Encounters you 2
「何か、笑われるようなことしました?」
「いや、この前『たぬきや』だったなって思っただけ」
よく覚えてるな。そんなにインパクト大?
美緒はちょっと口を尖らせた。
「改めて自己紹介するね。篠田龍太郎、二十四歳。フォレストハウス勤務」
「え?歳上?」
龍太郎は大袈裟に肩を落とすアクションをした。
「・・・いいけど。いくつに見えてた?」
「ハタチくらい?下だと思ってて」
口に出してから、失礼だったかしら?と気にする。
若く見えたりするの嫌がる人、いるよね。
表情のわかりやすい子だな。
美緒の顔を見ながら、龍太郎は思う。何かを口に出すたびに表情が変わる。
「ところで、松山さんはいくつ?」
「二十二です。サカイ衛材勤務。営業事務、一般職」
あ、怒ってない。良かった。
美緒はそう思いながら、改めて龍太郎の顔を見直した。
程無く運ばれてきたカレーを食べながら、ポツリポツリと当たり障りのない話を繋げてゆく。音楽の話、映画の話、最近のニュース。少しずつ噛み合わず、歩み寄りの必要な会話だ。
うわ、可愛くても男の人だ!
龍太郎の迷いのないスプーンの運び方に見惚れて、美緒の手が止まった。
「どうかした?」
「食べるの、早いですね」
「あ、ごめん。俺だけ食い終わったら、気、使うよね」
どきん。
美緒の心臓が大きく鼓動を打った。
もしかして、男の人とふたりで食事するの、はじめてかも。
そして突然、緊張が襲ってきた。
どうしよう。飲み込めない!
「口に合わなかった?」
「いいえっ!美味しいですっ!」
無理矢理最後まで食べて、美緒はスプーンを置いた。食べ残しはマナーに反する。
胃、おかしくなりそう。