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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
勇編

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30/57

霞んだ空に祈りを捧げ

 17時8分。私たちは予定通りに東京駅に到着した。新幹線を降りたときの異常にモヤッとした空気と、夕方なのに肌を照り焼きにする陽射しとウルトラバイオレット、略してUVに神威くんを除く道民一同はその場で倒れそうになった。


 初めて乗った新幹線の車内では神威くんが高速走行に興奮して奇声を上げたのでガムテープで口を塞ぎ、縄で手足を縛った。気絶させたら東京駅で意識を取り戻さない可能性があり、ずるずると引っ張るのが面倒なのでやめた。異様な光景に車掌さんや他の乗客たちに、え? なにこれ? みたいな目で見られたので、車掌さんには事情を説明し半ば無理やり納得させた。


 今回利用した新幹線は15年くらい前に登場した古いタイプの車両だったけれど、座席は普通車でも飛行機のエコノミークラスより広く、足元がゆったりしていた。降車が完了した現在の車内を覗くと、倒されたままのリクライニングシートが自動で起き上がり、そのまま折り返す方向へ向けて座席が反転している最中だ。私が幼い頃の記憶には、この新幹線よりずっと古いタイプの在来線特急車両の座席を清掃員のおばさんたちが勢い良く回転させているシーンがあり、技術の進歩を感じた。これでおばさんたちの負担が軽減されているのだろう。


「うほーいっ! 東京再上陸だぜー! 東京の下々の者よ、待たせたな! 神は舞い戻ったぜ!」


 降車したので縄をほどきガムテープを剥がしてあげると早速奇声を上げた神威くん。すごくうるさいのでガムテープを貼り直したい。いや、瞬間接着剤を塗って暫くの間は鼻だけで呼吸してもらおうかな?


 乗り継ぎの電車内でうるさくすると迷惑なので口をガムテープでぐるぐる巻きにして乗り換えた。吊り手を掴まないと危険なためやむ無く両手足は解放したままだ。JRから主に地下を走る東京臨海高速鉄道に乗り換えて臨海副都心にあるホテルに到着。部屋割りは私と神威くん、木古内さんと知内さん、そして顧問の占冠しむかっぷ先生がシングルルームを予約。恐らくこれが最も安全な組み合わせだと思う。私は神威くんに襲われても反撃できるし、木古内さんと知内さんは無闇に夜の営みはしないだろう。したらしたでそれはそれだ。


 それより心配なのは不入斗いりやまずさんと長万部おしゃまんべくん。二人とも旅程キャンセルの知らせ以来音信不通だ。ここにいるみんなもすごく心配しているけれど、同時に何もできないジレンマを抱えている。どうか二人が幸いでありますように。祈りなどとても届きそうにない東京の霞んだ空にそれでも祈り、眠らぬ街の夜が始まる。

 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 第1シリーズ以来の関東上陸です! 同人誌即売会シーズンの物語が始まります。

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