ウォーカーのお願い
前話の最後に話を追加しています。
そちらからお読みくださいませ。
「ああ、俺にできる範囲だったらいいぞ?」
軽い調子で言ったカールス。だが内心興奮が抑えきれていなかった。
やっと解決への糸口がつかめる!
昂る心を抑えようと努めて冷静にカールスはウォーカーの言葉を待った。
「僕たちの中にさ、女の子がいるじゃん。クロエって娘がさ」
「ああ、クロエちゃんだろ」
それはもう、何度もお話ししたからよく知って居る。
女性職員も供述に関わってはいたが基本的な対応は俺に任されていたからな。
フォング・クロエ。人間種の7歳の少女。
年相応の身長で深い藍色の紙を持つこの少女は事件のショックからか、ほとんど口を利かなかった。
利発そうな子ではあったが初めて見たときは完全に青ざめていて他の女性職員が付きっきりで対応をしていたほどだ。
「そう。でね、明日から他の町の孤児院に入ることになったんだ」
「ああ、そうか。それは良かった」
初めて聞いてような声色をするカールスだが、日中彼らがどこかに行っているのは監視していた職員から聞いていた。孤児院に行っていると聞いた時はたまげたが。
「それでさ。まだ三年後の話になるんだけど、クロエが10歳に成ったら孤児院を出て行かないといけなくなるでしょ?」
「まあ、そうだな」
この国の孤児院は基本的に個人や寄付者たちによって運営されている。
国が面倒を見ている所はほとんどないのが実情だ。
それにここ数年続いている周辺国との争いで戦災孤児となる子も増えてきていると聞く。
物価は高騰が続いているし、孤児院の運営は何処も厳しいだろう。
そんな状況で、人間種の孤児が入所できるところがよく見つかったものだとカールスは内心感心していた。
「その時にさ、もしよかったら推薦状を。カールスお兄さんの実家に出してもらってもいい?」
カールスはウォーカーが何を言わんとしているのか諒解した。
この国の孤児院では基本的に10歳になると出て行かなくてはならない。
そして大抵その時に就職するが孤児院出身者の場合、基本的に就職先は家事手伝い。
いわゆるメイドとして雇われることがほとんどだ。
但し、それはあくまでも普通の孤児の話。
つまりエルフ種の孤児の話で、獣人種ならともかく劣等種として蔑まれている人間種の孤児をメイドとしてわざわざ雇い入れようとするところなってまず見当たらないだろう。
そして、そうして働き口が見つからなかった子供が決まっていく場所は娼館かスラムだ。
そこで、今話した通り俺の家が人間種に優しい家だと知って先にお願いしたわけか。
いくらクロエちゃんがいい子だとしても人間種である時点で推薦状を送る意味すら無くなってしまうからな。家事手伝いなら、住み込みで食事もついているし、他の所より安心で安全と言うわけだ。
つまり、この子は同じ種族と言うだけで家族でもない年端もいかぬ子の三年後を案じ、お願いをしているわけか……それも、雇ってくれでは無くて、面接を受けさせてくれと。
――こいつ、本当に10歳か?
まじまじと目の前の少年を見つめるも、その両眼からはお願いしますと言わんばかりの色しか見えてこなかった。
「ああ、いいぞ。雇い入れると決まったわけでは無いがな」
幸い、実家は広いし、弟や妹がまだまだゴロゴロいる。
経済状況もそんなに悪いわけでは無いから、女の子の家事手伝い一人はそこまでの負担にはならないだろう。
そうカールスは口では釘を刺しつつも内心では三年後を見すえて受け入れる心づもりでいた。
「ありがとうございます!」
パッと先ほどまでの緊張した表情が溶け、10歳らしい明るい表情になったウォーカー。
やはり、そこら辺はまだまだ子供だな。
子供っぽい仕草にふっとほんわりとした気持ちになるカールス。
そこでふと気になったことをウォーカーに尋ねた。
「クロエちゃんは分かったが、君や君のお兄さんはどうするんだ?」
まあ、この子の事だ。
きっと何かしら考えているんだろうけどな。
「お兄ちゃんはお父さんの友達の所で御者として働くそうです。もう15歳ですし、立派に働けます。それに孤児院にもいくらかお金を入れないといけませんから」
……おう、すごく10歳の言葉には聞こえない。
まあ、彼のお兄さんも話をしていても落ち着いた性格のようだったし、大丈夫だろう。
「まあ、もし何かあったら言いなさい。 何かできることが有れば聞くよ」
ありがとうございます。と、ぺこりとお辞儀をするウォーカー。
「で、だ。そろそろ聞かせてもらってもいいかい?」
「わかりました。では僕の知って居る事を話しますね」
まじめな顔に戻ったカールスに比べウォーカーは相変わらず少し微笑んだままだった。
そしてその口調は少し大人っぽく変わっていた。
評価、ご感想お待ちしています!
ようやく第一章書き終えました!




