水菜発見
「うーむ、次回からは発行部数を増やそう。十三時で完売など言語道断。欲しいと思ってくれている人に行き渡らなかった可能性大だ。即売会終了までどんなに少なくとも一部は売れ残っていないと。今後はできる限り多く印刷しよう」
などと見知が皆に反省点を述べている頃、勇と萌香は水菜を見付けるため、駅から少し離れたニュータウンを歩き回っていた。この一帯には団地やアパートなどが密集し、湘南らしさはあまり感じられない平凡な街並みだ。出身中学がこの辺りでアパートに住んでいたと水菜が言っていたため、その学区内にあるアパートを虱潰しに回り、『不入斗』という表札を探す。尤も、表札など掲げていないかもしれないが。
「あははー、勢いで来たはいいけどこれは大変だねー。北海道に帰るか東京行ってみんなと合流する?」
「ここまで来て諦めるのも勿体ない。なんといっても飛行機に乗って来たんだぞ、飛行機に。そう、あの飛行機だ」
「そんなに飛行機連呼しなくても知ってるゾ☆ ていうか、あの子、水菜っちじゃない?」
団地のある裏道から県道に出て南側の中古車販売店の前にあるバス停に立っていたのは、見覚えのあるツインテールの少女。ちょうど停車中のバスに乗り込むところだった。勇が走るぞ! と声を掛け、走ろうとしたところでバスは発車してしまった。二人とバスまでの距離わずか五十メートルが、みるみる離れてゆく。
「はああ、なんてこった。ラッキーだと思ったのに。はぁ、はぁ……」
「あははー、仕方ないさー。でもきっと、水菜っちは駅に向かったんだろうから、次のバスに乗って駅周辺を探し回れば会えるかもよー」
「はぁ、はぁ、途中下車したり、駅から電車に乗ったら、どうするんだっ」
「あははー、ごちゃごちゃうるさいゾ☆ だったら周辺情報を調べ上げて水菜っちが行きそうな場所を推理すればいいじゃんか。ほら、もう次のバス来た」
「お前、息切れしないんだな」
お読みいただき誠にありがとうございます!
即売会編が一段落したところで勇編の再開です!




