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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
日常編
8/57

彼女は何かを企んでいる

 脱衣所で下着を脱ぐのって、同性同士でも恥ずかしいよね。


 私と純玲さんは上下の下着を脱ぎ、純玲さんは私を先に浴室へ通してくれた。黒い下着って、黒い下着って、なんだかオトナ…。けど胸は私のほうが。純玲さんはBで、私はC。って、失礼だね。


 からだを洗うため私がシャワーの蛇口をひねると、やがてモヤッとした湯気が二人のからだを包み隠した。純玲さんはまるで雪女のようにしい雰囲気を醸している。


「麗さま、そんなに緊張なさる必要ございませんわ。寧ろお恥ずかしいのは私のほう。きっと女性ホルモンが足りないのですね」


 物憂げに笑んで自分の胸を見下ろす純玲さん。二人で入るには少々狭い浴室内に、彼女の声はシャワーのやさしい打音の中でも澄明にこだました。


 私はどう返せば良いのかわからず、いえ、そんな…。と腑に落ちない言葉で誤魔化した。


「そうだ、お近付きのしるしに、私が麗さまのおからだを洗って差し上げましょう」


 赤く小さい高級そうなシャンプーにリンス、トリートメントとボディーソープのボトルを両手の指と指に器用に挟み、無邪気かつ気品漂う笑みで私の前にちらつかせる純玲さん。


「え、あの…」


「お任せください。私、こういうの得意ですの」


 悪いと思いながらも断りきれず、私はお風呂の椅子に腰を下ろし、純玲さんに背中を預ける。ふわふわ泡立つシャンプーと、やさしい手つきが心地よい。純玲さん、頭洗うの上手だなぁ。ヘッドスパってこんな感じなのかなぁ。


「麗さまと神威は、恋人同士なのですか?」


 あまりの気持ち良さにウトウトして眠りかけたとき、唐突に訊かれた。


「はっ、はいっ! そうです…」


 あわわわわわわ! 唐突に訊かれるとなんだか凄く緊張する。


「ふふっ。神威のどのようなところがお好きなのかしら?」


 そう問われれば、答えは決まっている。


「あ、えっと、エッチでよく暴走するけど、ちゃんと人の気持ちを汲み取りながら行動できる人で、周りの人を元気にする力がある。内気な私も、神威くんのおかげで段々と心を開けるようになってきて。彼にはそんな、不思議な魅力があるんです」


 あうぅ、あまり上手に言えなかったけれど、思っていることを言うのって、恥ずかしい。言ってから後悔するパターンだ。


「あらあら、そんな風に思ってもらえる神威は幸せ者ね」


「ふふっ。時々大変ですけど…」


 どうしてだろう。純玲さんとはさきほど知り合ったばかりなのに、割と話しやすい。他の人だと、神威くんでさえも、こんなに早く笑顔は見せられなかったのに。


「あら、もしかしてまだお恥ずかしい姿で外を走り回ったりするのかしら?」


 口調は穏やかだけど、胸中に陰りが出てきたのか、背中から感じる純玲さんのオーラが少し淀みはじめた。


「えっ? あっ、はい…。昔からそうなんですか?」


「えぇ。それはもう、私は神威が小さな頃から注意しておりましたが、まるで聞く様子がなくて。さきほども大声を出して帰ってきたようですが…」


 うん、穏やかだけど、なんだか怖い…。


「今日は注意しないんですか?」


「えぇ。今日のところはお母さまにお灸を据えられたようですので、私まで叱責しっせきしたら神威の居場所がなくなってしまいますわ。ですのでこのような場合の私の役目は、神威の気が楽になるよう、心の拠り所をつくることですの。さすればきっと、豊かな心のまま育ってくれるはず。麗さまの仰る通り、神威は周りを惹き付ける不思議な魅力がある。そんな彼ならきっと、仮に愛を知らぬまま育った仲間がいらしたとしても、豊かな心を分け与えられる。わたくしはそう、信じておりますわ」


 そう語る純玲さんの口調はとても穏やかで、優しかった。何かあるとすぐ暴力に及んでしまう私とは大違いだ。神威くん、とっても愛されてるんだなぁ。こんなにいい人なのに、なぜ神威くんは純玲さんが苦手なのだろう。


「シャンプー、このくらいでよろしければお流しいたしますが、いかがでしょうか」


「はい、ありがとうございます」


「いえ、私が好きでしていることですので。それに、麗さまの髪は指どおりなめらかで、洗っていて楽しくなってしまいましたわ」


 まるで子供のように言葉を弾ませる純玲さんに釣られ、私もクスクス笑ってしまった。私も自然に笑顔を引き出せる大人になりたい。


 シャンプーを流したら次はコンディショナー、トリートメントと続く。トリートメントは髪に浸透させるため、塗布したまましばらく時間を置く。その間に今度は私が純玲さんの髪を洗い、トリートメントまでの行程へ進んだ。純玲さんも私と同じく髪に触れられるのを羞恥したのか、私が髪を洗うと言ったら、あら、そんなご親切にしていただくなど恐縮ですわと、ごく僅かに戸惑いを見せた。


「さて、神威にはとっておきのプレゼントを差し上げましょう…」


「はい?」


 何かをボソリと言った純玲さん。


「いえ、なんでもございませんわ。ふふふふふ…」


 うーん、なんだろう。もしかしたらなのだけど、純玲さん、何か企んでいるような…。

 

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 神威へのプレゼントとは!?

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