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さつこいNEXT!  作者: おじぃ
勇編

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23/57

死ぬかもしれん

 日曜日、負傷しているにも拘わらず彼女が見舞いに来てくれないという神様を憐れんだ勇と夏海は神社もとい音威子府家へ向かうため、雑居ビルの建ち並ぶ市街地を歩いていた。


「ねっぷ、彼女に愛想尽かされたのかな」


「かもな。付き合い始めてからもスカートめくりしながら校内駆け回る習慣は変わらんし、一途を感じられないな」


 まもなくマンションに到着し、玄関のインターフォンを鳴らすと神威が二人を出迎えた。


「おう! 昨日は楽しく過ごしたか?」


「おっす♪ 楽しかったよねー?」


「あ? あぁ、まぁな」


「そうか! 良かったな! 鳥居で立ち話もなんだから神殿へ上がりたまえ諸君!」


 相変わらずなんかウザい。そう思いながら『おじゃまします』を言って上がり込む二人。さっそく散らかった部屋に案内されると、そこでは白いワンピースを纏った長い黒髪美人が体育座りをしていた。


「あ、こんにちはっ」


「こんにちは留萌さん。なんだ、俺たち邪魔だな」


「はじめましてー! 七飯夏海っています! ねっぷのお見舞いですかー?」


「あ、はい! はじめましてっ。留萌麗と申します」


 夏海と対面して少々狼狽気味の麗。


「麗ちゃんは俺の女神さま! つまり彼女さ!」


「ねっぷ! 悪ふざけは良くないよ!」


 神威の言うことを冗談と思い込み笑う夏海。


「なんだと!? ふざけてないぞ! なっ、麗ちゃん!」


 麗は頬を赤らめながらこくり頷いた。


「え? どういうこと? こんな清楚な人がねっぷの彼女?」


 神威が虚勢を張って麗とテキトーに話を合わせたのではと疑う夏海は顔を引き攣らせながら勇に問うた。


「残念ながら事実なんだ。だが案外お似合いな気もする」


「あ! そうか! これは夢だ! ねっぷに彼女がいるのは前に聞いたけどあまりにもイメージとかけ離れてるもん! きっと本当の彼女はヤンキーとかゴリラみたいな人だよね! っていうかそもそも彼女の存在が嘘のような気もしてきた! だからこれは夢なんだ! 勇! ビンタして!」


「いや、女子に手を上げるのは…」


 ニコニコしながらビンタを要求する夏海に勇は戸惑い目を逸らした。


「いいのいいの! 夢の中ならビンタし放題犯し放題!」


「いや、夢じゃねぇし…」


「いいからさっさとやれよヘタレ!」


 ペシーン!


「ぶふぉあっ!」


 豊潤な乙女の柔肌が複雑な家庭で鍛え上げられた暴漢の掌に容赦なく弾かれ、澄明な音が部屋に響いた。華の女子高生ははたかれた衝撃で宙を舞い唾液を噴き出し倒れた。そのときの顔は海外の黄色い家族のキャラクターのように目が飛び出しそうな間抜け面で、何故か麗はC.C.Lemonを飲みたくなった。


「痛い! なにすんだよ!」


 ぼこぐにゃっ!


「うおあっ!」


 予想外に強力なビンタに驚愕し腹を立てた夏海は倒れたままベージュのスカートの中から白くて薄いフリルの召し物が見えるのを構わず勇の股間を蹴り飛ばした。夏海より高く宙を舞った勇はうおおおおっ、と呻き声を上げ転げ回りながら蹲っている。


「おうおうおう! 大丈夫か二人とも!」


 心配そうに二人を見る事態の元凶となった神威と麗、そしてごきぶりん。


「ほっぺがジンジンするぅ~」


 夏海は紅く腫れ上がった頬を押さえているが、勇ほど重症ではなさそうだ。


「…タマが死んだかもしれん」


「なんてこった! 夏海! 今すぐチンパイ蘇生だ!」


「チンパイ蘇生?」


「そうだ。いま勇のオチンはピンチなんだ。だからな、別れたところ悪いんだが、夏海の胸に搭載された武器を使って処置をしてほしいんだ」


「え!? なにそれ今ここで!?」


 はわわわわ!? こんなところで公開プレイ!? どうしよどうしよどうしよう!?


 それはそうと、神威くんはよくそんな如何わしいことを思い付いたと思う。その頭脳を別のところに活かせばそれなりの成果は出ると思うけれど…。


 一見清楚な女神さまは三人を見ながらそんなことを考えていた。


「そうだなー、それはさすがに恥ずかしいよな。俺は平気だけどな!」


「蘇生なんかしなくても大丈夫だ。もとより生涯子供を授かるつもりはない」


 掠れた声を搾り出す勇の瞳は、徐々に生気を失いつつあった。


「勇、それはダメ。未来のお嫁さんが愛する人の子供を産めないって知ったときの心情を想像して。だから、これから私の家に来て。全力を尽くすけど、それでももし本当に死んじゃったら、私がずっと勇に付き添うから」


 言って、夏海は勇の前にしゃがみ込み手を差し伸べた。勇は僅かに頬を赤らめ、眼前のムダなく透き通るような脚から顔を逸らし、夏海の手を取って二人同時に立ち上がった。


「じゃあ、私たち、これで御暇おいとまするね。二人とも、幸せにね?」


 恥じらいを誤魔化しながら微笑む夏海に、居合わせた誰もが胸を締め付けられた。ごきぶりんまでも。


「おう」


「はい」


「じゃあね。勇、いくよ」


「あ、ああ。おじゃましました」


「おう」


 二人が去った後、神威は思った。


「しまった!」


 ご覧いただき誠にありがとうございます!


 予告通り勇に暴君になっていただきましたw 

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