即売会は情報戦!
「エロ本♪ エロ本♪ フォフォフォフォーン!」
「ときに神威くん、キミはまだ17歳だったと思うのだが」
「なんだよ、独り占めしたいからって警官ヅラしてんじゃねぇよ」
「だが青少年の健全な育成を促すのも警察官の大切な仕事だ。まずは私が中を確かめようではないか」
「セーラー服のオッサンに言われても説得力ねぇぞ」
「何を言っている。男がこのような格好をするのが当たり前の国もあるのだ。漫画文化のグローバル化が進む現代において、時流に乗るのは当たり前ではないか」
言って、オッサンはただでさえ汗だくの身体に更に汗を噴出させながら本を開く。
「なっ、なにっ!? こ、これはどういうことだ!?」
「あ? 見せてくんなきゃどうもこうもわかんねぇだろ」
「そうか。ならば私はここにうっかり本を置き忘れよう。神威くんが落とし物を拾って中を見るか見ないかは私には無関係だ。もちろん、私が目を逸らしている間に自分で購入した本を閲覧しても、それは私にはわからない」
「ああ? なんだかよくわかんねぇけど、オッサンが目を逸らしてる間に読めばいいんだな?」
「そうは言っていない。私はそれを承諾するわけにはいかない。ただ、私が見ていないところで君が何をしようと知りようがないと言っているんだ」
「なんだよめんどくせぇな。わかったからあっち向いてろ」
さてさて、ちょっくら覗いてみるか!
ページを捲ってうほいうほい♪ スカート捲ってうほほほーい!
「って、なんだこりゃああああああ!!」
「コラコラ、あまり騒ぐでない! ただでさえ私に冷ややかな視線がちらちらと刺さっているというのに、君が大声出したせいでまるで私の容姿に対して君が驚いたかのような空気になっているではないか!」
「あぁ、オッサンの格好も十分ドン引きだけどよぉ! これはどういうこった!」
「君のようにコベワのようなものを装着して札幌の街を練り歩くような変質者にドン引きされる筋合いはないが、私にとってもこの漫画に描かれている人物の生態については理解しかねる部分がある。これは現代の医療技術によって改造された人間の物語なのかね?」
コベワ? あぁ、あれか。っかの民族がオチンに装着する瓢箪みたいな植物性の筒か。
「おいおいおい、だとしたら、こいつはおっぱいが膨らんじまった男ってことか!? 女にオチンが生えてくるとは思えねぇしな」
「おやおや? 聞き覚えのある奇声が聞こえたと思えば、ねっぷくんではないか。それと、お主は確か……。まぁ良い、どうやら二人ともお宝は手に入ったようだね」
「おうおう見知シル、ちょうどいいところに来た。コイツが男なのか女なのかハッキリしなくてよぉ」
言いながら、俺は見知さんに本を開いて見せた。
「ふむふむ、これはいわゆるフタ〇リというものだね。つまり、雌雄同体だ」
「な、なんと!?」
「シユウドウタイ? なんだそれ」
「つまり、男でもあり、女でもあるということだ。故に、このような行為も己の身一つで可能なのだよ」
「ちょっと待ってくれ! 俺は巨乳の姉ちゃんのつもりで本を買ったんだぞ! 詐欺じゃねぇのか!?」
「何を言う。即売会は情報戦。下調べもせずに購入したお主らが悪いのであろう。それに、雌雄同体にも需要はある。良ければ今後の参考に私が買い取ろうか。というより、それ以前に警察官であるお主が17歳の少年がこのような本の購入を容認するとはけしからん。全年齢対象の本とて多く販売されているというのに」
「私は知らん。雌雄同体など本当に知らんかった」
「返答になっていないがまぁ良い。お主らのためにもう一度言うが、即売会は情報戦だ。しかしねっぷ、慣れない君がこのような事態に陥るのは想定内。全年齢対象の黒髪美少女がヒロインの本なら買っておいた」
「おお! サンクス! これにて一件落着だぜ!」
「わっ、私は……」
「お主の登場は想定外だ。悪いが適当に何か買ってくれ」
「な、なんとおおお!」
結局、俺が買った本は資料として見知さんにタダで渡した。代わりに俺は、黒髪美少女の見えそうで見えない本を貰ってめでたしめでたし。
さてさて、明日はこっちが売る側だ。気合いだ! 叩き売りだ! 根っ性だあああ!




