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異世界の大地を戦車は駆ける ~砲声ハ誰ガ為二~  作者: 蜜柑の三等兵
皇国鎮圧作戦における最終局面。
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11管区第8師団戦車部隊隊長兼 東方辺境軍作戦司令室付

 剣戟を交えながら歩兵隊が皇宮内へ突入していく様子をウォーカーは戦車のハッチから眺めている。


 ここまで来れば後は歩兵隊の仕事だ。

 今回の作戦の目的が皇帝と皇女の確保である以上、むやみに建物に砲撃を加えて確保対象に被害が及んでしまっては意味がないからだ。


 それにしても――これは酷い。ウォーカーは内心で軽くため息をついた。

 隣の車両からは副隊長であるラインが様子をうかがっている。

 やれやれと両手をラインに向けてひらひらとさせたウォーカーはそのまま苦笑いでかぶりを振った


 目の前に行動不能になったT-34-85戦車が12兩もあったからである。

 中には砲塔がかなり遠くに吹き飛んでいる車両や今だ黒煙が燻ぶっている車両もあった。


 3小隊分の車両が一度に撃破されたとなっては幾ら楽天家のウォーカーと言えども、決していい感情を持つことは難しかった。


 まあ、こうなるかもとは思っていたけども。と、ウォーカーは思う。

 総督府で作戦会議が行われたとき、総督閣下は『何も心配することは無い、安心して進軍されよ』と胸を張って言っていた。


 その後ろに続くお歴々も同様な仕草をしていたが、皇国の反乱を何一つ予見できなかった上で、その自信は何処から出てくるのかと小一時間程、問い詰めたいところだった。


 そんな何の情報も無い様な状態では作戦も慎重にならざるを得ない。

 その癖、3日で終わらせろなどと注文を付けてくる。


 そんなアホ見たいな状況下で行われた、

 作戦と呼べるかどうかもわからないこの軍事行動。

 そのツケは戦車12両被撃破という形になった。


 まあ、人的被害が無かったのが幸いだ。そうウォーカーは結論付ける。


 戦車が撃破されているのに搭乗員はどうなっているのか。

 その質問は常々受けている。


 別に魔法で守られているわけでもないし、特殊なカーボンで塗装されているわけでもない。

 単純にいないのである。


 今回撃破された戦車を覗いてもモザイクがかかるようなことには全くなっていない。

 正に人一人っ子、乗っていないのだ。


 では、戦車は誰がどのように操縦しているのか?

 それこそ、ウォーカー・フロマージュが弱冠17歳にして、


 〈11管区第8師団戦車部隊隊長兼東方辺境軍作戦司令室付〉


 という、一度は噛まずにいられない長ったらしい所属名を持つ所以であった。


 そういや、今日の天気は何だっけな。ヘッドギアの首元を緩ませながら、ふと思う。

 ウォーカーが見上げた空はまだ昼前だというのに薄暗く雲が垂れ込めていた。



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