evolving relation 5
あっという間に時間はすぎて、九時近くになる。「駅まで送るから」と龍太郎はMA-1に袖を通す。
もう一回、キスが欲しい。
皺だらけになった龍太郎のカットソーを見ながら、美緒もコートを羽織る。そんなことを頭に思い浮かべる自分と、それを恥ずかしいと非難する自分がいて、どちらにしろ口になんか出せっこない。床からバッグを拾い上げると、龍太郎が驚くほど近くにいた。ボタンを留めていないコートのウエストから腕が入る。
息継ぎに余裕ができた。美緒の手はそろそろと龍太郎の背に回り、気がつくと指に力が入っている。
「こんなことしてると、キリないね。土曜日はバスの本数、少ないんでしょ?」
駅まで手を繋いで送ってもらい、改札で手を振る。空いた電車の座席に座った美緒は、目を閉じて一日を反芻する。そして、唐突に気がつく。
・・・なんか、すっごく慣れていたような気がする。
やっぱり今まで考えたことはなかったのだが、龍太郎はその経験があるのだということに思い至る。今まで恋愛をしたことのない人だと思っていたわけではなく、ただ結びついていなかっただけだ。そして、聞いた時にはピンと来なかった「ストップが効かなくなる」は、何に係った言葉か。つまり、あのキスっていうのは。
きゃーっ!
顔色が弾けたところで、電車は乗り換え駅に停まった。
ああっ!あたしって本当に鈍い!
胸の部分が握られた形になったカットソーを見下ろしながら、スウェットに穿き替えた龍太郎は、冷蔵庫からビールを取り出した。
ぜんっぜん物慣れてなくて、だけど一生懸命で。
洗ったまま伏せてある鍋を見る。目玉焼き用のフライパンとアルミの鍋で、あれだけの料理ができるものかと妙に感心する。胃袋でも、結構掴まれちゃったかも。普段の動きだけを考えれば手際の良さに頷くこともできるし、実際骨惜しみしない性質だろう。おそらく仕事も早いんだろうな、と予測はつく。すべて引き受けてしまうあぶなっかしさと紙一重だが。
ゆっくり大切になっていくといい。焦って台無しにはしたくない。
ビールのを口に運びながら、中途半端に見たDVDをセットしなおす。抱きしめた時、良い匂いがしたのを思い出した。充分女の子らしくて、かわいいじゃないか。
何をしたら、もっと笑う?何をしたら、揺るぎなく俺のものになる?