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美少女なきみ  作者: ゆきおんな
番外編
6/9

チカの武勇伝 二

 時は過ぎて学祭当日。

 一日目の今日は、ミスターキャンパス、ミスキャンパスコンテストが開催される日である。


 チカはミスターキャンパスコンテストのために舞台袖に控えていた。

 激励に来ていた件の先輩からようやっと解放されて、ほっとしているチカである。



 「やあ、チカ。…おっとここでは『ナオキ』の方が良かったかな?」


 「そろそろだろ?気分はどう?」


 チカのもとに楽しそうにやってきたのは菱川寶と我妻杏平の二人組だ。

 周りに人はいない。コンテストはすでに始まっていた。チカの出番は最後だ。



 「さっき一番最初の人ちょろっと見たけど、簡単なもんだな。名前と簡単な自己アピールだけって」


 杏平の言葉にチカは頷く。


 「ミスコンの方は特技とか披露しなくちゃならないのにね。まあやらなくていいならいいけど、楽だし」


 ミスターとミスでは扱いというか、重さというか、まあなんだ、注目度合いに差があるわけで。当然のごとくミスキャンパスコンテストの方に力が入っていた。


 


 「ナオキくん、出番だよ」


 楽しく喋っていたところに、運営委員の声がかかった。チカの出番だ。
















 


 「今年のミスターキャンパスは一年生のナオキくんです」


 「おめでとうございます!」


 

 結果、優勝。あっさりである。

 ガッツポースをしている件の先輩を視界の遠く端に感じつつ、チカは爽やかな笑顔で、内心困っていた。


 その後人に囲まれもみくちゃにされ、やっと自由になったチカは寶と杏平のもとに向かった。





 「優勝しちゃった。てへぺろ」


 舌を出すチカに二人は苦笑いである。


 「ちょっとまずくない?まだ一年生だしそんな顔も知れ渡ってないから大丈夫だと思ってたけどこれで皆の知るところになっちゃったよ、チカのこと」


 「だよなあ。まずかったな。俺ミスコン優勝する自信あるしどうしよ」


 寶の言葉に乾いた笑いを浮かべるチカ。ミスコンには及ばずともかなりの人が見に来ていた。そして揺るぎない自信である。



 「まあでもまさか『チカちゃん』が男だなんて誰も思わないだろうから大丈夫だろ」


 杏平の言葉でそういえばそうだな、と安心した二人。この三人組はいつもこんな調子である。
























 そうこうしている間に午後になり、ミスキャンパスコンテストの時間がやってきた。

 舞台袖には完璧な美少女『チカ』が寶、杏平と共にスタンバイしていた。なんの因果か、またまた出番は最後である。トリだ。

 

 「さすが、チカ。完璧な美少女ぶりだね。皆見てるよ」


 見覚えのない美少女に周りの出場者や付き添いの学生の視線がチカに集まる。

 「一年生にあんな子いた?」という声がひそひそ聞こえてくる。

 そりゃ見覚えないよな、と思いつつチカは手にしたヴァイオリンをくるくる回す。



 「チカってヴァイオリン弾けたっけ?」


 「チェロなら聴いたことあるけど」


 その様子を見ながら二人が尋ねる。


 「うん。チェロでもいいけどスカートだしな…。それにヴァイオリンの方がお嬢様っぽいだろ?」


 実はチカ、結構いいとこのお坊ちゃんである。それっぽい特技を色々持っていた。

 にっこり微笑むチカに杏平ははは、と笑う。


 「こっちは完全に優勝する気じゃねえか」


 「そりゃ、出るからにはね。美少女である自信あるし」


 それはそれは魅力的に微笑むと、チカは舞台に向かった。いよいよ出番である。








 

 舞台にチカが上がると、わあっと盛り上がる。


 「一年生のチカです」


 可愛らしく自己紹介をするチカを見つめる観客だが、

 「あんな可愛い子いたんだ」「だれだれ?お前知ってる?」「知らねえ」

 「皆知らないの?」「あんな可愛い子一回見たら忘れないと思うけどな…」

 まあ当然である。



 



















* * *


 そして―――



 「今年のミスキャンパスが決定いたしました!一年生のチカちゃんです!」


 わー

 観客の歓声の中、チカが花束とヴァイオリンを手ににっこり微笑んでいる。

 圧倒的な差での優勝だった。



 

 一度舞台袖に引っ込むと寶と杏平が出迎えた。


 「ホントに優勝しちゃったね!チカ!」


 「ヴァイオリン超うまいじゃん」


 「当然だよ。杏平、うまくないと披露しないよ」


 違いない、と談笑する三人に声がかかった。




 「このあとミスターキャンパスと写真撮影するからまだここにいてね」



 

 


 運営委員の言葉に三人の動きが止まった。

 一瞬不思議そうな顔をしたがそのまま気にせず運営委員は去っていったが。


 「やばいじゃん…」


 「どうやら緊急事態発生のようですよ」









 「ああもうどうするよ」


 運営委員たちがミスターキャンパスの『ナオキ』を探しているが見つからないとてんやわんやしている。


 「見つかるわけないよな、ここにいるんだから」


 「そういえばミスターキャンパス優勝したとき後で写真撮るって言ってた気がする…」


 「えーそれほんと?じゃあ優勝しちゃダメじゃん。かぶっちゃうじゃん」


 「ひとりアベック優勝とか笑える」


 「笑えねーよばかー」


 ぐだぐだ言っている三人であるが、そろそろやばい模様。運営委員たちが悲壮な顔で走り回っている。




 

 「もうこうなったら私がナオキですーって言っちゃいなよ」


 「なんて無責任な発言!」


 「いいじゃんいいじゃん言っちゃいなよー」


 「まあ、でも楽しそうだよな」


 「そう?楽しそう?」


 「うんうん。皆の驚く顔が目に見えるね」


 寶の言葉にチカの目がキラリと光る。


 「言っちゃうか」


 「言っちゃえー」


 なんか二人で盛り上がるチカと寶に、ひとり冷静に杏平は自分も楽しそうと言ったことを棚に上げて思っていた。こいつらあほだな。

 



 ともあれ、観客たちもそろそろしびれを切らしてきたようで。

 まあいいや、とチカは『ナオキ』と『チカ』として舞台に出ていくことにした。うだうだ悩まずあっさりさっぱりしているのがチカである。そして、楽しいこと大好き。

 

 一人で舞台にあがろうとするチカを、ナオキくんまだ来てないんだけど、と慌てて引きとめようとする運営委員に大丈夫と微笑むと舞台へと足を踏み出した。






 

 





 一人で舞台に現れたチカに観客がざわざわする。

 「ミスターはいないの?」「チカちゃんだけー?」


 観客の声にチカはマイクを握り締めるとにっこり。


 「ミスターもいますよー」


 ?状態の観客にとびっきりの笑顔を贈ると、チカは改めて自己紹介を始めた。



 「改めて。一年生の直木ナオキ智加チカです」


 ざわざわする観客に悪戯っぽい笑顔を投げると大きく頷いてみせた。





 「ミスターキャンパスの『ナオキ』とミスキャンパスの『チカ』です」




















 その後の会場の様子は推して知るべし。

 こうして前代未聞のミスター&ミスキャンパスとなったチカは一年生にして大学の有名人になってしまったのだった。

 最も、チカがそれをそう苦にしているようではないが。




完結です。

後々思い出したようにまた番外編をUPするかもです。

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