現できるなら魔法でも出来るんじゃないのか?」
「それがのう?"鑑定"を魔法で再現しようとしても何故か発動しなくての。それで研究者が色々調べてみたら"鑑定"を使うのに特殊な属性、または元素が必要なのではないかと言われているのじゃ。」
「特殊な属性?それって二対四元素四属性のことか?まだ見つかってない物があるのか?」
「うむ、今回言った属性というのは"複合属性"のことでの?複数の属性を合わせることで特殊な属性が発現するのじゃ。それらをまとめて"複合属性"と呼んでいるのじゃ。魔法というのは中々面白くての。未だに魔法、魔力という物を理解しきれていないのじゃよ。」
「へぇー…面白いな。あれ?でもそれなら、魔道具として再現することも出来ないんじゃ?」
「ああ、それはの。『鑑定』のスキルを持つものであれば魔法としての"鑑定"も使うことが出来るのじゃ。じゃから『鑑定』のスキルを持つものの魔力を貰って、それを使って魔道具として使えるようにしたのが"鑑定書のページ"という魔道具なのじゃ。」
「なるほどなぁ。つまり、魔法としては存在するけども、特殊な魔力を使わないと発動しない魔力ってことか。それなら俺でも使えそうだな。」
「ふむ、やはりお主は使えそうなのか。」
「多分な、とりあえずやってみるよ。」
(ようは、あの紙みたいな表示になるようにすればいいんだろ。じゃあ、相手の名前、レベル、種族、あとスキルとステータスが分かれば良いかな?)
イヴはそれらの情報を"鑑定書のページ"で見たときのことを思い出しつつ、
「鑑定」
そう呟いた。その途端、マークだけではなくその隣にいたルナ、そして周囲に存在する的のステータスの情報など、多大なる情報の波に襲われた。それによる影響で脳がパンクし、情報過多により脳が強制的にシャットアウトした。
「イヴ!?どうした!しっかりせい!!イヴ!ーーー」
マークの必死の声を聞きイヴは意識を失った。
あぁ、イヴはこれからどうなってしまうんでしょうか!?
無事に目覚めることはできるんでしょうか?
まぁ、俺の匙加減次第なんですけどね(ボソッ
今回で【第一章 出会い】は終わります。
次回から二章に入る予定です。
頑張って早く出せたらいいなぁと思いつつ、まあ不定期更新だって最初に言ってるし、待ってる人も少ないだろうから別にいっかって思ってます。
もしも、天文学的確率で俺の作品を待ってくれてるまるで神のような方がいらっしゃったら感想や評価をしてくださると、(ああ、読んでる人が居るんだなァ)と思って頑張るのかもしれません(保険
もし良ければ感想下さい!(土下座
それでは第二章でお会いしましょう。
1年以内には流石に出したいぞー!