表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/76

be happy,Lovers! 2

「まさかと思うけど、まだ?」

 沈黙が答えだ。藤原の信じられん、という眼差しがウザい。

「つきあって、どれくらいになる?」

「かれこれ四ヶ月は過ぎた」

 手を繋ぐだけのデートが、二ヶ月近く続いていた。もちろん一緒に出掛けたり食事したりするのは、楽しい。やっと自己主張をはじめた美緒が、どこに行きたいの何を見たいのと嬉しそうに言う。それはもうささやかに、桜まつりで甘酒を飲むことだったり、青山界隈で買いもしない骨董品を眺めるだけだったりするのだが。好きな女の子の手を握って、最近ますますかわいくなった表情を見て、隙あらばキスしちゃったりしてるのだ。楽しくないわけがない。

 けれど、満足してるわけでもない。っていうか、きっぱり不満。


 タイミングを外してしまったのだ、とは思う。突然逃げた美緒を怯えさせたくなくて、少し引き下がった。少し引き下がった筈が、次の一歩の踏み出しどころがわからなくなった。他の相手ならば、なし崩しのなあなあで元の位置に戻るのだが。

 いかんせん、相手は美緒だ。雰囲気を読む力はない。きっかけがきっかけなだけに、部屋になんか呼ぶと「やらせろ」と言っているように見える気がする。いやだから、無理になんて言わないって。だけど、一生このまま?それは、カンベン。


「高校生か」

 鈴森の思いっきり呆れた視線に耐えかねて、美緒は下を向いた。

 キスしたいの、なんて相談を持ちかけたわけではない。鈴森の彼氏は確か自宅勤務の筈で、みんなどこでキスしたりベタベタしたりしてんのかな、なんて聞いたのが最初だった。

「車の中とかホテルとか?松坊のとこ、篠田さんはひとり暮らしじゃない。場所になんて困らないでしょ」

 龍太郎が部屋に入れることを躊躇している原因は、自分だということを理解はしている。美緒が怖がっていると思いこんでいることも、察しはついている。違うの!と声高には言えない。


「あの後、お部屋に行ってない・・・」

「あのって、ババシャツ?冬の話じゃない。もうじき、五月になるよ?その後進展してなかったの?」

 やはり、沈黙が答えだ。ただし、美緒の顔はテーブルの表面に張り付いていた。

「やっぱりあんた、八十の処女になるような気がする・・・」

「不吉なこと言わないで!」

 すでに「あーんなことやこーんなこと」への覚悟は決まっているのだ。もっと近付けば、もっと好きになるという確信がある。にもかかわらず。

 どうしろっていうの、この先!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ