表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さつこいNEXT!  作者: おじぃ
勇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/57

墜落

 勇と夏海、そして神威が再会を果たす金曜日。


 今日、神威は尻の負傷による激烈な痛みのため学校を休んだ。近頃神威は同様の理由で学校を休みがちだ。


 水菜は相変わらず勇と距離を置きながら、新史への接触も少し控えて勇の様子を窺っていた。


 部活終了後の17時近く。新聞部員たちと別れた勇は独り札幌駅の改札口付近にある支柱にもたれて夏海を待っていた。ここで待ち合わせて神威の部屋に集まる運びとなった。


 一方、同じく単独行動している水菜は駅構内のコンビニでペットボトル入りの水を買い、会計を済ませて店外へ出ると、10メートルほど離れたところの支柱に凭れ掛かる勇を見付けた。


 どうしようかな? 声掛けようかな? 土日は会う機会ないし、勇せんぱいは気が弱いら、あんまり遠ざけたら本当に気まずくなって、私からも話し掛けられなくなっちゃう。


 私は、勇せんぱいが好き。


 けど、迷ってる段階のいま、距離を縮めていいのかな?


 火曜日の夜、萌香せんぱいから電話があった。


 押してもダメなら引いてみろ。少し距離を置いたり、他の男と仲良くするフリをしてアイツを嫉妬させて、向こうから言い寄らせろ。水菜っちの幸せを願ってるゾ☆ みたいな内容だった。


 確かにそうだと思った。私が勇せんぱいに付き纏うのが日常化していて、その先へなかなか進めずに地団駄している私がいた。勇せんぱいの立場になって考えてみても、そんな私と上手くコミュニケーションを取れないんじゃないかと。要するに、一方通行だったんだ。互いの気持ちを通わせる隙を、私が与えなかったんだ。


 けど、私が勇せんぱいと距離を置いた理由はそれだけじゃない。実はもうひとつ、問題を抱えている。それは近いうちに打ち明けなきゃいけない。だから、そろそろ勇せんぱいと距離を置くのはやめようと思う。勇せんぱいが私を意識してくれているとしたら効果はきっと、十分に発揮された筈だから。


 一歩一歩、平静を装って勇せんぱいに近付く。スマートフォンを操作してるから私には気付かないだろう。ちょっと驚かせてみようかな。ううん、そこまでしなくていいか。いつもみたいに、勇せーんぱい! って声を掛ければいいじゃん。


 勇せんぱいに声を掛けるのでこんなに緊張するなんて、今までの私には考えられなかった。自ら作った距離は、自らをもこんなにドキドキさせるんだ。なんだかすごい、新鮮な気分。恋をするって、こういうことなのかな? 最初は単なる一目惚れで、共通点を見出だしたりなんだかんだで構ってくれる勇せんぱいは、いつの間にか私にとってなくてはならない存在になってた。でも、その流れで付き合ったとしたら、ここまでドキドキできたかな? それはわからないけど、いまのこの気持ちは本当だ。


 恋って、不思議だな。


 勇せんぱいまでの物理的な距離、あと3メートルくらい。そろそろ声を掛けよう。


「勇せーんぱっ…」  


「よっ! 久しぶりっ!」


 えっ? 誰?


 私が声を掛けようとしたら、他校の制服を着た女が勇せんぱいに駆け寄って両手でガシッと肩を掴んだ。


 変わってないね! と言う女に、勇せんぱいは頷きながら何か言い返してる。つまり、幼馴染や元カノである可能性が高い。元カノだとしたら、勇せんぱいから復縁を迫ったのだろうか。


 もしかしたら、勇せんぱいは私なんか最初から眼中になかったけれど、私が言い寄ってたから仕方なく相手してくれて、気を遣って他の女とは接触しなかったのか。それとも、しばらく会ってなかったけどずっと付き合ってたのだろうか。歩き出した勇せんぱいと女は楽しそうに会話している。私は立ち止まったまま、二人を目で追う。


 なんだ、私が付け入る隙なんて、なかったんだ。


 そう考えると、この北海道に私の居場所なんかないように思えてきた。


 だって、いますごく泣きたいのに、大声だしてわんわん泣きたいのに、それを受け入れてくれる人がいないんだよ? 麗せんぱいや見知せんぱいは優しくしてくれるかもしれない。けど、そうじゃなくて、いちばん優しくしてほしいひとがいま、他の女と楽しそうに歩いている真実。私はそれをどう受け入れればいいの?


 やだよ、もうやだよ。このままじゃ私、どうにかなっちゃうよ。


 きのう届いたスマートフォンのメールを読み返す。


『もう一度、チャンスをくれないか』


 一か八か、それに応えるのもいいかもしれない。


 放心状態のまま誰もいない家に帰宅した私は、スーツケースに入るだけの荷物を詰め込んだ。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 前作と比較してNEXTと呼ぶに相応しい雰囲気になってきた気がするのは私だけでしょうか。


 今後もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ