これチート過ぎね?
大変お待たせしました!
これから復帰していこうと思います!
今回は少し短め(?)ですのでおやつ代わりにでも読んでください…
イヴが的に向かって手を向け、魔法のイメージを頭の中に思い浮かべる。イメージはさっき見た火の魔法。手から火の玉を飛ばし、着弾後に爆発するようなイメージを持つ。すると、全身を回っている何かがゆっくりと手に集まる感覚を覚える。
(不思議な感覚だ…。これが魔力ってやつか…?初めてのはずなのにどうすればいいか簡単に分かる。これも神さまのおかげなのか…?)
掌に魔力が集まり飛ばすイメージを強めたとき、自然と口が動いた。
「爆球」
掌の火の玉がバスケットボール位の大きさで飛ばされる。強い熱量を持って的に向かって飛んでいった火の玉は、的に当たった瞬間爆発した。強い爆風がおさまるとさっきまで的があった場所に的はなく、小さなクレーターが出現していた。それも数秒と経たずに無くなり、的も元通りの位置に存在していた。
「な…的を完全に破壊するじゃと…!なんという破壊力じゃ…!」
「なるほどなぁ…結構簡単に使えるんだなこのスキルは。他にはどんなのが使えるのか…。試してみるか…。」
イヴはもう一度的に向かって手を向ける。それをマークが慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!お主の力ではここの魔力障壁だけでは防ぎ切れぬ!魔導訓練場で続きをするのじゃ!」
イヴはマークの焦った声を聞き、その提案に同意する。
「分かった。ちなみに、そこなら大規模の魔法を使えたりするのか?」
「使えるが時間がかかるぞ?発動するまで20分もかかるからのう。それに、そんなもの見んでもお主は充分魔法を使えるのでは無いか?」
「使えるけど、この世界のレベルみたいなものを見ておきたいんだ。最初から異常すぎる力を使うのはあれだろ?だからこの世界の標準レベルの力を見て、それを基準にしたいんだ。」
「なるほどのう…。そうだ、1人連れていきたい者がおるんじゃが大丈夫かの?」
「マークが信頼できる人ならなんの問題も無いぞ。」
「なら、今呼んでくるから少し待っておれ。」
マークが部屋を出てすぐにイヴは、もう一度魔力を集中させる。
(攻撃の魔法じゃなければ使ってもいいよな…。)
イヴはまた魔法のイメージをする。今度のイメージは空を飛ぶための翼。見た目を吸血鬼っぽくしていたので黒い翼をイメージしていた。
「飛翼」
背中の肩甲骨の辺りに魔力が集中し、コウモリの羽根のようなものが生える。
(さすがに、吸血鬼すぎるだろ…まぁいいか…。)
羽根に魔力を込めると少しずつ体が浮き上がる。前に進むイメージをすると前に移動した。イヴは思ったよりも楽に移動できたことに安心する。
「良かった…。案外なんとかなるもんだな。魔法ってのは全部イメージの力が必要なのか。てことは、知識を多く身に着けないとな。」
そんなことを考えつつ軽く飛び回り、飛び方を覚え、地面に降りたタイミングでマークが部屋に戻ってきた。
「待たせたのう。連れていきたいのはこの子じゃ。」
「ルナです。マーク様の従者兼パーティーメンバーです。よろしくお願いします。」
淡々と自己紹介をしたのは、色素の薄い金髪で整った顔、尖った耳が特徴的な…そう、エルフである。
「エ…エルフだ…。初めて本物を見た…。」
「…?貴女もエルフでしょう?初めて見たというのは一体どういう事なのでしょうか?」
「ルナ、彼女は転生者なのじゃ。前世の世界にはエルフがいなかったのじゃろう。そうじゃろ?イヴよ。」
「あ、えっと、そ、そうなんだ。前世の世界には人間以外の種族はいなかったんだ。この姿は神さまと一緒に創ったみたいなもので、だからエルフと話したことも、見たこともない。」
「なるほど、転生者でしたか。それなら納得です。それでマーク様、ご用というのは何でしょうか?」
「うむ、これからギルドの魔導訓練場に行こうと思っての。そこでルナの戦う所をイヴに見せようと思ったのじゃ。どうじゃルナ、来てくれるかのう?」
「もちろん、マーク様の頼みとあらば。」
ギルドに向かうべく、マークの家から出たイヴは一つの疑問を持った。
「なぁ、マーク。あんたの家はどうしてこんなにでかいんだ…?」
そう、イヴが持った疑問はマークの家…いや、屋敷の大きさに対してだった。その大きさは、何家族が同時に暮らせるんだという程の大きさで、マークとルナの二人だけでは大き過ぎる物だった。
「うむ?まぁ、色々あるのじゃよ。ワシはこんなに大きい屋敷など必要無いのじゃがな…。それより、どうじゃ?中々大きな街じゃろう?ここはクルムンド、大陸1の大きさを誇る王都じゃ。交易も盛んで様々な種族がおるじゃろ?」
マークの話題転換に違和感を感じつつも、イヴは周りを見回す。確かにマークの言うとおり、周りには人間はもちろん、ルナのようなエルフや頭に獣耳の生えてる人、鳥のような羽根のある人等、様々な種族がいた。
「確かに色々な種族の人たちがいるんだな。種族差別とか無いのか?まぁ、ぱっと見はみんな仲が良さそうだが…。」
「……差別意識は持っとる者は持っとる。じゃが、ここにはほとんどおらんじゃろう。ここの国王が種族差別を根絶するよう尽力を尽くしておるからのう。それでも人間というのは難儀なものでのう…ここ以外の場所では当たり前のように奴隷として扱ってる者たちがおる。じゃから、種族によっては人間を毛嫌いしてるものもおるから気をつけるのじゃぞ?」
そんな世間話を挟みつつ歩いていくとそこそこ大きな建物の前に着いた。
「イヴよ、ここがギルドじゃ。この中に魔導訓練所があるんじゃ。」
中に入ってみると、そこには多くの人がいた。
「おお…たくさんの人がいるんだな。とはいえ、こんなに大きい建物にする必要あるのか?」
「うむ、ギルドはの基本的に朝依頼書の更新があるのでな、今は皆依頼に行っているのだろう。朝や夜はもっと多くの者で賑わっておるぞ。今いる奴らも夜に依頼をやって朝帰ってきたのじゃろう。ギルドは酒場も兼任されておるから、依頼の報告をしたら酒場で打ち上げでもしておるのだろう。ギルドは多くのことをやっておるからのう。必ずと言ってもいいほど世話になるじゃろうから、今のうちから印象が良くなるようにしておいたほうが良いぞ。」
マークはそう言うと、堂々とした歩き方で受付と思われる所に向かった。
「マ、マーク様!本日はどのようなご用件で!?」
「うむ、訓練所を貸してほしくてのう、今借りられるかの?」
「魔導訓練所の方でよろしいですか?それでしたら空いてますので、どうぞご利用ください。こちら鍵になります。」
「うむ、感謝するぞ。それでは行くぞ、ルナ、イヴ。」
受付から鍵を受け取ったマークは、後ろの二人に声を掛け、奥に向かって歩いていく。ルナはその少し後を、イヴはルナの後ろを付いていくように歩いていった。
(マーク様、ルナさんと誰を連れてきたのかしら…エルフの子ってことはルナさんの親戚…?それにしても周りを見回して、可愛かったわねぇ……ッハ!いけないいけない、仕事しなくちゃ…!)
受付の奥の廊下を進んでいき、大きな扉の前で止まった。
「ここが魔導訓練所じゃ、ここはギルドの技術の粋を集めた訓練所でのう。結界魔法や空間魔法なんかがあってのう。大規模の魔法を使っても問題ないのじゃ。ここならお主のスキルを使って暴れても問題ないじゃろう。」
マークはそう言うと、受付からもらった鍵を扉に差し込んだ。すると、扉が光ったかと思うと、自動で開き始めた。中に入るとそこにはマークの家とほとんど同じような景色、だが、その広さには別格の違いがあり、なんと、空まで見えるという謎の空間が広がっていた。
「な、なんで空が…風も吹いてるし…。外に出たのか?」
「空間魔法の力でな、この魔導訓練所自体が別次元にあるという感じなのじゃ。じゃから、大暴れして地形を破壊しても一度部屋から出ればすべて元通りになるという便利設計での。大規模魔法陣なんかを使いたい時はここを使うのじゃ。まぁ、そんなことはほとんどないがのう。」
マークはそう言うと、イヴの方を向き、腕を広げ言い放った。
「ここでならいくら大暴れしても良い。好きなだけ暴れよ。」