レイン棒
日曜日の朝、俺は視界いっぱいの眩い光で覚醒した。北海道にも夏が来たか。
麗ちゃんは昨夜、俺が札幌駅まで送っていった。どうやら風呂ですっかり純玲と仲良くなったみたいだ。
しかし眩しいな。それになんだか下半身が重たい。俺はベッドに寝転んだままそちらを見る。
「うおおおおおおっ!! 神だ!! ついに俺は現世でも神になったぞおおおっ!!」
なんと、なんとお!! 俺のオチンが高さ30センチくらいの光り輝くでっかいタワーになってるじゃねぇか!! 太陽みたいにギラギラ輝いたと思ったら今度はレインボーに妖しく光り、リング状の七色がウィンウィン上昇して、この世のものとは思えないほど幻想的だ。よし決めた。今日から俺のオチンは名付けて『レイン棒』だ!!
「うおっ!? おうおうおう!?」
レイン棒は七色を発したまま上下動、更に水を全開で噴射したホースのごとくブルンブルンと猛烈にループし始めた。
「おおおおおおっ!! サイコーだぜぇ!! 神だ! 俺はチン世界創造の神だあああっ!!」
「朝からうるさいわよお!! もう11時半だけど!!」
いつもみたいにどこからともなく母チャンの怒鳴り声。まったくワンパターンでユーモアがない。だがそんなことはどうでもいい。この最強ツールを見せびらかさずにいられない俺は、ジャージのまま部屋を飛び出して駅ビルの本屋へダーッシュ!! エロ本の新刊を買う用事があるからな!!
「おらおら見やがれ俺のレイン棒おおおーっ!!」
連呼しながらダッシュすること5分。民の注目を浴びながら本屋に辿り着くと、ファッション雑誌のコーナーで品を見定める学園アイドルを発見!! 周囲は相変わらず俺に注目して騒がしく、高貴なものをお目にかかれた嬉しさのあまりキャーキャー悲鳴を上げるヤツも少なくない。
「おう! 万希葉じゃねぇか!」
「だっ、誰ですかっ!?」
何故か怯えて後ずさる万希葉。あぁ、レイン棒が眩しいのか。
「誰って俺だよオレオレ」
「わっ、私あなた知りませんッ!」
「おいおい、結果がアレで俺の不甲斐なさもあるから蒸し返すのも気が引けるけど、仮にも俺に告白してきたくらいだし、そう簡単に忘れやしないだろ?」
言うと、何故か傍観者たちが万希葉に冷たい視線を向け始めた。あぁ、アレだ、嫉妬ってヤツだな。そうだろそうだろ! こんな高貴な神たる俺に告白する勇者に恐れ入ってるんだろ!!
簡単に過去の話をすると、俺は放課後の教室で万希葉に告白された。俺が対応に困ってるところに麗ちゃん登場。まさかのダブル告白! 後日、俺は二人とも一緒に付き合いたい旨を告げたが、万希葉はそんな付き合い方したら嫉妬でどうにかなっちゃいそうと交際を辞退。結果として二人一緒に付き合っても構わないという麗ちゃんと付き合う運びとなった。
「ってあれ?」
いつの間にか万希葉の姿が消えやがった。まったく相変わらずのツンデレちゃんだぜ!
「お巡りさん! あそこよアソコ!」
長ネギの緑の部分がひょこっと顔を出した藁製のエコバックを持ってるババァが俺のレイン棒を指差してマッポーを誘導している。
「またキミかー!! こんなモンどこで仕入れたんだー!!」
おっと、顔馴染みのマッポージジィだ。
「仕入れたんじゃねぇよ!! 起きたらこうなってたんだ!! つまり自然現象さ!! それよりいまションベンしてぇから話は後でな!!」
上下動とループが膀胱を刺激するんだよなコレ。
「そうか!! なら私も同行しよう!!」
「なんだよイイ歳こいて連れションか!? おまわりたんいくちゅでちゅかー??」
「48だー!!」
で、便所に着いてマッポー監視の下ションベンをしようとするが…。
「あれ? このオチン、穴がねぇぞ」
「そうだ。これには尿道がないんだ。だから尿意を催した時は外さにゃならんのだが神威クン、いくら外したくないからって何もシリコンでくっ付けなくとも良かろう。毛まで抜け落ちるぞ」
シリコンってアレだよな。乗り物とかに使う接着剤だよな。クラスの電車オタクから聞いたことあるぜ!
「知らねぇよ。ガチで朝起きたらこうなってたんだからよぉ。ってかオッサン、詳しいな」
「げふんげふん! キミのような輩を幾度も取り締まっておるからな。それよりもだ。早くコレを外さんとキミの健康に関わる。今日のところは特別に見逃してやるから、私と一緒にお家へ帰ろう」
「おぅ、まぁそうだな」
マッポーに付き添われて帰宅してる時は、俺を待ち受ける生命存亡の危機など知る由もなかった。やべぇやべぇ! 漏れそうなのに物理的に漏らせねぇ! シリコンボンド神だぜ!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
果たして神威は生命の危機から逃れられるのか!?