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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
日常編
7/57

ドアガアイタヨー

 ドアが、開いたヨ…。地獄への、ドアガアイタヨー…。


「あら神威、お久しぶり。どうしたの? ぶるぶる震えて顔が青ざめているわよ」


 令嬢らしく華やかな笑顔で俺を迎える純玲。俺は震える脚を休めるため、唯一空いてる下座に倒れぬよう慎重に、慎重に腰を下ろしてあぐらをかいた。あぅ、座ると負傷したケツの中がジンジン響くぜ…。


「ム、シャ、ブルイダヨー…」


 神威くんの様子が明らかにおかしい。純玲さんの言う通り顔が青ざめていて全身がぶるぶる震え、今にも倒れ込みそうだ。さっき差し込まれたお箸でできた傷が痛むのかな?


「あら? 近くに敵でもりますの? それとも、何か困難に立ち向かうとか?」


 鼻と口の間に手を添えて悪戯な笑みを浮かべる純玲。


 敵というか、神を凌駕する怪物のようなものが三体もいらっしゃいますよ…。一人はピ〇チュウみたいに愛らしいけど、一体はナマハゲ、もう一体はメ〇モンだろ。変身するヤツな。


 純玲はすんげぇ美人だけど、やっぱ‘音威子府家’の一員なんだよな~。今はまだ大人しいけど。


「そうさ。神たる俺はいつも困難や荒波に立ち向かってるのさ」


「あらそうなの。それでは心身共に疲れているでしょう。神威もご一緒にお茶と致しましょう?」


 おやおや? 今日の純玲は穏やかだな。いつもなら奇声を上げて帰って来た時は顔合わせるなり近所迷惑だの恥を知りなさいだの色々うるせぇんだのに。母チャンもうるせぇし、ケツに箸ぶっ込まれたりケツ叩かれたりするが所詮はその程度。純玲だって物理的な制裁を加えることもあるけど、バカじゃねぇから理路整然と訴えかけてくるのが俺の精神に負担をかけるんだ。まったく鬱になるぜ。


「おう、そうだな」


「ええ。ではこちらの萩の月、よろしければお茶のお供にお召し上がりくださいな」


「サンキュー。いただきます」


 萩の月とウーロン茶を差し出された。純玲のヤツ、仙台行ってきたのか。牛タン食いたくなってきたぜ。そうだ、夏休みに部活で新幹線使って東京に行くから仙台で降りて牛タン弁当でも買うか? 東京行くなら飛行機がフツーだけど、部活に一人だけ飛行機が苦手なヤツが居るんだよな。


「はい、どうぞ」


 ふふっ、と微笑む純玲からは、お嬢様の気品が溢れてる。ではさっそく一口いただきまーす。


「おおっ、うめぇな萩の月!」


 何度か食ったことあるけどやっぱウマイ! 柔らかいスポンジみたいな丸い生地の中に口どけなめらかなカスタードクリームが入った二口サイズの絶品だ。


「お気に召されたようでなによりだわ。そうだ、今度は神威の好きなお飲み物をいただけるかしら」


「おう! ちょっと待ってろ! いま用意してくるからな!」


 俺が意気揚々と立ち上がると、純玲はお待ちになって。私も一緒に参りますわ。と言ったから、一緒にキッチンへ向かった。


 客間の斜め隣にあるキッチンに入ると、俺は冷蔵庫からペットボトル入りのコーラとブラックコーヒーを取り出して氷を入れたグラスに一対一の割合で注ぎ、純玲に渡した。


「ありがとう。いただきますわ」


「おう!」


 純玲はゴクン、ゴクンと少し味わいながら飲み干した。


「どうだ? 俺特製の『コーヒー』は」


 このネーミングは『コーラ&コーヒー』の略だ。


「ええ。とても美味しいわ」


 純玲は笑顔を華やがせて俺に言う。


「そうか! もう一杯飲むか?」


「いえ、冷たいものを摂りすぎるとお腹を壊してしまうので。またお願いね?」


「おう! そうだ、麗ちゃんと母チャンにも飲ませてやるか!」


 いやぁ、これはヒットしたか! 正直ミックスドリンクは他の人にはほぼ受け入れらんないからチョッチ心配してたんだけどな!


「ねぇ神威? これは二人だけの秘密にしない?」


「秘密? いやでもよお、イイモノはみんなに広めたいからな」


「お願い。それに、いま冷たいものを飲んだら二人ともお腹を壊してしまうわ」


 女性特有の上目遣い。しかも純玲にはオトナの色気がある。従姉とはいえこれは反則だよな。


「そうだな。またの機会にするか!」


 今日の純玲は『優しいモード』だな。よく考えると純玲はぶりっ子なのか、誰かが居る時には説教を垂れない。今日は母チャンと麗ちゃんが居るから安全だな。あとは俺がマグマを溜めないように気を付ければなんとかなりそうだ。


 ◇◇◇


 神威くんと純玲さんが出ていった客間では、私と神威くんのお母さんと二人きりの時間が始まった。


「神威ったらどういう訳か昔っから純玲ちゃんに怯えちゃって。純玲ちゃんは神威が怯えてるのを察知するとね、何らかのカタチで神威の機嫌を取るの。今回は神威の考えた不味まずい飲み物を自ら進んで飲ませてだなんて」


 神威くんの飲み物といえば、ワンタンスープとコーラを混ぜたものと、メロンソーダとウーロン茶を混ぜたものを私は知っている。きっと他にも多くのレパートリーがあるのだろう。


「純玲さん、神威くんの飲み物苦手なんですか?」


「そりゃあそうよお。なんでもかんでも混ぜりゃいいってもんじゃないの」


 私は苦手だけど、純玲さんや神威くんのお母さんは音威子府家の一員なだけに平気かと思っていた。やっぱり彼は異端児なんだ。きっと私もそうだけど…。


「でもね、純玲ちゃんは決して不味いって言ったりイヤな顔をしないのよ。神威との距離を縮めたい一心でね。神威はいつになったらそれに気付くのかねぇ」


「純玲さん、優しいんですね。私なんか一口飲んだだけでゴメンナサイしちゃいました」


「あらあらぁ、麗ちゃんも優しい子じゃなぁい。普通なら飲まず嫌いよ?」


「いえいえ、優しいというよりは、単なる好奇心です」


「あらまぁ、本当にイイコねぇ。神威はホント、お友だちには恵まれてるわ」


「ははは…」


 確かに、私や神威くんの周りはいい人ばかりだ。けどお母さん? 私と神威くんは本当にお友だち以上なんですよ?


 お喋りに一段落ついたところで、神威くんと純玲さんが客間へ戻ってきた。


「純玲ちゃん、そろそろお風呂でもどう?」


 神威くんのお母さんが勧めると、神威くんと純玲さんは出入口で立ち止まった。腕時計は4時半を差している。早い家庭ではそろそろ入浴してもおかしくない時間だ。


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきますわ。麗さま、もしよろしければ、ご一緒いたしませんか?」


「えっ?」


 純玲さんの突然の申し出に少しびっくりしたけれど、神威くんのお家には乾燥機があるから、着替えは大丈夫だね。けど女同士とはいえ、ハダカの付き合いはちょっと恥ずかしい。


「あ、はい…」


「よおし! じゃあ俺も一緒に入るか!」


「神威ー!! そんなことしたら私と一緒に入らせるわよお!!」


「すんませんでしたあっ!!」


 俺が謝るのを見て麗ちゃんと純玲はクスクス笑ってたけど、母チャンのぼってりボディーはナマハゲだけに危険等級がオニヤバい。見たら激しい目眩めまいと吐き気をもよおすからな。


 しゃあない。一緒に入浴は諦めるとして、ここは覗きとするか! でも麗ちゃんのカラダはいつか訪れるであろうベッドでのお楽しみにしときたい気持ちもあるから、どうしようかな~。純玲とはガキの頃から一緒に風呂入ってて、大学生までの女子の成長過程は一通り観察済みなのだか、胸の成長過程は都合によりよく知らない。何はともあれ、ここは将来のために、女同士のハダカの付き合いってヤツで二人の親密度を高めてもらうか! 

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 次回は女同士のハダカの付き合いをお送りする予定です!

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