⑭
年を取ってしまった男に、ユニ、そして幼子。
男は少年の時分に出会ったユニの事を綺麗だと褒め称え、神話に出てくるユニコーンのようだと言って「神立ユニ」という名を与えてくれた。
ユニには仲間があった。
異端ながらも力の強かったユニには守るべき存在があった。
だが、ユニは男と共にあることを選んだのだ。
そして、男の方もユニと共にあることを選んだ。
ユニのことを好きだと言い、妻を娶ることなく、戦争の惨禍から戻ってきてからもずっと傍に居てくれた。だが、このまま家を途切れさせるのは忍びないと養子を貰い、その養い子が結婚して家を出てからは、また二人で静かに男の余生を過ごした。
ある時、仕事が忙しいと言って戻ってきた養い子は己の娘を置いて行った。
その娘は舌っ足らずの声で「ユニ」と呼んでは後を付いてきた。そんな姿を見て、男は「親子のようだ」と言っては笑ったのだ。
幸せな時だった。
ゆっくりと流れる時間が、ただただ幸福だった。
ある日、娘を引き取りに来た養い子はユニの目の前で男のことを殺した。
そして、ユニに手荒なことをすると角を取った。
悲惨な最期だった。
伸ばした手は男に届くことはなく、視界は赤く紅く染められていく。
最後まで一緒だと約束したのに、男は自身の血の繋がらない子に殺されてしまったのだ。あっさりと、何の躊躇いもなく。