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プロローグ:こんな俺だけど暫くお世話になります!ダメと言われても世話になるけどっ!…ダメ、と言われないんだけど…。

 俺は最近、どうも恋をしてしまったらしい。

 そりゃあ、高校生にもなれば恋をしたくなるのも無理はないだろう。年頃の男女が同じ空間で時間を重ねるわけで、そこには少なからず恋愛感情を抱かざるを得ない状況が生まれやすい。


「……好き、なんだろうか」


 『あいつ』を見てると、どうしても身体が熱く感じる。いや、心が満たされる……或いは、癒されるっていうやつなのかねぇ、これは。

 一般世間で何て表現されているのかは知らないが、俺の表現力だとせいぜいこの程度。まぁ、国語のテストもあまり良い点数とは言えないから、これは俺の一種のダメな所なんだろうな。

 俺はこの熱い感じを、今も忘れる事なく記憶している。忘れろと言われた所で不可能な訳だが。

 だから、俺は決意した。


「こうなったらこの気持ちが本物かどうか、確かめてみるしかないな!」


 四月上旬。

 俺は自分の荷物を学校指定のカバンにまとめ、それでも入り切らない物はリュックサックに詰め込んで。

 去年の秋から気になって仕方がない『あいつ』の住む家の表札の前までやって来た。

 そして、幕が上がった。


「よし!」


 真っ新な俺の心に色付く生活が。

 この気持ちの先にある想いを探す旅が。


 この旅の目的。それは、『あいつ』に恋をした事が、正解だったと証明する事だ。


 時は遡り、昨日。

 俺は当然の事ながら学校にいた。昼休みに教室内であいつに話しかけていたのを憶えている。単なるクラスメートとして付き合ってくれているのかそうでないのかどうかは分からないが、一応、あいつとは会話が出来る程度の仲だ。しかし、俺はこの日、頭を何処かに超激突させていたらしい。何故なら、


「聞きたい事があるんだけど……。今、彼氏とかいないよな?」

 

 ……。

 うっわー。ないわー。死ねよ俺。

 何だよ唐突に。いきなりかよ。絶対嫌われたよ。もう、全部終わっ……


「え?うん、いないけど?」


 てなかったぁぁぁぁぁああああ!

 何コレ!?どういう事!?奇跡!?そうなのか!?はッ!まさか夢!?夢なのか!?

 ……い、痛い。

 頬をつねると確かに痛みが走った。


「夢じゃ、ない……?」

「え?何か言った?」

「いやぁ、な、何でも……あはは……」


 ふぅ。

 結局、昨日の俺はそれっきり会話をする事どころか顔を見る事すら出来なくなってしまったのだ。

 え、だってほら、ね?彼氏がいないってことはその、まぁなんだ、チャンスがあるという……フフフ……ハッ!言っておくが妄想じゃねーぞコラ。もう一度言う。妄想ではありません事よ……はぁ。

 そんな事があり、俺は昨日絶賛舞い上がり中にあった。とどのつまり、俺はそのあいつの言葉を聞いて、漸く決意に至る事が出来たのだった。それまでも何度か考えてはみていたが、最悪彼氏がいた場合、俺へのダメージがデカすぎるという事で躊躇っていたのだ。俺のチキンめ。


 時を今に戻そう。

 俺は昨日確定した決意を実行に移そうとあいつの自宅に入るべくなんとか手の震えを抑えながら呼び鈴を鳴らした。


 ピンポーン


「はーい」


 そう高すぎない声。あいつの声にしては若干低いような気がする。すると、玄関から顔を出したのはあいつではなかった。まぁ、見た目からしても声からしても、明らかにあいつの母親間違いなしだったので、そこまで驚きはしなかった。ただ、思った事は一つ。


 ……超似てる。


 ここまでそっくりな親娘というのは全国探してもなかなかいないのではなかろうか。


「あの、どちら様で?」


 俺はそう聞かれて意識を改めた。

 ここはもう腹をくくって正面衝突に乗り切った。


「あ、えぇと……俺は、あいつと…、瀬栾せらさんとお付き合いさせて頂いている、石川いしかわ 参巻さまきと申します!これからどうぞよろしくお願いします!」


 ……やってしまった。

 言ってしまった。

 けど、言っちゃった事は仕方ないよねッ!てへぺろっ☆。

 ……さて、帰るとしますかね。

 しかし、丁度そのセリフを口にした直後だっただろうか。

 俺の背後で何かが地面に落ちる音がした。

 不思議に思い振り向くと、そこにはあいつ、楠町くすまち 瀬栾せらがいた。落ちたのは学校指定のカバンだったようだ。


「あら?瀬栾、お帰り。彼氏くんの事くらいお母さんに言ってくれれば良いのに〜」


 何も知らぬ母親のセリフに困惑する瀬栾。そして彼女は母親と自分を隔てる俺を見る。


「……あの、ね、ちょっと、確認したいんだけど……。さっき、何て言った?」


 ヤバい!ヤバいヤバいヤバい!100%怒ってる!ここはどーやって切り抜ければ良い!?俺はどーすれば良いんだ!?


「え?あ、俺?だからほら、その、お付き合いをしてるって事を……あ、あはは、まだ挨拶にはちょーっと早かったかなー、なんて……」


 何を言ってるんだ俺はぁぁぁぁぁぁあああああ!!??終わったァ!はい、終了ー!!残念でした俺!青春終了DEATH!!


「へ、へぇ、そ、そっかぁー、も、もう!気が早いんだからぁ……。と、ととととりあえず、あ、ああ挨拶は、も、もうちょーっと先の方が、ね?……でも、ま、まぁ、き、今日は、仕方ないから、折角、来たんだし、わ、私の部屋に、案内するわね!」


 !?

 今、何と!?何が!?奇跡!?いや、やっぱり夢!?

 ……い、痛い。

 まさか人生において二日連続で頬をつねって現実を確かめるシチュエーションがやって来るとは思っていなかったが、それくらい信じられない状況になってしまった。


「あらあら、それなら今日は泊まって行く?こんな夕方から……って、もう夜ね。遠慮は要らないわよ?」


 昨日までの俺様へ。

 今日、俺はアンビリバボーな世界へ舞い込んでしまいました。でもこれはこれでヒャッホーイ!だよな!?もう、選択肢は一つで良いよネッ!(語彙力低下)


「はいッ!」


 俺は勢い良く返事をした。

 仕方ない、仕方ないよなこれはッ!


 こうして俺はあいつ、楠町 瀬栾の母親公認の下、楠町家に一日介入する事に。

 目標達成を果たす為に、色々確認したいことはあるし、良い機会だと思う。

 ……瀬栾が受け入れてくれた(?)理由も、とりあえず聞きたいし。

 しかしこの時の俺は、まさかこの日からここに住む事になるなんて微塵も思っていかなった。

 い、一日だけかと思ってました、本当に、この時は……。

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