マホウッテスゲー
今回少し長いかもしれません。
まぁ、説明パートだし長々と投稿間隔空いちゃうしでむしろちょうど良いよね(現実逃避
マークの宣言を聞き、イヴはそれならと意気込んで手を前に突き出した。
(とりあえず色々な属性の魔法を創ってみるか…)
「……まずは水か。」
イヴは的に手を向け、圧縮された水が打ち出されるイメージを持つ。
「水砲」
手の平に生み出された水の塊が渦巻き、的に向かって出される。射出された水流が的に当たると、的が弾け飛んだ。
「次は風…。」
風から連想されたのはカマイタチ、脳内で不可視の刃で的を斬るイメージを持つ。
「風刃」
手の平の前に風が集まり塊となった時、的に向かって射出された。
風は的に当たると、スパッと気持ちいい音を出し的を切断した。
「んで、最後は土か…」
(土ってどんなのが良いんだ?ここまではなんとなくのイメージを持てたけど何も思いつかないぞ。愚直に岩でも打ち出すか?いや、流石にワンパターンが過ぎるな……いや、そもそもマークは土魔法を攻撃とはして無さそうだったし、防御用の魔法って感じでいいんじゃないか?)
イヴはそう考え、土で壁を作るようにイメージする。
「岩壁」
そう呟くとイヴの正面の地面が飛び出し、壁となる。
それと同時に少しの目眩を感じた。
(おっと、なんだ?軽く目眩が…あれか?一気に魔力を使ったからって感じか?少ししか魔法使ってないのにこれってMP少ない系なのか?)
「こんな物かな?なぁマークこんな感じでどう…だ……?」
イヴは振り返り、マークとルナの方に向き直る。そこにはまるでこの世の物とは思えないナニかと遭遇したかのような顔を浮かべる二人の姿があった。
「な、なんと…!これほどまでの威力の魔法を溜めも無くとは……一体どのようにして一つの魔法に多くの魔力を込めたのじゃ…」
「マーク様程では無いですが、ここまでの威力を持つ魔法を使うとは…」
二人は呆然と先程まで的があった場所を見ていた。的は元の状態に復元されており、その周囲にあった筈の的の残骸も無くなっている。
たっぷりと1分程の時間をかけて再起動をしたマークはイヴの状態を見始めた。
「ここまでの威力、一つの魔法に相当の魔力を込めたはずじゃ。体調に異変等は無いかの?立ちくらみや目眩、吐き気、頭痛といった症状はあるか?」
「目眩が少しだけでそれ以外は無いぞ。それにしても、少ししか魔法を使ってないのにこうなるって事は余り魔力は多くないのか?」
「ふむ、目眩だけか…そんなことは無いぞ、さっきも言ったが一つの魔法に多くの魔力を込めていた筈じゃ。それが原因で目眩を感じるのじゃろう。それに、目眩だけなら大分軽度なのじゃよ。一度に多くの魔力を使えば目眩がし、更に多くの魔力を使えば頭痛になる。限界を超えたら気絶するし、生命力が削られてしまう。恐らく総魔力量の半分ほどを一度に使ったのではないか?魔力の扱いに慣れてないからなんとも言えぬがの。」
マークはそう言いつつ、手に魔力を集中させ炎を生み出した。
「魔力の扱いに慣れれば、同じ魔法でも威力を大きくしたり小さくしたり、魔力の消費を抑えたりすることができる。魔力の扱いは使っていけばそのうち慣れるじゃろ。」
「なるほどな…それで、俺の魔法どんな感じだった?威力が強いのは分かったけどそれ以外はどうだ?」
「まず、この世界の魔法は魔法式と言うものを詠唱することで発動する。その詠唱をせずに魔法の名前、魔法名のみを唱えて発動することを『詠唱破棄』という。魔法陣を用いて魔法名も唱えずに魔法を発動することを『無詠唱』というのじゃ。『詠唱破棄』では基本的には魔法の威力が落ちるのじゃが、『詠唱破棄』のスキルを持っている者ならば威力を落とさずに発動できる。『無詠唱』は魔法陣の質によって威力の強弱は変わる、と言う事を前提として説明するぞ?」
「お主は魔法名のみで魔法を発動している、その為威力は弱くなっていると思っていたのじゃが、確かお主のスキルは『魔法式創造』じゃったな?つまり、お主の作った魔法は魔法名そのものが魔法式である可能性が高い。威力に関しては言うまでもないのじゃが高い。恐らく消費魔力も高いのじゃろうが、それでも充分脅威的じゃ。そして、これはスキルの方の話になるのじゃが、汎用性の高さは異常と言っていいほど高い。便利と言うか、強力なものになればなるほど消費魔力も多くなるとは思うが、お主はまだ伸びしろがある。それも考慮に入れるとお主の魔法にはそれこそ無限の可能性があるじゃろうな。」
「俺の想像力と魔力量の伸び次第でどこまでも強くなれるってこと?だとしたらどうやって魔力量を増やしていけばいいんだ?」
「魔力を増やすのは簡単じゃ、使いきれば良い。寝る前に全ての魔力を使い切ってから寝れば自然と魔力量は増えていくぞ。ただしこれは危険な方法でもある。下手をすれば魔力欠乏症になるじゃろう。じゃが、これが最も確実に多くの魔力を得る方法じゃ。使い切らずとも魔力を減らしてからなら少しずつ増えていくぞ。」
「じゃあある程度減らすくらいで充分なんじゃないか?それでも増えていくんだろ?」
「そうじゃが、一応わしが教えてきた者達は使い切る寸前まで減らす者たちとある程度減らす者たちで別れておったが、使い切る寸前まで減らしていたほうが、最終的には魔力が多くなっていたぞ?おそらくじゃが、魔力の伸びには年齢が関係あるのではないかと思っているのじゃ。じゃから魔力が少しでも多く欲しいのであればなるべく使い切る寸前まで減らしておくほうが吉って事じゃな。」
そう言うとマークは杖を構えた。
「それじゃあ次はわしがお主を驚かせる番じゃな。見ておれ、今から儀式魔法を使ってやろう。」
マークは眼を閉じ、何も喋らなくなった。
すると、マークの周囲からゆらゆらと湯気のようなものが浮かび上がっていった。
「マーク様は今集中して魔力を練っていらっしゃるわ。」
「うおっ!?喋った!?」
「…?私だって普通に喋りますが?何かおかしいですか?」
「い、いや…何というか、マークとしか話さないのかなとか思ってて…いやまぁそんなわけ無いんだろうけど、えっと、あはは…」
(ぐっ、駄目だ!思えば昔から年上の女性と話すことなんて無かったから話しづらい!こんな所で前世のコミュ障を発揮するなんて!何とか会話をしなくては!!!)
「あーえっと、ルナさんだっけ?あの、ルナさんはエルフ、なんだよな?」
「ええ、私はエルフよ。人によっては"森人族"なんて呼び方をする人も居るわ。」
「なるほど、そうなんですね」
……………
(え!?会話終わったんだが!?!?どうすればいいんだよこの気まずい空気!!)
そんなイヴの内心の叫びを聞いたのか、唐突にマークが目を開け
「雷轟旋風刃」
その途端、マークの足元に魔法陣が浮かんだ。
マークの周囲にあった湯気のようなものが渦を巻き、巨大な竜巻となって的に向かっていく。
その時だった。
ズガァァァン!!!!!
突如として雷が落ち、的やその周囲の地面を抉りとった。
竜巻に飲み込まれた的はバラバラに切り刻まれ落雷の際にスパークが発生し、刻まれた的を更に破壊していく。
たった一人の人間が起こしたものとは思えないような、天変地異がそこには巻き起こっていた。
たっぷりと10分程破壊を撒き散らしたあと、竜巻は静かに消えていった。そして、的や地面も破壊が去った事に気づいたのかゆっくりと修復されていく。
「な、何だ今の……こんな事が一人の人間に出来んのかよ…。」
「ふぅ、ま、こんなもんじゃな。今のが儀式魔法。通常であれば魔法陣を描き、魔法使いが10人程力を合わせ魔力を注いで発動させるものじゃが。わしにかかれば一人で発動させることも容易いのじゃ。」
「す、すげぇよマーク!こんな事できるなら俺の魔法のんて驚くに値しなかったんじゃないのか?」
「いやいや、お主の魔法の凄いところは消費魔力に対しての威力にあるのじゃよ。今使った儀式魔法は威力に見合うだけの魔力量が必要になるが、おそらくじゃがお主がスキルを使って似たような魔法を発動した場合の消費魔力は3分の1から半分程になると思うのじゃよ。とはいえ、今のお主ではまだ無理だと思うがの。」
「そうなのか。こんな威力の魔法使えるなんて俺には無理かもしれないと思ったけど何とかなるんだな。」
「お主のスキルはそれぐらい異常なのじゃよ。それが無ければさすがのお主でも一人では無理だったと思うぞ。」
「そっか。そういえば、さっきの魔法だと雷もあったけど属性に雷ってあったのか?」
「ふむ、その辺りも教えておくかの。まず魔法は"二対四元素四属性"という分類分けがされておる。四元素はわかると思うが'火水風土'の4つじゃ。そして、四属性というのは元素から派生されたもの。火であれば'爆発'、水であれば'氷結'、風であれば'雷鳴'、土であれば'自然'といった具合になっておるのじゃ。そして二対、これは'光'と'闇'じゃ。これら'光''闇''火''水''風''土''爆発''氷結''雷鳴''自然'を"二対四元素四属性"というのじゃ。」
「うーん、その四属性ってやつは誰でも使えるのか?」
「いや、誰でもではない。そもそも魔法を使うのには適正というのがあって、人それぞれ得意な元素が異なるのじゃ。火が得意なものがおれば、水が得意なものもおる。そして元素や属性には相性があるのじゃ。火は土に強く、水が火に強い。雷が水に強く、土が雷に強い。そうしたバランスができてるのじゃ。元素から派生された属性もこれに同じじゃ。」
「じゃあ光と闇はお互いがお互いに強いって感じか?」
「そうじゃ、光は闇に強く、また闇は光に強い。じゃが、そもそも光と闇の二対を扱えるものは少ないのじゃ。わしも少ししか使えぬし、どれも攻撃魔法ではないからのう。二対を使えるものは魔道士としてはかなり希少な存在という訳じゃな。」
「なるほどな。因みに全属性扱える奴っているのか?」
「わし以外にはおらぬ。いや、正しくはもうおらぬじゃな。」
「もう?昔はいたってことか?」
「うむ。昔というか、ほんの少し前のことじゃ。この世界には魔王という存在がおるのじゃがな?先代の魔王が全属性の使い手じゃった。」
「やっぱり魔王って居るのか!流石異世界…。」
「まぁ、もうおらぬがの。世界の征服とかいう大それた目標を掲げておったから勇者に討伐されてしまったのじゃよ。」
「そうなのか。やっぱり魔族って忌み嫌われてるのか?」
「いや、そんな事はないぞ?先代の魔王がやんちゃだっただけで、魔王とは魔族の国の王というだけじゃからの。その魔族というのも、魔物の力を色濃く受け継いだ者という意味だけで、偏見や差別意識はそこまで大きくは無いのじゃ。この世界では人の形に似ている、四肢があり二足歩行、他種族と意思の疎通が取れるものを亜人と呼び、他種族と意思の疎通が取れるが人とは身体の特徴が異なるものを魔族と呼んでおるのじゃ。更に、他種族と意思の疎通を取れぬもので魔力を持つものを魔物や魔獣と呼び、魔力を持たないものを動物と呼ぶのじゃ。」
「へぇー……結構細かく決まってるんだな。もっと大雑把なのかと思ってたよ。」
「これは昔この世界には召喚された異世界の者が決めたものでの。その時の国王に実力で登り詰めた者の言葉なだけあって多くの者に周知されたのじゃ。」
マークは一通りの事を話したのか、ずっと喋らなかったもう一人の方に視線を向けた。
「それではルナよ。お主の戦い方を見せてあげて欲しいのじゃが、良いかの?」
「マーク様のご指示でしたら、もちろんやらせていただきます。」