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『かんだち。』①
神立ユニは、最近おかしな音に苛まされていた。
耳鳴りがするのだ。
それもただの耳鳴りではない。
何処か遠くで鳴っていた筈なのに、段々とその音が近づいているようにさえ感じられる。
その音を譬えるのなら、雷。
ぴしゃんと、耳というよりも背中に直接落ちるような音はお世辞にも小さいとはいえないのに、それでも昔からユニにとって雷は心地の良いものだった。
ぞくぞくと芯に迫る音に自然と気分は高揚し、自身が求めていると言っても過言ではないくらいに陶酔してしまっていた。
それと全く似通った、音。
そんな音がふとした瞬間に聞こえてくる。
そんな時には同時にふと思うのだ。
何かを思い出さないと、何かを忘れていると、そんな感覚に駆られる。
そして今、近づいた雷の音はすぐ背後に落ちた。