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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
同人誌即売会編

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32/57

ホテルにて。神威と麗の場合

「うおおおおおお!! 口で呼吸できるぜー!! いやあしかし同人誌、無事に印刷できそうで良かったな!」


 臨海副都心にあるホテルのツインルーム。窓からは東雲しののめ新木場しんきばに広がる夕暮れの工場地帯が見える。


 部屋の隅に荷物を置いた私は神威くんの口にぐるぐる巻きにしていたガムテープをビリビリビリッ! と乱暴に引き剥がしてからユニットバスで手を洗い、ひとまずベッドに掛けて向かい合った。この人やっぱりうるさいからガムテープ巻き直そうかな?


「本当は三週間前までに原稿上がってなきゃいけないんだけど、三日前になっちゃったね」


「まあまあまあ! それでイイ本ができたんだからいいじゃねぇか!」


「うーん……」


 果たしてアレが良作と言えるのだろうか。長髪の女の子が赤い縁のメガネをかけた背の低い短髪のお子ちゃまみたいな先輩にあんなコトこんなコトをやりたい放題やられるだけの作者俺得漫画にしか見えないのだけど。でも同人誌ってそういうものか。それに、私も漫画を描くのが好きなあまりに手伝ってしまったし、実物の画像すらないのに大人のオモチャの描写が物凄く上手いと知内さんに褒められて悪い気はしなかった。


「そういやよお、麗ちゃんは自分で漫画描かねぇのか?」


「うん、なんか恥ずかしくて」


「恥ずかしい? やっぱエロ本?」


「ううん、エッチな本を描くのは知内さんので疲れちゃったから、少女漫画とか日常系のほのぼのしたものを描きたいんだけど、構成も画力も出版社に持ち込めるレベルじゃないし、そういうのって即売会でちゃんと売れるのかな? って。ああいうイベントはまだ行ったことないけど、エッチな本を売る場所っていうイメージがあるから」


「なるほどなー。そういう理由もあって渋ってんのかー。とりあえず明日、色んな漫画見てみようぜ」


「うん、そうだね」


「よし! じゃあ風呂入るべ! 一緒に入るか!」


「一人でお先にどうぞ」


「そっか! じゃあ先に失礼するぜ!」


 約10分後に神威くんがお風呂から上がり、ある程度湿気が飛ぶのを待ったら、下着を漁られる恐れがあるので持参した下着類を全て浴室に持ち込み、ドアを施錠。更にチェックインの際、フロントで借りた壊れたモップの柄を再利用した用心棒を設置して念入りにガードする。


 安全確認をしたら脱衣して蛇口をひねる。ホテルの水道はお湯と冷水をバランスよく調節する必要があるので浴びるまで一苦労だ。


 程よい温度になったところで爪先から徐々に上へ向かってお湯をかけてゆく。ゆっくりゆっくりかけて、ようやく肩まで辿り着いたらなんだかホッとして、ふ〜う、と溜め息が出た。札幌から東京まで約半日の移動、和気藹々わきあいあいとしていたから短く感じたけれど、改めて時間にしてみると長旅だった。


 あ〜、お湯を張ってのんびり浸かろうかな〜。


 ガンガンガンガン!


 あーうるさいうるさい。あまりにも予想通りの展開だ。


「おうおう麗ちゃん! ションベンしたくなっちまってよお!」


「ごめんね。悪いけど、ロビーのトイレに行ってくれる?」


「ああ! やっぱりションベンしたくなくなった! また風呂入りたくなったから一緒に入ろうぜ!」


「うーん、二人で入るには狭いと思う」


「あぁあぁいいんだそれは! 俺は麗ちゃんの中に入れればいいからよ!」


 面倒だけど今リラックスできなかったら明日の蒸し暑い会場で倒れてしまう。仕方ないので一旦服を着て浴室を出て、ベッドシーツで神威くんを亀甲縛りにしてからゆっくりと温浴タイムを満喫した。可哀想だけど非常に危険なので、神威くんには翌朝まで緊縛したままでいてもらった。


 



 毎度更新遅くなりまして恐縮でございます。


 更に恐縮ではございますが、作者多忙により不定期更新が続く見込みでございます。


 しかしながらキャラクターたちの恋模様は最後まで描いてゆく所存でございますので、気長にお付き合いいただければ幸いです。

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