工藤桜子 同調現象
「ねー誠ちゃんいる~?」
ガラッと桜子が保健室のドアを開ける。
北斗が部活でケガをしていた生徒の治療をしていた。
親指と中指でくいとメガネを上げ、
「ここは君の部屋ではないんだがね?」
「あーいーじゃん誠ちゃん今ヒマなんでしょう?ちょっと聞いてよー」
「暇なスクールカウンセラーなんていません」
ファイルを取って去ろうとする誠史郎。
「クラスの女子の事なんだってばー」
誠史郎は足を止めやれやれと向きを変える。
「君がハブられでもしましたか?」
「失礼な事言わないでよ!これでも協調性と社交性は持ち合わせてるつもりよ」
「てゆーか他のグループの女の子たちなんだけど、
さっきまで仲良くしゃべってたのにちょっとトイレとかで抜けると
悪口言われてたり、なんか1人の子がコレかわいいよね~とか話すと
全員が口をそろえてかわいいって言うんだよね~。
知らなくても会話合わせるんだよ?それって疲れない?やってらんない」
「それは同調現象ですよ。意見のあるほうに稽手することですね」
「けいしゅってなに?」
「中2になったんだから勉学にも励みなさい。頭を地につけるほど下げると言う事ですよ。
だからそのグループにはリーダー格の子がいてあとはとりまきのこがいるという事でしょう。
ただ怖いのは何かのきっかけでリーダーが変わってしまうと言う事ですね。
で、工藤さんもそのグループに?」
「まさかー。入ってないよー。まあ違う仲いい子がそのグループに・・・」
「うーん。その子とはちょっと話をしてみたいな。
君も協調性と社交性の使い方を間違えないように。
それでないと以前、君の言っていたクラスカーストの餌食になるよ。
いまクラスにはいないのかい。シェードラは?」
「シェードラ?」
誠史郎は頭をかかえる。
「一番下でパシられてる子だよ」
「えっあっうーん。実はあたしも必死でさ、他の子まで周りが見えてないんだ。
やっぱ、ハブられるの怖いしさ~」
てへへと桜子が笑う。
「シェードラにならないように必死だったのは自分自身じゃないか」
呆れた顔をして誠史郎が言う。
「低層階には行きませんよ~」
誠史郎に舌を出して桜子は去っていった。
クラスカーストはあってはならない。
「前回のもかなり時間がかかりましたからね」
「もう新学期が始まっているのに気合いをいれないとな」
誠史郎はちいさくつぶやく。
横で静かに北斗がうなずく。