表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/76

Standstill a little 1

「おお。初日から同伴出勤」

「それ、なんかニュアンスが違くね?」

 あけましておめでとう、の前の会話である。美緒と龍太郎が並んで歩く横に、藤原が並んだ。

「あたしも同伴させて?篠ちゃんを女になんか渡すもんですか」

「・・・やめろ、正月から」

 出社時には早足で通り過ぎるだけの美緒が、はじめて隣を歩いているのだ。

「男にモテても嬉しくねえ」

「女にだってモテるクセに。篠ちゃんのいけず」

 黙って横を歩く美緒が、まったく違うテンションで受け止めているのだとは、藤原も気がつかない。


 そうだよね、普通に考えたら人気はあるんじゃない?顔は良いし、性格も悪くないと思う。ちゃんと社会人だし。身長だって、気にする人ばっかりじゃないもん。

 本館のロビーから入って美緒が手を振った時、龍太郎の後ろからピンク色のコートが近付くのを見た。

「篠田君、藤原君、あけましておめでとう。今年もよろしくぅ」

 顔が明らかに龍太郎の方を向いている。

 むか。感じ悪っ。

 当然、美緒が何かされたわけではない。だから、何故それを感じ悪いと思うのか、自分でもよくわからない。強いて言えば、語尾に漂う媚が気持ち悪いと思う程度である。

「松山さん、勘がいいね」

 美緒の表情を見送った藤原が、ニヤニヤ笑いながら龍太郎に話しかける。

「松山さんって、誰ぇ?」

「篠ちゃんのカノジョ」

 さらりと答えた藤原は「俺も今日から階段で行く」と龍太郎と階段室に向かった。


「お正月、進展あったあ?」

 こちらはロッカールームで着替え中の美緒の方である。

「2回、一緒に出掛けた」

 不機嫌の残る顔で、美緒は鈴森に返事をした。

「順調じゃない。で、そのぶすったれた顔は何なわけ?」

「あたしって、女っぽくないよね?」

 何を今更、と鈴森は笑う。

「女っぽさを求める人は、もともと松坊になんか声、かけないでしょうよ。篠田さんだってそうじゃない?」

「篠田さんのことじゃないっ!」

 赤くなりながら、美緒は言葉を返す。

「またまたぁ。今までそんなこと言い出したことないクセに、そんな顔で否定しなくっても」

「違うってば!」

「あーあ。中学生レベルから始めなきゃなんない篠田さんって、カワイソー。早く育たないと、待ちきれなくなるぞお」

 膝掛けを抱えた鈴森は「お先に」とロッカールームから出て行った。そういう意味じゃないんだけど。呟く美緒にも、どういう意味かは説明できない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ