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第7話:過去は思い出。未来は夢。それなら今は。

 夏休みの帰省の前に、水族館に行くことが決定した。

 今回は金色週間なるゴールデンウィークに行った水族館ではなく、その時に元々行く予定だった露葉との思い出がある方に行くことになった。

 あの時は改装工事で入れなかったからなぁ。

  

「参巻、あの水族館!今度は大丈夫だよね!」

 

 瞳をキラキラさせながら俺を見る露葉。

 実は俺もちょっと楽しみになっていたりする。その水族館ではペンギンの行進やアシカショーなどの催しがよく行われており、露葉とは過去にデートで楽しんだものだ。

 

「そういえばサンサロール様と露葉さんは前にその水族館へ行ったことがあったんですよね」

「あ、あぁ。でもまぁもう二年は前になるかな」

「まだ変わってないといいなぁ」

 

 改装工事とはいえ、HPを見る限り装飾や水槽の補強、増築などが主だと書いてあったので大丈夫だと思うが。

 

「そう大きな変化はないだろ」

「……ん、そうだよね」

 

 不意に落ち着いた表情ではにかむ露葉に息を飲む。

 この笑顔はずるい。

 

「お、おう。とりあえず次の予定も決まったし、そろそろ俺はちょっと外出するよ」

「どこに行くのよ?」

「ちょっとコンビニにな」

「あ、それならあたしもご一緒していいですか?」

「ん?あぁ、いいけど、何か買うのか?」

「ちょうどお茶を切らしちゃってるみたいで。近所のスーパーまで行こうかと思っていました」

「そっか、それなら俺もスーパーにするよ」

「あら、それでしたら私はお母さまのお手伝いをしようかしら。とても美味しいお料理をご馳走になったのですし」

 

 シアはアリスさんとひよこさんの手伝いで昼食の後片付けをしてくれるようだ。

 露葉も手伝いに名乗りをあげたはあげたのだが、以前の戦力外通告がまだ効力を発揮しているらしい。ただ、乾いた皿の片付けなどは担当になったとかなんとか。

 

「分かった。じゃあ瀬栾とちょっと出かけてきます、ひよこさん」

「うふふ。行ってらっしゃい」

 

 かくしてスーパーへ行くことになったのだが。

 

「……お前も何か買うのか?」

「いやー参巻くん!美少女と二人でお出かけとはなかなか隅におけないですなぁ」

「いやーじゃねぇよ。いいか、お前が考えているような深い意味はないからな?ただの買い物だ」

 

 俺と瀬栾の後ろにはパパラッチのように忙しくスマホを構えた流市がいた。

 

「それに、ひよこさんの手伝いするんじゃなかったのか?」

「くぅー!それを引き合いに出すとは卑怯な!この俺様がどれだけ苦渋の決断をしてここにいるのかも知らずにィ!」

「知るか」

「はぁーーー。参巻くんには到底分からないだろうよ、この苦悩がなぁ。好きな人との時間よりも面白そうな状況を優先せざるを得ないこの苦悩が」

 

 どのあたりに苦悩があるのだろうか。頭の中で数回意味を考えてみたが理解できない。

 こればかりは俺の持つ常識がデファクトスタンダードであってほしい。

 

「いいかい参巻の旦那。君は今浮気にも近しいことをしているんだぞ」

 

 言われて気付いた。

 確かにそうかもしれない。

 

「いや、ち、違う!これは断じてそういう意図で」

「あぁそうだろうそうだろう。皆まで言わずとも分かるさ相棒。諮らずしてこうなっているんだろう」

「お前、じゃあ別に何もそんな」

「だが!」

「な、なんだよ」

「そういう参巻君の行動が少なからず彼女へ影響を与えている……、その自覚はおありで?」

「それは……」

 

 言葉に詰まる。反論できないし、これまで考えて来なかったわけでもないことだ。

 俺の軽い発言で、提案で、行動で、瀬栾やアリスさんに何かを思わせてしまっているのかもしれない。

 

「と、いうわけだ。分かってくれたかね参巻君」


 瀬栾は少し先を歩いている。この会話は聞こえていないようだ。

 

「分かってるよ」

「よろしい。雪星さんの彼氏であるということをゆめゆめ忘れぬようになぁ」

「お前は一体誰視点なんだよ」

「……恋愛教授?」


 なんとも胡散臭い教授だが、今ばかりは少しだけ乗ってやることにした。

 

「変な教授がいたもんだな」 

「サンサロール様、何かありました?」

 

 こちらを振り向き小首を傾げる瀬栾。

 

「あぁ、ごめんごめん、流市が……」

「片縁くんがどうかしましたか?」

「あれ?」

 

 周りを見るが流市の姿がなかった。

 

「……いや、なんでもない」

 

 すぐそばにあったコンビニの中からこちらにサムズアップする流市に軽く手を挙げて返し、瀬栾の隣に駆け寄った。

 スーパーに到着し、買い物カゴを手に取る。

 瀬栾は入口に設置されている今日のチラシに目を通していた。

 

「何か安いものでもあったか?」

「あ、いえ、特には」

 

 視線の先にはシロップの価格が書いてあった。

 

「二人で来るのは初めて、だな」

「そ、そうですね」

「……」

「……」

 

 すぐ近くを夫婦と見られる二人組が通り過ぎていく。

 

「早く済ませちゃいましょうか、お買い物」

 

 瀬栾はどこか焦るように飲み物のコーナーへと足を動かし始めた。

 

「そうだな。時間かけてもしょうがないしな」

 

 俺も瀬栾についていくようにして店内を歩き始めた。

 

 一方、楠町家では昼食の片付けをしながらひよこさんとシアとの間で話に花が咲いていた。

 

「シェリアさん、手際が良くて助かるわ〜」

「いえいえそんな。お母さまこそ動きが洗練されていて尊敬いたします」

「あら〜。お母さまだなんて、ちょっと照れちゃうわね〜」

 

 会話をしながらも手が止まることはなく、次々と食卓が片付いていく。

 

「アリス、はいこれ」

「つゆちゃん、それはそこよ?」

「わ、分かってたわよ?アリスが分かるかちょっと試しただけじゃない」

「あ、つゆちゃん、それはちがう」

「うわーん!アリスがいじめる!」

「これは、ここ」

 

 残りの二人はいつも通りのようだ。

 

「お母さま、アリスはご迷惑おかけしていませんか?」

「あら〜。そんなことは全くないわねぇ。むしろ毎日可愛らしいアリスちゃんと楽しいわぁ」

「……ほっ。安心しましたわ。アリス、のんびり屋でしょう?みなさまの生活の足を引っ張ってしまっていないかと心配で……」

「やっぱりお姉さんなのねぇ。大丈夫、何も心配いらないわよ〜」

 

 最後の食器を洗い終え、露葉に頬をつつかれているアリスさんの楽しそうな表情を見て心を撫で下ろすシェリアだった。

 

「ただいま戻りましたー」

「ただいまー」

 

 簡単な買い物を済ませてスーパーから帰宅した。

 キッチンの方から水音がない。どうやら片付けは終わったらしい。

 ただ、誰の声もしない。昼寝でもしているんだろうか。

 

「ただいま……」

 

 少し声量を落としてリビングルームへ。

 

「あれ?」

「サンサロール様?どうされました?」

「あ、いや、誰もいなくて」

「え?あら、どこかに行ったのでしょうか……?」

 

 玄関で靴を確認しようと思い、リビングルームを出る。

 すると二階の方で声がすることに気が付いた。

 

「あ、瀬栾、みんな二階にいるみたいだ」

「みなさん二階に……何かあったんでしょうか?」

 

 二階へ近づくにつれて話の内容が聞こえてきた。

 

「まぁ!これがあの瀬栾さんなの?」

「そうなの〜。可愛いでしょう?」

「瀬栾ってばこんなにはしゃぐこともあったのね。つゆよりお子様なところもあるじゃない」

「つゆちゃん、それ、ひわ」

「へ!?ひ、鶸ちゃん!?この子が?え?」

「あら〜、懐かしいわねぇ。この頃の鶸は瀬栾にピッタリで〜」

 

 アルバムか何かで思い出を振り返っているようだ。

 と、瀬栾が猛スピードで二階へ駆け上がって行った。

 そして、すぐに階段に戻ってきた。

 

「お、おお、お茶にしましょう!そうしましょう!一階で!」

「おう?構わないけど……、何だ?盛り上がってたみたいだから気になってるんだが」

「ダメです」

「え?」

「さ、サンサロール様は、絶対に見ちゃダメです!」

「うぉ!?お、おう、分かった」

 

 顔を真っ赤にした瀬栾に押し切られてしまった。

 この剣幕だと何があろうと道をあけてくれることはなさそうだ。

 

「わ、分かったよ。先にリビング行ってるな」

「……危なかった……」

「危ない?」

「い、いえっ!何でもないです!ささ、お茶にしましょう!」

「お、おう……」

 

 リビングルームに戻ると、ソファの裏で亜空間にGOTOしている流市を発見した。

 その手にはアルバムがあった。

 

「ん?何だこれ」

「サンサロール様、お茶菓子の棚に……え」

「ど、どうした瀬栾?」

「見ました?」

「あ、いや、これから……かな?」

「ダメです」

 

 瀬栾がアルバムに手を伸ばす。

 その時、流市が急にカムバック。

 

「ったーーー!死ぬかと思ったぜ……。ん?おぉ、二人とも帰ってきてたのか!おい参巻、聞いてくれこのボクはもしかするとおぶぇっ!?」

 

 瀬栾のアルバムの角アタックが流市の頭にクリーンヒットした。

 それと同時に数枚の写真が散らばる。

 

「あっ!」

「あーあー、拾って……、おん?」

「だ、ダメです!」

「……可愛い」

 

 拾った写真には、幼い頃の瀬栾の姿。

 可愛らしいピンクの洋服と黒のスカート。

 それよりなにより、満面の笑みがこれでもかというほどに眩しい。

 

「この子、瀬栾?」

「あうぅ、見ないでください……」

「そんなに変な顔もしてないし、恥ずかしがるような写真じゃないと思うけど」

「そういう問題じゃないんです!あたし、この頃のあたしはまだサンサロール様のこと好きになってないの!」

「……はい?」

「だから、ダメなんです!サンサロール様を好きになる前だし、何をしているところの写真があるか分かったものではないのでダメです!」

「そ、そういうものなのか……?」

 

 どうやら写真というよりも当時の自分の内面がどう写っているかが気になっているらしい。乙女心は難しい。

 

「とにかくダメなんです!」

 

 素早い動きで写真を没収されてしまった。流市は亜空間へ向かったようだ。

 一階の音が聞こえたからか、二階から皆が下りてきた。

 

「あら、帰ってきてたのね〜」

「おかえりー。あれ、どしたの?」

 

 露葉がアルバムを手に顔を真っ赤にした瀬栾と気絶している流市を見ながら聞く。

 まぁ気になるわな。

 

「いやぁ、流市のやつがアルバムを持ってたからちょっと見てみようかなと思ったら瀬栾に止められちゃってな」

「あぁー……、なるほどね」

 

 なんと。露葉には分かったのだろうか。

 

「大丈夫よ瀬栾、さっき上でいくつか見たけど、変な写真はなかったわ」

「そういう問題じゃ」

「あ、でも小っちゃい鶸ちゃんは面白い写真が多かったわね」

 

 なんと!?それは気になる。

 見てみたいなぁと思った矢先、瀬栾の表情が固まっていることに気がついた。

 

「ん?瀬栾、どうかしたのか?」

「……あ、い、いえ、何でもないです」

「ごめんごめん、とりあえずアルバムはもう勝手に見ないから安心してくれ」

「あ、はい……。と、ところで露葉さん、その面白い写真は、ど、どのアルバムで……?」

 

 瀬栾は露葉の見たというアルバムが気になるようだ。

 露葉が「えぇっと」と思い出そうとする間、瀬栾はジリジリと露葉に歩み迫る。

 

「あの、瀬栾……ちゃん?えと、ど、どうしました?」

 

 あの無邪気な露葉が気圧されている。

 敬語になっているあたり、相当怖いのだろう。

 

「そ、そのアルバムに、海で遊んでいるものはありました?」

「え……?あ、確か何枚か……え!?ちょ、ちょっと瀬栾!?」

 

 瀬栾は露葉の手を引いて二階に向かっていってしまった。

 まぁ、ここは首を突っ込まないほうが良さそうだ。

 

「あらまぁ、ふふふ」

「ひよこさん?」

「ふふ、あの子ったら、まだ気付いてないのね〜」

「……?」

 

 ひよこさんが微笑みながら俺を見る。

 いつものごとくふわふわしていて考えていることが分からないが、流市がこれを見たら後で何を言われるか。気絶してくれていてよかった。

 

 そしてその流市は、あまりにも戻ってこないのでシアが心配し始めていた。

 

「片縁くん、この状態は大丈夫なのかしら?」

「あぁ、こいつは大丈夫。いつものことなんだ」

「いつもこんな気絶を?」

 

 言われて気付いたがなかなかレア体質だなと思う。

 キャラ付けとか言うな。

 

「そのうち戻ってくるから心配しなくていいと思うけど」

「そ、そう」

「……うーん?こ、ここは……、あ、リビングか。おいそれより参巻!この写真、ってあれ?ない」

「ほらな」

「本当に慣れているのね……」

 

 流市が戻って来たのを確認したシアは珍しく驚きの表情を見せる。

 

「お、おい参巻、シェリア会長が熱視線を送ってくださっているように見えるのは僕だけでしょうか!?」

「お前だけだ」


 二階から露葉が戻って来た。

 

「お、どうだった?」

「参巻のバーカ!」

 

 突然の罵倒に驚く。状況が飲み込めない。

 

「えぇ……。俺、何かしたかな……?」

 

 隣にいた流市に問うが。

 

「……うーん?これは流市さんにも分からんでごわすな」

「そうか……」

 

 露葉はそのままテーブルについてひよこさんが淹れてくれているお茶を啜り始めた。

 二階で何があったのだろうか。

 確かめてみることにした。

 

「瀬栾?今、入っても大丈夫か?」

「はひっ!?サンサロール様っ!?」

「あぁ、悪い。無理にとは言わないから、ダメならごめん」

「いいいえとんでもないですっ!」

 

 瀬栾の部屋に入る。

 アルバムを広げたままになっていた。

 

「あ、ごめん。大丈夫、見てないから」

「あたしこそすみません、でも、もう大丈夫です」

 

 アルバムを閉じながら瀬栾は思い出を口にする。

 

「あたし、小さい頃に海で会った同い年くらいの男の子に興味を持ってたみたいで」

 

 その言葉からは彼女が自分で好きだと自覚していなかったことが窺えた。

 

「まだ恋愛の意味も知らない頃だったんですけど、どうしてもその海で会った子のことは気になって気になってしょうがなかったんです」

「海での出会い、ロマンチックだな」

「……特に何もなかったんですけどね」

「……そ、そうなんだ」

 

 返す言葉に詰まる。

 こういうとき、流市や涼なら気の利いたセリフを言えるのだろう。キザな奴らが羨ましい。

 

「数年経って、忘れていました。このこと」

「ま、まぁ、その、思い出せたならいいんじゃないか?」

「……」

 

 あ、まずいことを言ったか?

 

「……そう、ですね」

 

 床に広げられていた最後のアルバムを手に取り、開く瀬栾。

 

「忘れていた方が、よかったなぁ」

 

 寂しげな表情。

 

「あー、その、なんだ。で、出会いってさ、俺が瀬栾に会えたみたいに突然なわけだろ?ひょっとしたらその人にもどこかで」

「ふふっ」

「瀬栾?」

 

 瀬栾は静かに、だが嬉しそうに笑った。

 

「露葉さんが心配してます。声をかけてあげてください」

「えぇと……?も、もう大丈夫ってことか?」

「はい」

 

 瀬栾の言葉の真意は掴めないが、確かにこの状況のまま長居すると露葉に色々言われそうだ。

 

「お、おう。それじゃ」

 

 瀬栾の部屋を出る。

 

「さて。この写真、どうしようかな……」

 

 瀬栾は幼き頃に撮った海での少年との思い出をアルバムから取りだした。

 自分一人しか写っていないフォトフレームの写真をそのツーショットと入れ替える。

 

「……このくらいは、いいよね」

 

 メインの二人……と、その端で当時の瀬栾を見つめる少年が写った三人のツーショットを飾った部屋を出て、二人のいるリビングへと向かった。

 

 時間は夕方。

 シアはことりさんのお迎えで帰宅した。

 数回の「泊まりたい」「ダメです」問答はあったが、ことりさんの「昼食のドタキャンだけならまだしも、夕食までとなると流石にシェフが落ち込みますよ」に言い返せなかったようだ。

 

 夕飯の支度でコトコトと料理の音を奏でるひよこさん。

 結局不足した牛乳とその他買い物を頼まれ外出する洋一さん。

 念入りに浴槽を洗いお手伝いポイント稼ぎをする流市。

 ちょっと機嫌が良くなってテーブルセッティングを行う瀬栾。

 庭の花に水をやる露葉とアリスさん。

 今夜のテレビ番組の録画予約をする鶸ちゃん。

 そして瀬栾と一緒にテーブルを片付けて準備をする俺。

 

 いつもの日常だ。

 

「ひよこさん!お風呂ピカピカになりましたァ!」

「あら〜、助かるわぁ」

「いえいえ、それよりも他に何かありますか?」

 

 流市の積極的な姿勢は素直に素晴らしい。

 性格はどうであれ、こういうところは見習える。

 

「あ、こっちもテーブル準備できました。何か手伝えることありますか?」

「あらら、うーん。そうねぇ〜。あ、それじゃあ洋一さんにこれ届けてもらえるかしら〜?」

 

 渡されたのは財布。

 洋一さんのベタな忘れ物にちょっと親近感を感じた。

 

「はい!しっかりと届けます!」

「お店って近所のあのスーパーですよね?」

「そうだと思うわ〜。よろしくねぇ」

「お母さん、じゃああたしも一緒に」

 

 瀬栾も立候補したが、珍しくひよこさんから別命が出た。

 

「あ、瀬栾にはちょっとこっちを手伝って欲しいわ〜」

「え?あ、うん。いいけれど……」

 

 瀬栾の少し残念そうな目に後ろ髪を引かれつつも財布を洋一さんに届けるべく外出した。

 

「瀬栾、うふふ。あなたって子は本当に私そっくりねぇ」

「急にどうしたのお母さん?」

「ふふふ〜。あら、いい味になってきたわねぇ」

「お母さん?」

「……瀬栾。海の写真、好きでしょ?」

「!」

「『もう一人』の子、覚えてる?」

「も、もう一人?」

 

 急な質問に戸惑う瀬栾。

 確かに写ってはいたし、覚えてるも何も、それは……。

 

「片縁くん、だよね?あの子」

 

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