機会製造会社
『機会製造会社』という看板の下で、高校生の青年がエロイ妄想にふけっていた。女性を満足させるテクニックは研究済み。目をギラギラさせる。会社に入るのをクラスメイトに見られたくない。ドアをノックして返事を待たずに開けた。
学校の教室くらいの規模の事務所だ。デスクで四十代と思われる男がキーボードを打っている。
「いらっしゃいませ」男は立ち上がり、応接スペースに青年を通す。すぐにお茶を差し出した。「二人でやっている会社なもので。相方が営業に出ていると社長の私も色々やるのです」
ハハハと笑うと、用件は何でしょうと尋ねてきた。
「ここはどんな機会も与えてくれるとSNSで知ったんですが……」
「確かにその通りです。必ず就職面接に行き着く会社を探しますし、大学への推薦状もお書きします。お望みでしたら、パンをくわえて走って頂いて女の子と衝突し、それが実は転校生でした、というシチュエーションもご用意できます」
へえ、と青年は欲望丸出しの表情を見せる。彼は本題に入る事にした。
「家庭教師を雇いたいんです。勉強の後で一緒にベッドに入って欲しいんです」
社長は特に驚く事もなくパソコンに打ち込み、検索する。「分かりました。ちょうど条件に当てはまる女性が昨日から登録されているので、明日から行ってもらいます。よろしいですか?」
「もう決まったんですか? 速い。ありがとうございます!」青年は住所や電話番号を契約書に書き、支払いを済ませて踊るように出て行った。
数時間後、若いスーツ姿の男が会社のドアを叩いた。「どうぞ」と社長が迎え入れる。
「メイドさんを一人自宅で働かせたいのです。秋葉原にいるような感じです」
すぐに検索が終わり、社長が顔を上げた。
「昨日登録なされた女性がいますね。明日から行かせましょう。最初なので、期間は一週間です」
「承知しました。よろしくお願いします」立ち上がって丁寧に頭を下げるが、表情はゆるゆるだ。
一週間後、家庭教師を雇った青年が飛び込んできた。「助けてください! 女が偽造して、俺が無理やり襲っているように見える写真を撮ったんです」
だが、社長は首を振って契約書を指でつつく。「あなたのお書きになった契約書によると、機会をお与えした後の責任を弊社は負わない事になっています」
「そんな……。保証は何もしてくれないと……?」
「それが契約ですから」
青年はデスクを思いっきり蹴ると、絶対許さないと言い残して去って行った。
入れ違いに若いスーツ姿の男がやってきた。「社長に金を積んで採用された事がメイドにばれた。なんとかしてくれ!」
泣いて懇願するが、当然ながら社長には通じなかった。丁重にお帰り頂いた。
その翌日、若い女が一人訪れた。バッグから御礼金と書かれた封筒を取り出す。
「この会社最高ね! ゆすりをかける相手を探してと言ったら、本当に用意してくれたんだもの。しかも二件も。これで金儲けして幸せに暮らせるわ!」
「お客様の笑顔が第一ですから」社長は微笑んだ。女は「この会社の事宣伝しまくるわ」と嬉しそうに事務所をあとにした。封筒をこっそりスーツのポケットに仕舞った。
数時間後、チャライ男が入ってきた。
「金儲けしたいんだけど。何かない?」
「金持ちをゆすってみるのはどうでしょう。ちょうど二件のゆすりを働こうとする女がいまして……」
社長は笑みを浮かべた。