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meaning of inferiority complex 4

「おはよう。風邪、ひどくならなくて良かったね」

「一日中寝てたから。今週はちょっと忙しいから、休めないしね」

 メールでも電話でも、そんなに変わってないのに。何か変だよ、龍君。

「今週、定時上がりできる日、あるかな」

「ちょっとわかんない。そういう日はちゃんと連絡するから」

 あたし、何かした?


 仕事帰りに鈴森とお茶を飲みながら、美緒は「龍君がね・・・」と切り出した。状態だけを聞いていた鈴森は、ひどく不審げな顔をする。

「飽きた・・・わけないか。まだ、なんにもしてないんでしょ?それとも、頑強に拒んでるとか」

「なんにもって、何を!」

「したの?」

「してない」

 いつからだっけ?と思い返して、思い当たった。

「腰をやっちゃった日からだ。あの時駐車場で会ったけど、その後一緒に出てない」

「あれ、寄りかかってっていうより、抱きついて歩いてなかった?それ見られたの?」

「じゃないと動けなかったんだもん!ちゃんと龍君にもそう言ったし!」

 鈴森は額に手を当てた。

「嫉妬は理屈じゃないのよ、松坊。しみじみ篠田さんが気の毒だわ・・・でも、放っとくとこじれるよ。現に篠田さんの様子がおかしいんでしょ?こじれっぱなしに、ならなければいいけどね」


 翌日の朝、駅からの道で美緒に声をかけたのは、大木だった。

「松山さん、今日は彼氏と一緒じゃないの?」

「今日は現場直行なの。最近、ちょっと忙しいみたい」

「昨日駐車場で会ったよ、六時頃。丁寧にお礼言ってもらっちゃって。見た目がああなのにオトナだね、あの人。俺なら、自分の彼女が抱きついてた男になんて挨拶しないね、緊急事態でも」

 美緒は驚いて、大木の顔を見上げた。

「そんなもの?」

「そんなもんだよ、男って嫉妬深いし。それに俺、あんたの身長じゃ無理だ、くらいのこと言っちゃったしね」

そんなこと言ってたっけ?美緒は急いで記憶を探る。


 言ってた。そうだ、自分の腰に気をとられてて、すっかり忘れてた。

「何?フォローしてないの?あの時、すげえ顔してたのに」

 してない。ってか、きれいさっぱり抜けてた。だって非常事態だったし、その後のメール、普通だったし。

「あんまり迂闊だと、逃げられるよ。ただでさえ性的魅力に欠けるんだから」

「余計なお世話!」

 大木に言葉を返しながら、美緒は龍太郎の横顔を思い出していた。

 もしかして、怒ってる?あたしが、鈍いから。

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