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第一話

魔王とは、魔導を極めそのトップオブ頂点に君する者のことを指す。


魔王は幾人か存在し、彼ーーグランもその内の一人だ。


最初は珍しいものを見る目付きだった者達は彼の恵まれた魔導を目にするや、嫉妬のそれへと変わり、

「小さい頃から魔導を極めていて黒髪なんて悪魔の生まれ変わりに違いない!」

という妄言から彼を『災子』と呼んだ。


故郷を追いやられた彼はその恵まれた魔導で旅路を稼ぎ、時には危険な魔物に立ち向かい、様々な国を冒険をした。


とある国で冒険者として名を挙げた彼は住民達から敬意を込めて『魔導王』と呼ばれ慕われていた。


そう、慕われていた()()


類稀ない魔導の数々を有する彼に敬意を払っていた国王はやがて、彼を危険人物として暗暗殺者を差し向けた。

だが彼を暗殺することは叶わず、国王の元には満身創痍の一人の暗殺者が戻って来た。


その暗殺者は口を開くや


『アイツは正真正銘の化け物、魔王だ…』


と言い残し、間も無く息を止めた。


その言葉を聞いた国王は全国各地に冒険者グランは『魔導王』では無く『魔王』であると言い放った。

その行動は一番犯してはならない愚行であった。


彼は信じていた者達に再び裏切られたという事実に、静かに涙を流した。


『僕が…僕が何をしたって言うんだ!!』


彼は心の叫びを口にし、向かって来た兵士を自らの魔導で蹴散らした。

その光景は最早一方的な虐殺を超え、蹂躙と化していた。


彼が魔導を放つのを止めた時、そこには彼一人の影しか無く、国の跡も残っていなかった。


彼は両膝を地面に着き、泣き叫んだ。


『裏切られるのが嫌なら、自分に逆らわない部下を手にすれば良い』


そんな囁きが彼の耳に木霊した。

ヨロヨロと力無く立ち上がった彼は決意した。

自分に逆らわない忠実な部下を集めて国を形成しようと。


『魔王、か……悪くない称号じゃないか』


その後、彼は自らの手足と成り得る四人のそれぞれ異なる種族の者達を従えて、彼を裏切った国の跡地に魔王城を築いた。


そして今


「魔王様、炎の勇者なる者が攻めて来て居りますが如何なさいましょう?」


魔王様と呼ばれた青年は玉座に肘を着いたままの姿勢で従者に問うた。


「焔では無く炎だと? この『冷酷の魔王』である我を些か侮りすぎじゃないか?」

「では私共が掃除を致しましょうか?」


従者が訊ねると彼は玉座から立ち上がり言う。


「どれ、我が直々に出迎えてやる。案内をしろ」

「ハッ、仰せのままに…」


彼は残虐な笑みを浮かべ歩き出した。


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