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12.ガーデウス対オーダ・ジャーガ

 突然の出現に、オーダ・ジャーガはうろたえたように後ずさる。だがそれよりも早く、ガーデウスは間にあった家屋を飛び越えてジャーガに迫り、跳躍から落下しつつの鉄拳をジャーガの顔面に打ち下ろした。

 衝撃にオーダ・ジャーガの首がちぎれ飛ぶかと思う程に揺れる。倒れるのをなんとか防ぎ、向き合おうとするジャーガの胴体に、ガーデウスのヤクザキックが叩き込まれた。激しい音を立ててジャーガが飛び、背後にあった二階建てのアパートに倒れこんだ。轟音が連鎖して鳴り響く。一度ジャーガが破壊して破片を飛ばしたアパートの残骸は、落下したジャーガの体によって完全に破壊された。


「やった!」

「こいつはすごいぜ!」

 轟音に負けない勢いで、リテルと啓一が共に歓声を上げる。


 ガーデウスは両腕を左右に大きく広げて構えた。まるで仁王像を想起させる力のこもった立ち姿だ。目の前の敵を警戒するガーデウスに対し、ジャーガは巨体に似合わぬ俊敏さと柔軟さで後転し、四つんばいの姿勢をとり、奇声を上げた。巨大なグラインダーを回すような不快な轟音がジャーガの頭部から放たれ、まるで四足獣が敵を威嚇するようだ。


 ガーデウスが様子を見て動きを止めていたところに、ジャーガが先手を取った。肩からの触手がうねり、高速で振動する。長い触手が点に向かって伸び、空を切り裂いてガーデウスへと向かって一気に叩きつけた。両腕を頭上で交差させ、触手を受け止める。衝撃でガーデウスの体が沈み、足元のアスファルトが砕けた。勢い余り、鞭が触れた家屋も豆腐のようにたやすく粉砕する。オーダ・ジャーガの肩から生えた触手は耳障りな音を立てた。高速で振るわれ、一撃ごとにあらゆるものが破壊される。


 巨大な音が耳をつんざき、彰子が叫んだ。啓一も耳を押さえながら苦悶の声を上げる。

「やばいだろ、これ!」

「安心しろ、大した事ではない」

 ガーディの落ち着いた声に合わせる形で、鞭の風圧が真悟達の下まで届いた。風が砂埃を巻き上げながら全身に浴びせてくる。視界を塞がれ、真悟は顔をしかめた。目に入った埃をこすって落とす間も、重低音の一撃が間断なく打ち込まれる。


 目を開いたら残骸しか残っていないのではないかと思いながら目を開くと、そこには目を閉じる前と同じ、ガーデウスの姿があった。周囲のジャーガの鞭による破壊の傷痕は見て分かる程に増えているというのに、ガーデウスの鋼の装甲には傷一つついていない。


「言っただろう、大した事ではないと」


 驚く啓一の顔に、ガーディが自慢げに答えた。そのままガーデウスに鋭い視線を向けると、ガーデウスは右手を腹についている六角形の宝玉に当てる。それに対応するように宝玉は光を放つ。光を握り、抜き取るとそれは形をとり、巨大な塊が姿を現した。鬼の金棒を思わせる、灰色をした金属の塊に複雑に曲がりくねった溝が掘られ、そこには鮮血が流れているかのように紅に輝いている。ガーデウスの手から流れた血が溝を通り、命を得て脈打っているかのようだった。


 ジャーガが一瞬うろたえつつも放った鞭を、ガーデウスの金棒の一振りが迎え撃った。鞭と触れた瞬間金棒は一際赤く輝き、爆発と轟音と共に鞭を両断する。引きちぎられた鞭の先端は勢いはそのまま制御を失って道路に跳ねて転がった。

 想定しなかった破壊にジャーガうろたえた時、ガーデウスがジャーガに向けて開いた左腕を伸ばした。赤黒い装甲に覆われた腕の肘から先がエメラルドの輝きを放ち、光に包まれたと思った瞬間、閃光が放たれた。腕の形を保った光の拳が高速で飛び、ジャーガの左肩の根元から触手を貫く。拳は触手を引き裂き、勢いを殺さずジャーガの周囲を飛び回り、幾度もジャーガの体を貫き、砕いていく。


 感極まったように啓一が叫んだ。

「なんだよあれ!ロケットパンチかよ!」

「違う、ファントム・ハンドだ」


 周囲が真悟の方を見た。だが思わず口をついて出た言葉に、真悟自身が困惑していた。何故ガーデウスの放ったものを知っているのか、自分でも分からなかったが、原理もわかる。ガーデウスの体内にあるカークス・ポック式機関が稼動し、カーニエン粒子を生成して腕の周囲に集束、結晶化させる。そして結晶となったカーニエン粒子の任意の箇所の粒子を反応させて、爆発的なエネルギーを発生させて飛ばす。粒子の塊は砲弾となってこちらの自由自在に飛び回り、相手を破壊するのだ。

 ガーデウスの体に秘められたメカニズムに関して、脳内に様々な情報が線香花火のように明滅しているのを、真悟は感じていた。


 そんな真悟を無視して、ガーデウスのファントムハンドは幾重にもオーダ・ジャーガを責め苛む。腕、肩、わき腹、太腿、様々な箇所を破壊し、最後に巨大な頭を掴んだ。

 豪腕に掴まれたジャーガが取り外そうと暴れるが、拳の放つ推進エネルギーに逆らえずに、ガーデウスに向かって引きずられていく。

 ガーデウスは両手で金棒を掴み大上段に構え、向こうから射程を縮めてきたジャーガの脳天に向けて振り下ろした。


 頭から股間へ、閃光と爆発と共にジャーガの体が一刀両断に破壊された。完全にスクラップとなり、残った体の部品がばらばらとあられのように落ちていく。

 圧倒的だった。啓一は感動に、彰子は恐怖に、真悟は驚愕に、皆言葉を失っていた。ガーデウスがその身に秘めた巨大な力の一端を目にし、誰もが動きを止めていた。。

 目の前で起きた戦いは、地球人が今まで物語でしか見た事のないものだ。人は理解できないものに圧倒される。

 荒野となった街に立った鋼鉄の巨人は、日を浴びて赤黒い体を一層輝かせていた。


次回:2日18時予定

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