異なる環境
「この街って、親切で社交的な人が多いみたいですね」
「そうですね。茅ヶ崎は何故か他の街とはちょっと違うようで。私たちからすればこれが普通で、私はどちらかといえば人見知りするほうですが、それでも他の地域の方々にとっては積極的に映るようです」
「えぇ、俺から見ても星川さんはすごく社交的だと思います」
「そうでしょうか。うーん、困ったものです。不入斗さんはもっと積極的じゃないですか。私など序の口です」
「確かに。あんなのがいっぱいいるんですか?」
「はい! それはもう。大阪の方さえドン引きするくらいの人がけっこういらっしゃいますよ!」
注文を済ませて宇治金時と水菜を待つ間、茅ヶ崎に住む人の社交性が気になっていた俺は、その疑問を星川さんに訊ねてみた。やはり俺の気のせいではないようだ。
俺と同じく、この土地には社交的な人が多く住んでいるのかと問う人はよくいるという。
「それはすごい。大阪のほうがグイグイくるイメージがあるので」
「そう、ですね。大阪のほうが積極的な方は多いかなとは思います。茅ヶ崎の場合はごく一部のエリアに社交的な方が集中していますし、時代の流れで他所の街からの転居者が増え、巷でよく言われる湘南や茅ヶ崎らしいフランクな方は減少傾向にありますね」
「なるほど。時代が変われば人も変わると」
「はい。これからの茅ヶ崎は、これまで通り松風薫る情緒は残しつつ、転居者の方とも力を合わせて、伝統と革新、何よりこれから先ずっと愛される街をつくる。そんな気風が漂っているなって、街を歩いていて感じます」
「そう、ですか」
そんな街で育った水菜を、札幌へ無理矢理引き戻すのは如何なものだろうかと思い始めた。
札幌は札幌で変遷を遂げているものの、性質が違う。この茅ヶ崎は穏やかでのびのび、エロいのに品があって凛としている。
札幌は北海道のトップとして都市開発が進み、最近ではご当地企業が開発したボカロを前面的にプッシュし、新しい時代の一翼を担う都会的な進化を遂げている。
ざっくり言えば茅ヶ崎は田舎っぽくて、札幌は都会的。
あまりにも異なる環境に、水菜は疲れてしまったんじゃないか?
お読みいただき誠にありがとうございます。
更新遅くなりまして申し訳ございません。次話の執筆は開始しており、近日中に公開できる見込みです。




