もえかおるみずな
部活が終了し、部員一同は通例的に札幌駅で解散。水菜はメールの主と落ち合うために改札口付近の支柱に寄り添い立っていた。
「ごめーん、待ったー?」
「いえ、たった今来たところです!」
水菜のもとへ小走りで寄ってきたのは萌香。先月から水菜の恋愛相談に乗っているのだ。二人は雑談をしながらファミレスへ移動。互いにティラミスとドリンクバーを注文し、卓上にはグラス半分程度の氷が入ったメロンソーダが二つ、斜め向かいに置いてある。
「萌香せんぱい! それ、美味しいですか?」
「あははー、ティラミスフロートぉ? 液体チョコチップメロンパンみたいで美味しいよぉ。水菜
っちもやってみるといいさ~」
萌香はメロンソーダと砕いたティラミスの混ざった液体を能天気な笑みで心底美味しそうに飲んでいる。水菜は怖いもの見たさでそれを真似た。
「なんだか粉っぽくて凄く甘いですね! でもちょっと苦いかも」
「あははー、まるで恋のようだねー」
「恋はもっと苦くて粉っぽいです!」
「うん、どうやらそうみたいだね。まさかあの勇ましいヘタレに…」
「あのヘタレ野郎に他の女が居るなんて…」
「ごめんよぉ。私が少し距離を置いて他の男に興味のあるフリをしたら振り向くかもなんてアドバイスしたばかりに。まさかヘタレのくせにやられたらやり返すとは思わなかったよー」
「いいんです。私、今回の一件で勇せんぱいのどこが好きなのか色々考えたんですけど、顔がタイプで境遇が自分と近いってくらいで、他には思い浮かびませんでした。それに私、一学期が終わったら茅ヶ崎の生家に帰ろうと思ってます」
「え? 水菜っち、パパが嫌いだからママと一緒に札幌まで来たんでしょ?」
「そうなんですけど、反省したからどうか戻って来てくれって電話口で泣かれちゃって。それに地元の友達も会いたがってくれてるし、戻るのも悪くないかなって思うんです」
「そうかぁ。水菜っちが居なくなったら淋しいなぁ」
突然の知らせに俯く萌香へ、水菜は笑顔を作って見せる。
萌香は水菜に対し、もし茅ヶ崎で上手くいかなかったらいつでも戻っておいでと云おうと思ったが、それは自分ではなく水菜にとってもっと大切な人が云うべきと判断し、口を噤んだ。
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今回の更新より徐々に更新ペースを回復してまいりますので、今後とや何卒宜しくお願い申し上げます。




