鈴森の羨望
ごめんなさい。また、龍と美緒は出ません。
八十の処女になると思われていた松坊が、明日結婚する。結婚式の前日の今日も松坊はいつも通りで、私が予約を取らなければ、ネイルサロンにも行かないつもりだったらしい。先週の日曜に連れて行ったネイルサロンで、松坊はもの珍しげにキョロキョロしていた。
顔立ちは悪くないし、着るものにも少しは気を遣うようになった。性格が悪くないのは、社内で私が一番良く知ってる。多分松坊がタマノコシに乗るようなことがあっても、誰もヒガミでイヤガラセしたりはしないと思う。女の子に好かれ、年上の男の人には可愛がられている。そんな松坊だから、私も素直にお祝いできる。
可愛く見える仕草・服装、男の子が興味のありそうな話題、そして自分に何を求められているのか。勘だけは良い私は、それを手がかりに今まで恋の相手を見つけていた。だから、松坊がそんなことに無頓着なことを、恋ができない原因だと思っていたのだ。
違ったんだね。松坊は松坊のまま、自分に似合う相手を見つけて、綺麗になった。相変わらず邪気のない笑顔のまま、手をとって歩く相手を見つけたんだ。
ねえ、私にもそんな相手が見つかるかな。髪を巻いたりモテ服の研究したりしなくても、家にいるままの私を、好きだって言ってくれる人が。松坊がどんどん綺麗になったのは、服装が変わっただけじゃないよね。もっと何か――愛されてるって幸福感?そんなもののような気がする。
明日の友人代表のスピーチ、今から緊張してるんだよ。台本は何度も確認したけど。
さて、顔が浮腫まないように、早めに寝よう。あ、お風呂でパックして、ドレスもチェックしとかなくちゃ。靴、やっぱりヒール高い方が、足が綺麗に見えるよね。ネイル、ちょっと派手だったかも……
だって、新しい出会いがあるかも知れないじゃない。
fin.
ごめんなさい・・・しつこく割り込ませました。許してね。