お弁当!
「お弁当だよ!」
「ぐばぁ!」
ラリアットを食らって、僕は椅子ごと後ろに倒れた。
なんでこんなことになったのだろう。僕は過去を振り返って自分の落ちを探すが、残念ながらラリアットを食らう原因は、どこにも見つからなかった。
「い、いきなり何するんだ……。それと、やっぱりお前、テンションおかしい」
「だって、お弁当だよ」
至極当然そうに言うが、残念ながら僕には理解できない。
「はい、これっ!」
そして、彼女が笑顔とともに取り出したのは、くまさん柄のかわいらしい包みに包まれた重箱。
ますますもって理解できない。
お弁当を作ってきてくれたつもりなのか!? でも二人分には4段も必要ないと思うぞ!
「それじゃあ、食べよう」
さらに、彼女は四つの重箱の全てを僕のほうに寄せてきた。
僕は、覚悟を決めた。
一応、僕たちは付き合っているんだ。これくらいのこと、彼女のためにしてやれなくてどうする。
「いざ、尋常に勝負」
「あれ? なんかおかしなテンションになってる?」
彼女の訝しげな視線をよそに、僕は重箱を開く。
そして、その中から現れた敵は――
――1面のご飯だった。
まあ、最初だからな。それにしても多いけど。
後は色とりどりのおかずなんだろう。
しかし、世の中そう甘くはなかった。
2箱目、3箱目と、開けても米しか現れない。なんの拷問だ? これ。
残す重箱は後一個。
僕は、痺れるような緊張の中、最後の蓋を開けた。
「…………なんだこれ」
レトルトカレーだ。そんなことはわかっている。なんでレトルトカレー?
「だって、昨日カレーが好きだって」
限度があると思います。
「カレーならいくらでも食べれるって、伝説が」
誰だよ。そんなこと言ったカレーバカは!?
「ふう」
まあ、いいか。
どんなものだって、彼女が僕のために作ってくれたんだ。文句を言う筋合いなんてない。
それに、まあ……多少は嬉しいしな。
僕はレトルトカレーの封をきって、ご飯の上にぶっかける。
そして、渡されたスプーンを手にとり、
「いただきます」と、大きな声で言った。
レトルトカレーは、冷たかった。




